ドB級昭和町中華
藤沢に越してきて早12年、この町のローカルフード「古久家」に初訪問。
ちょうどお昼時、藤沢駅に降り立つことがあり、小腹も減ったので何か美味しいものを、と考えた結果、お刺身がすこぶる美味しい「魚つる」かドB級町中華の「古久家」か迷って後者に。
藤沢的重慶大廈
駅の脇にある、古びたビルの地下にひっそりあるのだけれど、昔住んでいた香港で例えるなら沢木耕太郎氏の深夜特急の香港版でおなじみの「重慶大廈」が近い。
私も当時重慶大廈はよく通っていたのだけれど、ここと共通して言えるのは「空気が100年くらい止まってる」っていうくらい古ぼったい匂いがする。
ここ藤沢の重慶大廈、入口は複数あり、やたら入り組んでいるもんだから、いつもお目当ての店にたどり着くまで結局一周。
やたら威勢のいいお魚屋、激安な八百屋、いつもおばあさんが座っているせともの屋はアルミの弁当箱なんてものもあるし、お肉の専門店の「ジャストミート」なんて、ネーミングセンスで賞を差し上げたい。そして角にはドB級昭和中華、古久家が鎮座してるなんてもう「昭和の落とし物ランキング」、第一位でしかない。
それが、名店ビル地下1階。
地下に行くと、ランチタイムをとうに超えているというのに、かなりの人。老若男女問わず、次から次へと吸い寄せられるように人が地下に降りてくる。
なるほど、藤沢人の胃袋を今も昔も鷲掴んでいる、ソウルフードなのね。
古久家とは
1947年創業、戦後穀物問屋だったことから穀物の「こく」を取り「古久家」と名付けたのが由来という。「これからは甘いものの時代だ!」といって和菓子屋さんを営んでいたのだけれど、洋食や洋菓子の気配を感じてあっさりラーメン屋に転身したのが始まりだとか。
というか、もはやその時代の波を呼んで身を翻す商人魂というか、先見の目の鋭さよ。
もう、このひなびた食品サンプル最高だなあと思いながら、焼きそば一択で心を決める。
餃子は正義、なのか?
もう、ポスターですらちょっと古いワケですよ。いや、ポスター自体は古くないんだけど、なんというか、そこから放たれるメッセージが猪木っぽいというか。
そんな真正面から言われても、そうな感じもするし、でもそうとも言い切れない気もするし・・。
しばし待って入った店内は、もうタイムスリップしたみたいに、やっぱり空気が止まっていた(笑)。
油っぽい筈なんだけど、清潔にしている机や椅子。若い人もいるし、おばあさんもいるし、なんか皆それぞれがちょっとだけワクワクしながら待っているような気さえしてきた。
きっとそれは、初来店で人一倍ドキドキして、ワクワクしながら待っている自分を重ね合わせていたのかもしれないけれど。
さあ、いただきます
焼きそばが届きました。くだんのメニューにもあった「当店の焼きそばは蒸麺を使った~」とあって、想像通りというかもはやサンプルとほぼ同じものが届いた。
周りを見渡すと、同世代くらいの女性の一人客もかなり多い。そして皆一様に焼きそばを食べており、勝手に親近感を感じていた。
ああ、こういうところこそ、井之頭五郎氏こと、ドラマの「孤独のグルメ」に出て欲しい。
松重豊扮する五郎氏が「うまい」といって焼きそばをかきこんで、何なら追加で春巻きとか頼んでしまう絵が目に浮かぶ。
最後のひとすくいまで残さず食べて、まだ店内を眺めていたい気分でいっぱいの平日の午後。それでもまだ列は残っていたので、名残惜しくもお店を後にしました。
さあ、次は何食べよう。ドB級昭和街中華、おいしくていい時間。
9月3日 サカシタカオリ
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