【ライブレポ】「 遺伝子組換こども会主催 『死ぬまでにしたい10のこと』」2023.11.18
2010年に活動休止となっていた遺伝子組換こども会が、2023年に主催イベントを開催。
2016年に1日復活を果たして以降、単発でイベントに出演することはあった彼らだが、単独主催となると活動休止以降で初となるのだろうか。
TЯicKYに、Jin-Machineに、キボウ屋本舗と、現役活動時の盟友を集めてのホームグラウンド的なライブに仕立てており、会場には、在りし日の神楽坂EXPLOSIONを思い起こさずにはいられない空気が充満していた。
本当は、2020年にも主催イベント「むらかみといっしょ」を予定していたものの、コロナ禍で中止。
このイベントは、事実上、その再演的な意味合いもありそうで、来場者特典として「村上トリビュートファイナル完結編」を、参加メンバーから1曲ずつ募って完成させてしまったのも、そんな背景を知る者たちが集ったのだからだと言えよう。
ダウンロード用のQRコードを配布というのが現代的ではあるけれど、後からCDに組み立てられるようにジャケットと帯だけ現物配布するというアナログ感が、なんとも遺伝子組換こども会のスタンスを象徴しているのでは。
TЯicKY
懐古主義的なイベントだから、というわけでもないのだろう。
数年ぶりに見た気がするのだが、あの頃と同じTЯicKY。
アイドルという設定や、お約束の挨拶が変わっていないというだけでなく、煽っているうちに自信がなくなっていく感じや、自分の想定とフロアの反応が違ったときの戸惑いまで、未だに初々しい気がしてしまうから恐ろしい。
極めつけは、「牛乳飲もうよ」の間奏での場面。
用意していた牛乳の一気飲みを試みるのだが、半分も飲めなかったうえ、その後の2曲が微妙にグロッキーな状態でライブを継続することに。
いじられるポイントしかないステージは、1周回ってもはや圧巻。
10年以上の年月、多くの場数を踏んでいるにも関わらず、ハプニングやトラブルも込みでピュアなライブ感を出せるのは、ある種の才能なのだろう。
もっとも、後のステージにおいて、キボウ屋本舗のVo.ハルが語っていたが、音楽的な完成度は大きく向上。
"狂気の打ち込み"と呼ばれた電波サウンドは洗練され、コンプレックスを抱える女子をテーマにしたアイドルポップスに軸を定めた割り切りも含めて成長と言えるはず。
音楽が安定したからこそ、キャラクターとしてのアクの強さが改めて浮き彫りになるという循環を生んでいて、彼の変わらない部分と成長した部分を短い時間で堪能できるライブとなっていた。
目指せ!二次元
ドライブイン鳥へ行こうよ!
不思議少女なっちゃん
牛乳飲もうよ
シャンプー☆プロカリテ
詐欺ってごめん
Jin-Machine
3人編成となり、サポートベースを擁してのJin-Machine。
あっつtheデストロイの脱退以降、はじめて見ることになるのだが、Vo.featuring16、Gt.マジョリカ・マジョルカ・マジカルひもりが、それぞれデスヴォイスや掛け合いの部分をカヴァー。
初期の楽曲が多いセットリストとなっていたことも相まって、彼のいない寂しさと、残ったメンバーの頼もしさの両方を感じることになった。
1曲目こそ、新譜から「DANDARA」を披露。
枠に囚われないワールドワイドな音楽性で最新型の彼らを見せますが、おそらくこれはブラフ。
そこからは遺伝子組換こども会と対バンしていた時代の楽曲を詰め込んで、当時から何倍も強靭になった演奏力を発揮していく。
活動を止めずに突き進んできた成果を見せつけたまま、勢いを持って終盤戦に突入するかと思われたのも束の間、TЯicKY同様、やはりライブには魔物が住んでいるようで。
4曲目に予定されていた「環境デストロイ」で用いる紙芝居を忘れてしまったため、スタッフに呼び掛ける閣下の力ない声が聞こえると、急遽セットリストを変更。
ここにきてまさかのトラブルであったが、ラストに予定していた「ティーライズ社歌」の煽りに切り替え、しっかり笑いに変えていたところには、彼らの矜持を感じずにはいられなかった。
結局、紙芝居は無事届けられ、想定よりも高い熱量で「環境デストロイ」が届けられると、「Fire Love」のパラパラでクロージング。
