#47 並行複発酵について
今回の問題
並行複発酵について述べよ。
自分の回答
200字回答
並行複発酵とは、糖化とアルコール発酵が同時に行われる、日本酒特有の発酵方式である。醪内で蒸米のデンプンが麹の酵素によって糖化されるのと並行して、酵母によってブドウ糖が消費されてアルコール発酵が行われる。発酵中に蒸米からブドウ糖が徐々に補充されるため、濃糖圧迫を避けながら、20%ほどの高アルコールまで発酵を進めることができる。なおワインは単式発酵、ビールは単行複式発酵である。(188字)
回答の要素
並行複発酵について
日本酒特有の発酵方式。並行複式発酵ともいう。
醪内で蒸米のデンプンが麹の酵素によって糖化されるのと並行して、
酵母によってブドウ糖が消費されてアルコール発酵が行われる。
発酵中に蒸米からブドウ糖が徐々に補充されるため、濃糖圧迫を避けながら、20%ほどの高アルコールまで発酵を進めることができる。
アルコール発酵の過程では、アルコールの他に炭酸ガスと熱が生じる。
ワインは単式発酵、ビールは単行複式発酵である。
回答の構成
・糖化とアルコール発酵
・日本酒特有の発酵方式
・デンプン → 麹による糖化 → 酵母によるアルコール発酵
・濃糖圧迫を回避、高アルコール
・ワイン:単式発酵、ビール:単行複式発酵
回答の補足
デンプンの糖化経路は、まず α-アミラーゼ によってデキストリンに分解され、グルコアミラーゼ によってブドウ糖に分解される。そして酵母はブドウ糖を摂取して、ATPを生み出すためにアルコール発酵をする。
C₆H₁₂O₆ → 2C₂H₅OH + 2CO₂ + 2ATP
本来なら、アルコール発酵よりもエネルギー効率の良い呼吸を行いたい。
C₆H₁₂O₆ + 6O₂ + 6H₂O → 6CO₂ + 12H₂O + 38ATP
(理論値。実際は 18ATP 程度)
しかし呼吸には酸素を必要とする。酸素がある環境では競合の微生物も多いため、酸素がない環境でも生きていけるよう、酵母は酸素を必要としないアルコール発酵を身につけた(嫌気性アルコール発酵)。アルコール発酵が酸素濃度によって制限されることを「パスツール効果」という。
生存戦略に長けた酵母だが、実は酸素量が十分にあっても酵母はアルコール発酵するという。今度はブドウ糖の濃度によって制限される。ブドウ糖濃度が0.015%以上あると、酵母はアルコール発酵を始める(好気性アルコール発酵)。酸素濃度に関わらず、ブドウ糖があればアルコール発酵することを「クラブトリー(クラブツリー)効果)」という。
他の回答
先人たちの回答
参考文献
J.S.A SAKE DIPLOMA 教本(Third Edition)p. 064,083
布川 弥太郎, 角谷 貞夫, 清酒もろみの並行複発酵に関する研究 (第11報), 日本釀造協會雜誌, 1978, 73 巻, 10 号, p. 785-788
日本醸造協会, 新・酵母の話 ④パスツール効果とクラブトリー効果, 2021, 閲覧2023年10月8日
※ 引用時に出典URLを明記したものは省きました。
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