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ロジックモデルとセオリー・オブ・チェンジ、どっちをどこから作るのか問題

こんにちは。坂ノ途中の研究室の横浜です。
前回は「IMM(インパクト測定・マネジメント)」を噛み砕いて考えて、坂ノ途中がIMMをはじめた経緯をお伝えしました。

今回は坂ノ途中がIMMとして最初に取り組んだ、セオリー・オブ・チェンジの作成についてお話ししようと思います。


坂ノ途中は当初、ロジックモデルを作ろうとしていました。でも、内容を詰めていくうちに色々要素が変化していき、「これはセオリー・オブ・チェンジに近いのではないか」ということになり、そう呼ぶことにしました。

この2つは両方とも、「事業が最終的に生み出したい変化にどうつながっているか」を整理して示した図のことです。IMMを実践する上で代表的に用いられる手法ですが、似て非なるもので、それぞれ下記のように説明されます。

ロジックモデルとは、事業が成果を上げるために必要な要素を体系的に図示化したもので、事業の設計図に例えられます。一般的なロジックモデルの図は事業の構成要素を矢印でつなげたツリー型で表現され
(中略)
「インプット」「活動」「アウトプット」「アウトカム」と4つの要素で図示されます。

SIMIさんのHPより

 「セオリー・オブ・チェンジ」(Theory of Change)とは、ある特定の文脈において、どうやって、なぜ、望まれる変化が起こることが期待されるかについての包括的な説明を図示したものである。

株式会社 ブルー・マーブル・ジャパンさんのHPより

ロジックモデルはフレームワークとしてツリー構造の要素が固まっていることが多いのですが、セオリー・オブ・チェンジはその名の通り「変化の理論」なので、少し自由度が高いようにも思います。

ただ、どちらも、私たちが誰に何をして、どんな影響を与え、最終的に何を目指しているのかを理論立てて繋げて図にまとめる、という点では同じとも言えます。

私の結論としては、どっちを作ってもOKだと思います。それぞれの特徴を把握した上で決めるのも良いですし、フレームワークとして確立されているロジックモデルから作ってみて、我々のように整理していく過程でどちらに近いのかを考えてみるのも良いかと思います。


さて、どのように作っていったかをお話ししようと思いますが、まずは私たちのセオリー・オブ・チェンジがどのようなものかを先にお見せします。

横の流れを見ていくと、一番左にIssue(課題)があり、右に向かってTarget(対象)、Activity/Output(実施事業/出力)、Outcome(生み出したい変化)の順に並んでいます。Outcomeは、どのように変化していくのかを3段階に分けており、直接アウトカム、中間アウトカム、そして最終アウトカムへと繋がっていきます。
縦は国内事業、海外事業に分かれており、真ん中にはその両方に共通する要素を書いています。

坂ノ途中のセオリー・オブ・チェンジは、他社さんの例と比較すると、文字数も要素もかなり多い方ですが、私たちの生み出したい変化をきちんと説明するにはこの情報量が必要だったと思います。坂ノ途中は「何をしている会社なのかよく分からない」とよく言われますが、だからこそ丁寧に説明することが大切だと思い、このようなセオリー・オブ・チェンジになりました。


では具体的な作成過程のお話に入りますが、最初に使ったのは下記のようなテンプレートです。

どこから埋めていくのかというと、まず一番右の最終的に目指す状態、ビジョンを埋めます。前提としてここが明確であることが必要だと思います。坂ノ途中は「100年先もつづく、農業を。」というビジョンを掲げているので、それを書きました(進めていく中で一番右は最終アウトカムに差し替えて、ビジョンは右上に置くことにしたのですが、それは後工程なのでまた今度……)。

次の工程は、なんとなく一番左のInputから考えたくなるのですが、実は真ん中にある「アウトカム」を探すことでした。

アウトカムは、その前段階にある「アウトプット」と混同されやすいのですが、アウトプットは事業がもたらす直接的な結果、アウトカムはもう少し先の、顧客をはじめとするステークホルダーに起きる変化を指します。

自分だけでは把握している範囲が限られるので、各チームのマネージャーが集まるミーティングで、思い付くアウトカム(望ましい変化)のエピソードを具体的に出してもらい、集約しました。

そこで出たエピソードとしては、例えば下記のようなものです。

  • お客さまから、「野菜の定期宅配を取ってから季節の移り変わりを意識するようになった」という声があった

  • お客さまが、「イベントで坂ノ途中のコーヒー知って、色々調べるうちに農業の問題を知るきっかけになった」と言っていた

  • 提携農家さんが、「坂ノ途中が野菜を仕入れてくれたから経営を続けて規模拡大できた」と言っていた

  • 提携農家さんが、「坂ノ途中が野菜の買取を通じて支えてくれることで、過疎地域、跡取りのいない圃場がある地域に若者を呼び込むことができる」と言っていた

  • コーヒーを買ったお客さまから「途上国のために何かしたい、何か関わりたいと思っていた気持ちが、コーヒーを飲むことで繋がった気がした」という声があった

  • カスカラ(コーヒーの果皮)を使ったシロップを坂ノ途中が開発、販売したことによって、カスカラの認知度が少し上がった

などなど。

これらを眺めながら、「どれが事業を通じて本当に起こしたい変化なのか」「どのような順番でこれらの変化が起きるのか」を整理して図に反映していきます。ここからが大変でした。

次回、とりあえずテンプレートを埋めたらどうなったのか、その後にやってくる試練についてお話ししようと思います。

それでは、また来月!

横浜 美由紀(坂ノ途中の研究室)


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