VRマルチプレイストーリーゲームの行先
こんにちは!逆凪(さかなぎ)と申します。
本記事は「Clusterアドベントカレンダー2022」に投稿する記事になります。
昨日はてつじんさんの「始まりは、誰だってちっぽけなところから」でしたね。創作の勇気が貰える楽しい記事でした。
今回は私がclusterで「VRマルチプレイストーリーゲーム」を作ってきた経験をもとに、それの将来形に思いを馳せてみようと思います。
VRSNSでストーリー要素のあるコンテンツを作っている方なら誰にでも当てはまる話ですので、ご興味があれば是非読んでいってください~
革新的なVRゲームって何だ?????
VRゲーム・VRSNSのゲームワールドは多く存在するのに、VRゲームはコンテンツ不足だ、革新的なゲームがまだ出ていないと言う話は未だ絶えていません。まったくもって面倒な話ですね、そう言うならお前が作れよと返したくなります。
まあ我々はいつかその"革新的なVRゲーム"とやらに辿り着くことでしょう。
しかし、"革新的なゲーム"に辿り着くのに必要なのは"運"ではありません。そのゲームが何故正しいのかを証明する"思考"によって生まれるはずです。
ならばこの先に何があるのかを考えてみよう、という訳です。
要件
今回はVRゲームとVRSNSのゲームワールドの両方を考えながら、要件を決めてみました。
ソロでもマルチでも遊べる
何度でも楽しめる
良いコミュニケーションを生む
VRで遊ぶメリットを持つ
プレイヤーが主体性を持つ
ソロでもマルチでも遊べる
名作と言われるソロプレイゲームは多くありますが、今回はソロでもマルチでも遊べる事を要件に入れます。(オンラインゲーム嫌いも一定数いますが、最近は友人と遊べるマルチプレイゲームならやると言う非ゲーマー層も増えてきましたからね…)
VRSNSにおいては「人がいるワールドに更に人が集まる」特徴がありますし、途中参加ができるようなゲームにするか、ゲームプレイ中はロビーとプレイエリアが隔絶されていないゲームにするのが良いでしょうか。
何度でも遊べる
既存のソーシャルメディアに代わって更に人の生活時間を消費させるプラットフォームとしてのメタバースの文脈や、コンテンツの継続性を考えると何度でも遊べて、ゲームプレイがユーザーの習慣になる事は重要でしょう。
良いコミュニケーションを生む
相手の失敗や奇行にイライラするよりも、協力して何かを成し遂げられたり、コミュニケーションによってwin-winな結果になったりする方が良いですよね。
ゲーム設計の段階でプレイヤー間のコミュニケーションを方向づけて、プレイヤーが長く楽しめるようにしたいですね。
VRで遊ぶメリットを持つ
今回のお題がVRゲームなので「VRの良さ」をゲームに組み込むのは当たり前ですね。簡単なものとしては以下の4つが挙げられるでしょうか。
身体性:頭と両手を自分の身体として動かせる
近さ:NPCへの親しみやエフェクトの迫力が増す
大きさ:原寸大で世界を見る事で巨大オブジェクトの迫力が増す
アバター:自分の姿を変更できる・他者としての体験ができる
プレイヤーが主体性を持つ
「主体性」と言ってもいくつかありますが、以下の3つに分けられるでしょうか。
プレイヤーが主体的に考えてゲームを遊ぶ事
自分が物語を動かしている主人公であると感じられる事
プレイヤーがゲームに対して所有感を持つ事
対処法は非常に様々です。簡単なもので言えば、InteractItemだけではなくgrabbableItemをゲームプレイに組み込む事・プレイの快感を損なわない程度に行動にリスクを持たせる事・プレイヤーの行動でワールドに大きな変化が起きる事・レベルやランキング等を設ける事などなど…
プレイヤーの主体性を高める事で、高いモチベーションで遊んで貰えるだけでなく、プレイヤーが新規プレイヤーを引き込んでくれる事もあります。クリエイターの宣伝だけでは(本当に)限界があるので"主体性"は大事にしたいですね。
VRマルチプレイストーリーゲームの行先
さて、以上が要件だったのですが、今回はそれに「ストーリーを含むゲームであること」も混ぜて考えてみましょう。あの要件だと広すぎますし、プレイヤーの感情を動かしたいならストーリーは使った方が良いでしょう。(その分コストは高くなりますが…)
第二のアバター
ナビゲーターNPCがいるVRゲームは多く、それは非常に合理的です。身体的なコミュニケーション(手をつなぐ・撫でる等)で「VRの良さ」が出せます。単純に迷子になりやすいVRゲームでナビゲーターNPCは効果的ですし、プレイヤーの行動を褒めてくれるだけのも嬉しくてモチベーションが続きやすくなります。クリア報酬やDLCとして、自分の姿が自分で見えない主人公の代わりに新たな衣装を着るのも面白いですね。
