吟醸麹(箱麹)製造のポイント
1 蒸し米
こしきおき前で29%~30%の吸水歩合。蒸し上がりで41%程度とし、あまり固すぎる蒸し米にしない。生蒸し厳禁。
G/A比の高い麹を作るには、麹室の中を35℃程度にし、乾湿差10℃くらいとり温度高く引き込む。5cm程度に広げて、ときどき手入れをしながら3時間から5時間かけて9~10%程度水分をとばし、表面を乾かす。
数字で考えると
白米 100 → 吸水 129~130
蒸しあがり 141~2 → 種付け 133 → 出麹 117
2 種付け
種付けは35℃以下になってから行う。
種麹の散布量〔振り切り〕は
添 15g/100kg(兵庫山田錦) 酒母・添 40(某所山田錦)
仲 10 仲・留 13
留 7
種麹の量を減らすというのは、菌体量あたりの酵素活性を上げ、菌体量に比例する各種ビタミンや不飽和脂肪酸の少ない麹をつくることを目的にしている。これにより外見(菌体量に関係)は3時間程度遅れるが、生育スピードが遅くなるわけではない。
粒状の種麹では、通常菌糸も入っているため、胞子だけうまく分散させて落とすためキュプラにくるんで散布するとよい。
散布後は、2回ほど手を入れ30~31度になったら、でこぼこのないように半球状に堆積し布でしっかり覆う。
酒母麹や添麹は量が少ないので別の麹に抱かせるか、木枠を作って入れる。
温度が29度以下に低下するようなら保温マットで調整するが、くれぐれもすすめすぎないこと。
添、仲、留については、種麹散布量を変えるだけで温度経過等は同じでよい。
室温は、吟醸麹だけしか入らないのであれば、やや高め(32度くらい)にして行う方が造り易い。
3 盛り
(仲・留麹では)盛り時には、ハゼはほとんどみえない。蒸し米が半透明で光っている状態。切り返しは、手早く行う。
32度から1.5度低下し30.5度程度。温度が29度以下に低下するようなら箱を重ねるか、電気毛布等で調整する。
乾湿差が大きいと3℃くらい品温が低下するので注意。
はぜ落ちを防ぐため、板をかませるか、布で枕を作り箱の片側に寄せる。
4 仲仕事
盛りから仲仕事までは10~12時間、35度~36度を目標とする。
麹菌がついているかぎり、時間がかかってもこないことはないのであせらず仲仕事までは、しっかり(2重に)布で覆ってゆっくりと待つ。
表面を乾かす必要はあるが、時間が長いので密閉しない限り乾いてくる。逆にしっかり覆っておかないとハゼ落ちの原因となる。
乾燥しすぎるところでは、加湿して乾湿差6℃以内とする。
6時間くらい経過し観察すると、温度は低いがハゼが、はっきりしてくる。
仲仕事頃には、6~7割程度面はできてくる。
仲仕事も手早く行う。
5 仕舞仕事
仲仕事から仕舞仕事までは、4時間から5時間、38~39度を目標とする。
仕舞仕事で、腰をおると温度が上がらないばかりか、かえって低下することもあるので手早く仕事を行うとともに、可能なら室温を上げ、35度くらいにする。
全体に広げ溝を入れて、麹にふれないように箱に布をかけ40度まで2時間、42度まで4時間で上げるようにする。42度まで上がれば、うすい布1枚で自力で維持させる(まったく裸にすると表面が乾きすぎる)。
最高温度は43~44度とし40度を超えてから9~12時間程度確保する。必要に応じて、板を挟む等で品温の調整を行う。
仕舞仕事は深夜作業になるため、経過を記録してみると温度が低下しすぎる蔵が多いようである。
作業スケジュール
9時 引き込み
12時 種きり
11時 盛り
21時 仲仕事
01時 仕舞仕事
03時 最高温度
12時 出麹
全体を短縮する場合は、盛りを進めることを考える。そのためには、種麹を増やすのではなくて、ねかせ温度を32~33℃にするが、この場合は、蒸米はやや固めに上げる。
○ 麹菌は植物と考えるとよい。
良い種を少量、均一にまく(間びきできない)。
水をやりすぎる(多すぎる)とよくない。
十分根が張るまでは急がない。
花が咲いたら、味が落ちる。
目的は酵素をつくることであって、菌(状貌)をつくることではない。
○ 機械製麹で吟醸、純米用麹を造る。
米は好適米が造りやすい。
断熱は十分か、通風が均一か確認する。(センサー位置も重要)
仕舞仕事まで通風しないですむような環境をつくる。
低温で引き込む(水分少でグルク活性を高める。室に比べ断熱が良い。)。
うすく盛る。また、結露するほど水分がこもらないようにする。
中温帯短縮をねらい、仲仕事まで時間がかかったのを解消するとともにアミノ酸が少なくなるように誘導する。
作業スケジュール(例)
8時 盛 29℃(盛後)
16時 33℃
20時 通風制御開始 40℃(通風後37℃)
以後 42℃にセット
7時 (箱に移す) 41℃
10時~13時 出麹 42℃
この場合も、全体を短縮する場合は、盛りを進める。そのためには、ねかせ温度を32~33℃にするが、この場合は、蒸米はやや固めに上げる。
2003