読書感想 「叱れば育つ」は幻想 村中直人
「叱る依存がとまらない」の著者村中直人氏が、教育界やビジネス界など、異なる分野の4人と対談する、という形式の本書。
著者の主張は
① 「叱る」という行為は、「叱る人」の本能的欲求の実現であり、快楽である
② 「叱られた」人は「防御モードに入り」危機逃避の行動を起こすが、本質的に学びや成長につながるわけではない
という2点に尽きます。
それを4人との対談で繰り返し主張するので(形式上仕方ないが)やや「くどく」感じてしまう面がありますね。
それと、本書(特に最初の対談)でも顕在化しますが、「叱る」の定義によって、説明の仕方は非常に大きく左右されること。そしてにもかかわらず、筆者はやや「自分の叱る論」に固執している部分があるので(わかりやすくしよう、という意図だと思われますが)、議論がかみ合わない、というか、やや本質からずれていく、というきらいがあるように感じました。
筆者の主張や、本書の内容については、なんというか「特に反論するようなところはない」し、大まかにはその通りだな、と思います。とはいえ、自分自身(多分だけど)「あまり叱ったりしない」タイプだと思うので、タイプというよりは「筆者と考えが近い」ということのような気もしますが、内容に新鮮味が乏しく「それはそうだよね」という感じ、が全体としての印象でした。
「ついつい部下や子供を叱ってしまう」人や「子供のころに過度に叱られて育った」人には、多分強く響くのではないかと想像します。
良い本だと思います。