5月19日(日)「これください!in文学フリマ東京」
お湯を張った湯船の中にシャンプーの泡が飛んでいったけれど、今日はお湯にじわじわ泡が溶けていく様子を眺めていた。溶け切る前に両手で泡があった辺りのお湯をすくった。
今日の私は本当に心が満たされているんだなあ。
交換日記のメンバーのことを思い出しながらお風呂に浸かった。打ち上げのあとに交換日記メンバーで見た東京タワーの赤、雨が降っても傘をさし続けながら公園からなかなか離れない時間、「さきさんのこと、さきちゃんって呼んでいいですか」「佐和子さんのこと、佐和子ちゃんって呼んでいいですか」「ちいこさんのこと、ちいこちゃんって呼んでいいですか」というほくほくした心の縮まる会話、和果さんが少し湿った芝生の上に寝転がる姿、瀧本さん、ゆりゆりさんと話したどうして日記を削るのかという話、phaさんが絶妙な距離感で我々のそばにいてくれるから我々の個々の個性も際立っているという話、芝生の上で側転をするDさんを制するKさん、散歩に胸を踊らせるアヤコさん、いつの間にか素足のララフネさん、ヤコバにわくわくする涼子さん、設営からいてくれたから少しお疲れ気味なqb.さん、一緒に店番たのしかったねちはるさん、Discordの写真で七瀬さんのお顔見たら会いたいなーってなった。
夫に手伝ってもらいながら作った『あなたは怒られたことがないでしょ』は今色んな人の家にいるんだと思ったら泣けてきた。この前までは我が家にいた日記が今はいろんな人のところにいるんだ。私の日記、元気でやってるかな?どう過ごしてるのかな?積読の仲間になってるのかな、いいないいな、他人のお家にいるのはどんな気分なのかな、元気でな〜。
今日の日記はいろんな時間が前後しちゃうな。どうやって書こうかな。うまくまとまらないんだよな。
今日は家を出る一時間前に目が覚めたし、昨日のうちに今日着ていく服にアイロンをかけて荷物の準備をしていたので出発まで余裕たっぷりでいたのにな、どうして家を出る時間までに支度が終わらないんだろうな。夫に「さきちゃんは1時間じゃ足りないよ」と言われた。それなら20分で足りる日の私は手足が4本くらい多めに生えているのだろうか。
眠たくて仕方がないので栄養剤を買った後お手洗いに行って排泄を済ませたら突然目が覚めてきた。夫も私の目がいきなり開いてきたので驚いていた。少し肌寒い東京モノレールの車内には文学フリマ東京に向かう人がたくさん乗っているんだろうな。あのスーツケースの中にはたくさんの作品がつまっているんだろうな。去年の11月の文学フリマは夫の出店に同席しているだけだったけれど、今回は私も日記の本『あなたは怒られたことがないでしょ』を売る側なのか……。
第2会場の2階に着いて設営の準備。サクサク終わらせ、見えないところにいい香りのハンドクリームとアルコールジェルやおやつのレモンパックを忍ばせたりして自分の居場所を作って少し安心する。開場前に第1会場にある『15人で交換日記をつけてみた』のブースに顔を出し、はじめて完成した本を手にした。「かわいいいい!本だあああ!!!」うっすい感想しか出てこなかったけれど、しっかり本になった私達の交換日記をこの後売るのかと思うとゾクゾクした。200部刷ったんだよな。ゾクゾクするよな。
私と顔の似ている友達のブースにも遊びに行った。5、6年ぶりに会ったような、もう少し経っていたような気もするけど相変わらず顔は似ていた。「がんばろうな!がんばろうな!ステッカーのカメかわいいな!カメの名前なに?」「カメ」「カメ!!!」そんな会話をしてたら開場しそうな空気になったので急いで第2展示場に戻ったけど開場しなかった。まだ話したかったな〜
12時になり一般のお客さんが入ってくる。第2展示場の2階は人もまばらで我々のブースの前を通り過ぎる人たちを見て心臓がキュッとなった。少しでも見てくれ〜こっちを見てくれ〜にっこり微笑ませてくれ〜と思いながら(私の日記の本全然売れないかもしれないうわあああ)と心の中で叫んだのか、実際に口にしていたのかは覚えていないけれどとにかく落ち着かない時間だった。
