読書日記 - 深夜特急1
読書日記、第一弾はちょうど一巻が読み終わった「深夜特急」を。読み始めたきっかけは、京都奈良旅行。沢木耕太郎が旅したスケールには到底およばないけれど、旅行には紀行小説をお供にしたくて、本棚に眠っていたこちらをすっと。
実を言うと、深夜特急は3分の1くらいを読んでは挫折を繰り返していて、今回が3回目…?くらい。父から借りた本で、シリーズ全てが手元に揃っているのだけど、いつか読もう読もうと思いながら、なかなか一巻を突破できずに。というのも、私はちょっと紀行文が苦手。経験の足らなさ、想像力の貧しさゆえか、文章を読んでいてもその土地の景色が浮かんでこなくて、なんだかのめり込めないのだ。今回最後まで読めたのは、以前よりたくさん文章を読んで読書経験を積んだ、というのもあるけれど、あるあたりを超えてから紀行文を読んでいる感じがしなくなって、この本のおもしろさに気がついたから?と思う。
一巻は、インドのデリーから始まって、香港、マカオの旅がメインになる。
3回読んで3回とも惹きつけられた始まりの文章。この一文で、これは旅行ではなく、旅なんだと思わされる。旅行と旅の違いなんて、全然わかってはいないのだけれど、なんとなく、そんな感じがしたのだ。
前回どこまで読んだっけなと思いながら読み進めていると、香港で出会った若者が昼食をおごってくれるシーンがきた。著者は最初、勘定をせずに店を出ていった若者に自分が支払いを押し付けれらたと思うのだけれど、本当は店員に著者の分もツケ払いすると言っていたことを知る。旅先で出会った人とのこうしたエピソードへの憧れからか、この場面をなぜか鮮明に覚えていて、ここまでは読んでいたなと思う。
香港もよかったけれど、マカオに移動してからはもっと好き。カジノで繰り広げられる大小の臨場感にページをめくる手が止まらなくて、これは本当に紀行文なの?って。何よりもカジノへ向かう前の葛藤の描写が最高にいい。一ページ弱の文章をまるっとここに書きたいくらい。旅における「賢明さ」を自分の中でいかにして捨てるか。"賢明さなど犬に喰わせろ。"の一文には、不覚にも、しびれた。大負けして日本へ帰る可能性をわかっていながら結局カジノに行くのだけれど、人生こういうときがあってもいいな、特に旅に出ているときこそと思った。
三度目の正直でとはいえ、まだまだ紀行文初心者のわたしは、ついついネットで調べて写真を見ながら楽しんでしまった。香港の土地名の読み方も毎回毎回わからなくなって、ページを遡るのがめんどうになり、調べてはメモを取りながら。便利な時代と思いつつも、この本が刊行されたときにはそんなことが容易くはできなかったのかなと思うと、自分の文章から想像する力の足りなさ、現代人がいかにしてネット頼りで生きているかを感じさせられる。
多読もいいけれど、本はやっぱり、読みっぱなしにするより、こうやって自分の言葉に落としながら余韻に浸りたい。つたない文章でも続けていきたいなと思います。
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