しかし、現状に加えて更にできる事もあるように感じます。
NPCが"第二のアバター""うちの子"となるまで、カスタム性を用意し、カスタムがゲームプレイに関わるようにし、コミュニケーションの手段を広げたゲーム設計にできれば、「何度でも遊べる」「VRらしさを出す」「プレイヤーが主体性を持つ」といった要件を更に満たせるのではないでしょうか。
ゲーム内経済
ゲーム内経済は以下のような役割を果たしてくれます。主体性やコミュニケーションに関わってくる要素なので入れておくと体験価値が安定しますね(バランス調整は必要ですが…)。
購入するアイテムの選択がプレイスタイルを左右する。
社会のリアリティを高める事で没入感を高める。
物々交換によるコミュニケーションを生み出す。
ロビーとゲームパート
ここまで来ると、ロビーとゲームパートを分けるのが妥当でしょう。ロビーの機能は以下のようにするのが良いでしょうか。
そして重要なゲームパートについでですが、コミュニケーションの余裕を持たせるには操作が簡単でゲームスピードがゆっくりのゲームが好ましいです。
アクションRPGが至高のVRゲームと思われがちですが、コマンドバトルRPGやボードゲームこそ参考にすべきなのかもしれません。VRTurnbasedRPGの「DEMEO」は結構面白いですし、アプデも継続的に行われているのでオススメです。
こうしてできたのが…
以上を踏まえて一本企画書を作りました。
良い感触ですがバランス調整も大事なので、じっくりシナリオを書きながらclusterでプロトタイプをちまちま組み立てています。VRゲームとして取り組むのか、VRSNSのゲームワールドとして出すのか、別の事をやるのかはまだ分かりませんが、しばらくはVR-TRPGも作りつつこれの制作で遊んでみます。
…そんな事はどうでもよく、これまでの思考がゲームを考える上での一助となったなら幸いです。企画書の方に死ぬほど興味あるぜ!って人は一緒にお話しましょう。
ちょっと特殊な「VRマルチプレイストーリーゲーム」
さて、これまではコンピュータゲームとしての「VRマルチプレイストーリーゲーム」の話でしたが、私が今まで制作してきたものは少し異なります。
ということでGM(進行役)を用意する事で成立し、今後より普及するであろう「VRマルチプレイストーリーゲーム」も紹介しておきましょう。
要件は以前述べたものと異なりますが、参考にはなるでしょう。
VR-TRPG
言葉だけで共有していたTRPG(テーブルトークRPG)の世界をVR空間で再現する事により、初心者にも分かりやすく、高い没入感で遊べるようになりました。
2022年8月には6作目のVR-TRPG「地下壕の讃美歌」を公開しました。
「最高の主人公体験」をコンセプトに制作され、主人公の視点でマップ探索や戦闘を楽しむ事ができます。
VRマルチプレイストーリーゲームのノウハウが詰め込まれているので是非遊んでみてくださいね。(プレイ配信もYoutubeにありますよ!)
シナリオ・ワールド・アバターをセットで公開する形式は未だ希少ですが、ワールドを簡易的に作ってコミュニティ内で遊ぶ形式は普及しつつあります。ともかくVR-TRPGの文化は今後より広がっていく事でしょう。
「VR-TRPGの現在が詳しく知りたい!」という方は以下のよっしーさんの記事が参考になると思いますので是非。
VR体験型脱出
メインNPCをスタッフが演じ、通常の体験型脱出よりもストーリーや演出を強化した事で、"VRで遊ぶ良さ"を最大限引き出したのがVR体験型脱出(VR謎解きアトラクション)です。
2022年7月に「Break the JINX ~絶望の廃倉庫~」を公開しました。
シンプルながらVR体験型脱出としての要件を完璧にクリアしているので、是非プレイ配信を見てみて下さい。(現在は公演を終了し、他のメンバーが次回作を制作しています。)
スタッフがNPCを演じるという点で通常のゲームワールドと差別化ができて価値が保てているのは良い所でしょうか。「ワールド」とも「イベント」とも定義しにくいですが、今後生き残っていく文化な気がします。
最後に
こんな長話をしたものの、趣味において重要なのは「作っていて楽しいか」ですので、テキトーに聞き流して参考になる部分だけ拾っておく位が丁度良いのかもしれません。
読んで頂きありがとうございました。書くのに何時間かかったんだこれ…という感じなので感想や拡散など頂けると嬉しいです。
明日は至日レイさんの「#FIRSTCLASS_of_LOVE まとめ」です!こちらも是非ご覧ください。
ということで。お相手は、逆凪でした!
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