脱サラWebライターの仕事術【1】期待値は“下げる”
ここまでWebライターとして3年働いてきて感じたことを、シリーズ化して書き連ねていこうと思う。
まず初回は、「期待値」について。
いわゆる、クライアント、そして自分に対しての「期待値」のことだけど、これではイマイチ意味が分からないかと思うので、(Webライターらしく)箇条書きでお伝えすると以下の通り。
・クライアントへの期待
→単価を上げてくれるかな、継続して発注してくれるかな、といった期待は捨てる
・自分への期待
→文章が評価されるかな、さすがにこの文章で修正の依頼がくることはないよな、といった期待は捨てる
クライアントへの期待
まず、クライアントへの期待値は極限まで下げている。なぜなら、ライター1人ではコントロールできない部分が多いから。たとえば、事業計画が変わることによって1つのメディアが潰れるなんて日常茶飯事だし、年度末を境にして編集体制が変わり、記事の発注本数や、記事単価が変動する、なんてことも“あるある”だ。
そして忘れてはいけないのが、Webライターに仕事を発注する企業の多くが、IT企業や、Webマーケティング系のベンチャー企業ということ。こうした会社は事業撤退の決断も早いので、「継続してくれる」という保証はどこにもない。
だからこそ、クライアントに過度な期待はしない。いざという時に、自分の首を絞めることにつながるから。
ちなみに僕自身、去年の2021年10月・11月ごろに予定していたライター案件が、開始直前で2度取り消しになった。理由は2つとも、担当編集者が消えた(逃げた)から…。これは冗談ではなく実話だけど、こうした世界で働いている、ということは良い意味で改めて勉強になったし、Webライターを専業にしていこうと考えている昔の自分にアドバイスするのであれば、これから働いていくフィールドは自分が想像する以上に「変化が激しい」ということを、口酸っぱく伝えたい。
自分への期待
Webライターとして、自分への期待も意識的に下げるようにしている。
僕もそうだけど、文章を書く、という仕事に興味を持った以上、文章力にはある程度自信がある人が多いと思う。もちろん「表現するのが好き」「文字を書くのが苦じゃない」という人もいると思うけど、大半は「自分の得意なライティングでお金がもらえるなんてラッキー」と思っているかもしれない(僕もはじめは思っていた)。
でも、天狗になるのは危険だ。その鼻は、“修正依頼”の嵐によって簡単にへし折られてしまうから。そもそもWebライターに求められているのは、文章のうまさではなくて、その文章によって読者が行動してくれるかどうか。たとえば、記事経由でサービスを購入してくれるか、「読んでタメになった」と思って、リピーターとなってまたメディアを閲覧してくれるか、といった行動を促すための記事が基本的には求められる。
そしてクライアントごとに、戦略や、メディアの雰囲気はもちろん異なる。記事に求められる文体などにも違いが表れるから、Aというクライアントでは大絶賛されていたのに、Bというクライアントには酷評される、といったことが当然起こる。そして「修正してください」という依頼は、ライティングに自信がある人の自尊心をこれでもかと傷つける……。
僕自身、かつてはライティングに多少自信があったから、テストライティングで落ちた時にどうしても納得がいかないことがあって。
でも今振り返ると、「オレは文章が上手い」という自分自身への期待値を、意味もなく高めていただけだったな、と。
一方で、「記事の質をジャッジするのはあくまでクライアントだから、自分は記事のクオリティを高めるために地道に努力し続ければいい」と思えるようになったことで、肩の力が抜けて、ライターの仕事が前よりも楽しくなったし、クライアントからも安定して記事の発注を受けられるようになった。
期待を下げると、余裕が生まれる。
期待値をはじめに上げ過ぎてしまうと、いざという時の余裕がなくなって、あっぷあっぷしてしまう。「期待に応えよう」と自分で自分を苦しめることにもなるので、ライティングそのものを嫌いになってしまったこともあった。
だからこそ、今はあえて期待値を下げておくことを意識している。「ITの世界は変化が激しいから、依頼が打ち切られるのは普通だよね」「俺よりも文章がうまいライターさんは山ほどいるから、自信過剰になるのは違うよね」と、一歩引いて考えてみると余裕が生まれ、色々なことに動じなくなった。
まぁ、まだまだ自意識が顔を覗くことがあるし、気を付けないと鼻がにょきにょきっと伸びてくるから、これからも期待値は意識的に下げていこうと思う。
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