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#080.本来の自分を思い出す。
近所の裏山に少し開けた場所がある。
そこに剣と杖を持っていって
合気道の稽古をしている。
型通りに剣を振り、杖を突く。
道場とは違い、枯葉のぬかるみや
石が枝がゴロゴロしているので、
なかなか型通りには動けない。
だんだん、自由にやりたくなって、
兎に角力いっぱい剣を握って、
縦横無尽に振り回したりする。
手のひらがしびれ、
腕が上がらなくなる。
力を抜いて足元を見ると、
2㎝ぐらいの大きなアリ、
小指ぐらいのムカデ、
名前も知らない虫たちが、
にぎやかにうごめいている。
羽虫の音が耳をかすめ、
茂みの向こうに遠ざかる。
少し先の用水路に向かって
蛇がスルスルと進んでいく。
緑の木々の隙間からは、
夏の青空が顔を覗かせている。
わたしたちは、
木で、水で、土で、空だ。
ずいぶん遠くにいる気もするが、
ほんとうはそこから
一度も離れたことはないのだ。
「我が剣は、天地とひとつ」
普段は忘れているだけの
本来の自分を思い出すために、
今日も私は裏山で剣を振る。
ほな、また。
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