通常は、最後の楽曲が変わるとなるとライブの構成上の難しさが出てくるものだが、彼らの場合、「Fire Love」さえ流れてしまえば強引にでもまとめられるのが強いところ。
個人的には、「RA・RA・RA 楽園イーグルス」にて、"クリネックススタジアム"の部分を、あえて当時の球場名で歌っていたのが熱かった。
DANDARA
RA・RA・RA 楽園イーグルス
うんち☆どっさり
ティーライズ社歌
環境デストロイ
キボウ屋本舗
登場時のコメントから、場を沸かせるのが上手いキボウ屋本舗。
この日は臨時ギタァ屋として、マツタケワークスのИIROと、The BenjaminやTHE BEETHOVENでも活動しているミネムラ"Miney"アキノリが参加。
フロントに5人がひしめく賑やかな編成で、トリ前で温まっている会場を、更にヒートアップさせていた。
エイジとハルのツインボイス屋体制が、極めて巧妙。
どちらも歌っていない場面でも忙しなく動くタイプのヴォーカリストで、片方が歌っているときは、もう片方がパフォーマーの役割に。
当然ながら、ハモりや掛け合いも高いクオリティで再現できるので、オーディエンス側は、常にステージに注目していなければいけない状態。
休ませてもらえることなく、ひたすら畳み掛けられた印象だ。
マイクの調子が悪かったのか、ややエイジの歌声が聞き取りにくかったのが残念だが、それでライブの楽しさが損なわれるものではない。
なんなら、ドラム屋のミズトまで前に出てくる勢いで、全員野球的なステージである。
また、ミネムラ氏がメンバー以上に存在感を放っていて、さすがの貫禄。
TЯicKYの「不思議少女なっちゃん」は胸が痛くなるから聴きたくないという話から、エイジ&ハルがTЯicKYいじりに展開する流れもあって、誰のネタを振るかも含めて、よくわかっていらっしゃるなと。
僕は君に必要とされたいのだ
絶望番長
サンブンサンプル
少年25秒
トキメキスタイル社
反省しませう
遺伝子組換こども会
イベント冒頭で寸劇のテーマを打ち出し、トリのステージにて回収。
「死ぬまでにしたい10のこと」というタイトルに沿って、余命宣告を受けたVo.ノビ太が、最期に実現したいことを遂行していくという内容になっていた。
寸劇を前フリに楽曲に入っていくスタイルや、あくまで当て振りでの演技を貫きながら、ミッキーの物真似だけは生で披露するバランス感覚は、あの時に見ていた遺伝子組換こども会だ、と懐かしい気持ちになる。
セットリストもベスト的。
寸劇で尺を使う分、主催であっても曲数が少なめになってしまうのはもどかしいところだが、聴きたい曲をしっかり押さえている。
はじめて彼らを見たときには、既にDr.ティッシュが脱退後だったため、実はドラムがいる編成としては初見。
演奏中は紙袋は外すのだな、という今更な驚きもありつつ、デジタルサウンドが主体であるからこそドラムが生だと迫力があるなと痛感する。
序盤、Ba.裏の音が鳴らないアクシデントに見舞われるも、ドラムのリズムキープだけで堪え切ったのはさすが。
裏もすぐに演奏に復帰して、これまた変わらない構える位置がやたら高い個性的なベースプレイで、見せ場を作っていた。
アンコールは、出演者が全員登場したうえでの「こども会体操」。
新グッズである体操着風のTシャツに身を包んだ出演者たちが、ノビ太の指揮のもと、レトロゲームネタを中心とした振り付けをしていく。
会場はいっぱい、ステージもぎゅうぎゅうで、実際に体操をするには無理があるスペースではあったが、一体感を持って幕を閉じたという意味では良い選択だったのだろう。
はじめてのメタル
メテオの日
ナイトメアマンション
月の裏側
宇宙人が攻めてきた
en1. こども会体操
セカンドアンコールを求める声も鳴り響いていたが、もうすべて出し切ってしまったとのことで実現せず。
ただし、この声はメンバーにも届いていたので、次の活動にも繋がっていくと信じたい。
事前に出ていたタイムテーブル通り、オンスケジュールでの終演。
この手のイベントは、絶対に押すものだと思っていただけに、ふざけ倒しているように見えて、なんだかんだでちゃんとしているのも彼らの魅力なのだと再認識できた。