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【毎週ショートショートnote】月夜の寝ぐせ

お題:月夜の寝ぐせ


 ふーっと吐き出された煙で咽る。せっかく浴びたシャワーを台無しにするような濃い煙草の匂い。ホテルに備え付けの高価なシャンプーもボディーソープも、煙草の前には無意味だった。

「ねぇ」
「ん?」
「たまにはさ……ううん、なんでもない」
「そ」

 たまには昼にも会ってよ。思わず溢れそうになった言葉を寸でで呑み込んだ。彼には夜しか会えない。そう言う関係だから。私が彼をどれだけ想おうとも、それは変わらない。都合の良い女。それ以上でも以下でもない。
 いや、以下にならないように必死だ。とどのつまりどこまで行こうと、都合の良い女でしかないのだ。我ながら惨めったらしい愛を抱えていると思う。
 彼の左腕を埋め尽くすように、手首から胸にかけて刻まれたタトゥーが、彼は愛してはいけない男だと知らしめてくる。毎夜毎夜、月明かりが照らしては知らしめてくる。ああ、いっそ月のない夜に会えたなら何も知らされずに溺れられるのに。

「ねぇ」
「ん?」
「今度さ、雨の夜に呼んでよ」
「気が向いたらね」


好きになっちゃいけない人を好きになる。
そんな恋愛を一度で良いからしてみたかったお年頃。


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藤堂佑
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