12時20分にはじめてのお客さんが私達のブースに来てくれた。その方は夫のフォロワーさんで私の日記の本を手に取り「これください」と買ってくれた。はじめての「これください」を聞いて涙腺が緩みそうになった。ここで泣いたら今後の情緒がおかしくなりそうだったので眼球の奥に力を入れてこらえた。ありがとうとうれしいをもごもごもごもご喋りながら見送った後もありがとうとうれしいをもごもごもごもご夫に話していた。
その後も数名の夫のフォロワーさんが日記の本を手に取り購入してくれた。「これください」「これください」「これください」立て続けに聞いたこの言葉はこんなにしあわせな響きだっただろうか。出店者側になったからこそ味わえたこの響きの質感は絶対忘れない。
夫の短歌の本もいいリズムで売れていき、ほっとしてきたところで私は交換日記のブースへ移動する。13時に店番を交代したときには既に20部が売れていた。もう何もしなくても売れるかもしれないと思ってしまった。ちはるさんと交換日記の本を購入してくれた人にどこでこの本を知ったのか聞いてみるとほとんどの方が「SNSを見て……」と仰っていた。誰のSNSを見てくれたのかな……もしかして我々の!?なんて思っていたけれど、この15人の中にはphaさんがいる。phaさんの発信の影響力だ。「もしかして我々の!?」なんて思ってしまってえへへとなった。たった40分の店番の間に15部ほど売れた。なんてこった!もう安泰だ!購入してくださった方に15人の一員のちいこさんがデザインしてくれた本なんだよ!と堂々と自慢した。えっへん!
日記の本を買いたいと言ってくださったちはるさん、涼子さん、ゆりゆりさんと一緒に夫とのブースに戻るとqb.さんが我々の本を購入してくださっていた。その前にはDさんも購入してくださっていたようで、みんなにのめり込むくらいハグをしたくなった。りょうやん、ぴいちゃん、7、8年ぶりくらいに会うみずきちゃん、名古屋から来てくれたじゅんじゅん、佐和子ちゃん、ちいこちゃんにものめり込みハグをしたい。中にははじめて文学フリマに訪れた友人もいたから、他の作家さんの世界にもたくさん触れたんだろうな。うれしいな。私もいろんな作家さんと話せてうれしかったな。
目の前で自分の本を手にとってもらう時、嬉しくて鼻の穴が膨らんだな。目の前で自分の本をパラパラめくって読んでもらってる時間、どんな顔してたらいいのか分からなくて時々バレないように白目剥いたりしてたな。手にとって読んでもらった本が元の位置に戻ってきても少しの時間だけでも読んでくれてありがとうって気持ちになったな。「このイラストがおもしろくって……くふふ」って言って笑いながら去った人が笑ってくれててうれしかったな。ちらっと見てブースの前を過ぎていった人がクルッと向きを変えてブースに戻ってくる景色ループ再生したいな。立ち読みして一度ブースを離れた人がまた戻ってきてくれて購入してくれた瞬間が嬉しくて何回も夫に話したな。色んな出店者さんのブース回りたかったけれど、自分のブースに来てくれる人はどんな人なのか知りたくて離れたくなかったし、お手洗いさえも我慢しちゃうくらいだったな。
ふああ日記の本を読んでくれた人はどんな感想を持つんだろうか。帰宅してから『あなたは怒られたことがないでしょ』を読み直しておもしろいのかなこれとか思ってまた不安になった。もちろん「おもしろかった」って言ってもらえたら嬉しいけど、そういうことだけじゃないんだろうなとも思ったりもした。この辺りうまく言葉にできないんだけどさ、この作品お家に連れて帰ろうって思ってもらえたことがまずはうれしかったんだよな。今日はそのうれしさに浸っていたいな。
交換日記の本も自分の日記の本も作って本当によかったな。この経験で味わった気持ちはこれからの生活を変えてしまいそうだな。どう変わるのかは分からないけどさ、多分もっと自分の好きなこととか表現したいことを深められそうな気がするな。今日はほんとうにいい一日だったな。
全然うまくまとまらないや。とにかくいい一日だったんだよ今日は。
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