不安定の安定感
皆様もご周知の通り、阿波踊りの「女踊り」は下駄を履いて爪先立ちで大地を蹴りながら踊る。
しかも、踊っている間は決して踵を地面に下さない。
日本の伝統芸能に用いられる「すり足」とは対極の足の使い方だ。
下駄でつま先立ってあのように激しく踊ることの難しさは誰でも想像できるだろう。
普通の人なら間違いなく数分で足が悲鳴を上げる。
爪先立ちの不安定を安定感に変えるための下半身の適度な緊張と上半身の脱力は訓練の賜物。
そして鍛え上げられた体幹がもたらすブレない軸は女性ならでは身体のラインを生み出し、色気と美しさを醸し出す。
そのようにして見ると、西洋のバレーとの共通点が見えてくる。
「爪先立ち」・・・ここに大きな秘密がありそうだ。
地面との設置面を小さくすることによって得られる安定感と言えば、コマを思い浮かべる。
「爪先立ちの踊り」は、言葉を変えると「不安定の安定感」
鍛え上げた者だけに許された表現の世界だ。
それにしても、私が阿波踊りを見て何故これほど感動するのか?
それは「踊ることの喜び」が、ひしひしと伝わってくるからだ。
成願義夫
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