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着物ブームの真実

ところで、今、着物ブームが静かに起きています。

着物ブームとは「着物を着るブーム」のことです。
着物をファッションとして着たい女性が増えているのです。

シックな色柄を選ぶ、若い女性達。つまり『新たな着物ユーザー』

さらに外国人にも着物愛好家や「いつかは着物を着てみたい」という潜在的ファンも増えているのです。

日本の着物に憧れる外国人達

ところで、現在、和服のリサイクル商品販売会社がTVコマーシャルを打っているのは何を意味しているのでしょうか?
10年以上前ではあり得なかったことが起きていますね。

今、リサイクル市場は呉服市場の約15%を締め、ますます増える傾向にあります。

メルカリでも既に着物が普通に多数売られています。
私の友人の何人かは、市中のリサイクルショップの常連です。
そこで買い始めてから既存の呉服店には行かなくなったと言います。

はっきり言って、戦後、着ない着物を売り過ぎたツケが今回ってきています。

現在、着物ファンはリサイクル商品を買う事に、なんの抵抗もなく、当たり前になりつつあります。
その上、今は、式服のレンタルも当たり前になってきました。

さらに着物はネットで安価なリサイクル品をお手軽ショッピングできます。
多くの呉服店にとってのドル箱だった成人式用の振袖の売り上げも減少の一途をたどっています。

ネットで正絹の着物がお手軽に買えると、着物ファンはこれから確実に増えます。
さらに、他人が袖を通したいわゆる古着ばかりではなく、しつけ糸のついたままの着物も多数出回っています。
これら新古品とも言える商品のかなりの数がリサイクルショップへ流れます。

これまでの古着市場での最大の問題点は、サイズの問題でした。

しかしこれも、数が集まれば選択肢が増えるので、自分のサイズを見つけることも容易になります。

これまでのリサイクルショップの商品は「安かろう悪かろう」でしたが、しつけ糸のついた物も含めて、大量に商品がリサイクルショップに流れると、「安かろう、良かろう」も混ざり、数量が増えることによって、ユーザーの選択肢も増え、満足度も高くなります。

その結果、正規の呉服店はファッション思考で着物を捉える新たなユーザーには不必要な存在になります。

つまり新たな着物ファンが増えれば増えるほど、既存の呉服店の存在価値がなくなるのです。

この「新たな」がキーワードです。

この「新たな」ユーザーの目的は、「着ること」です。

これは、当たり前のことなのですが、着物に限って言えば、これまでは「着ないのに買う」という客も少なくなかったのです。
そんな客に限って定期的に高額商品を購入するのです。
それは呉服店にとって上客であり、着物屋に甘い汁を吸わせた客であり、間違った価値観を和装関連業者に植えつけた客です。
でも、客には、なんの罪も落ち度もありません。
着物生産者と呉服店が来るべき『新たな客』への備えができていなかっただけのことです。

ところで、着物と言えば、伝統文化と密接ですが、
従来の伝統文化のお茶、お花などを実際に習う人の数の推移は確実に下降線をたどっています。茶道の市場規模はこの10年で半減しました。
これも、まだまだ減り続けると思います。

さらに、昭和の一時期、呉服店の収入の大半を支えた「花嫁道具としての着物」の需要も激減してしまいました。
このことは、過去の着物の価値観から、新たな価値観へと移行し、着物に求める価値も多様化することを意味します。

それでも、従来の着物の価値を大切にする一部の高所得者や本物志向の着物ファンは残るでしょう。
でもそんな一部の人達の消費数で、全国の生産者の生活を支えられるのでしょうか?

答えは既に出ております。

和服の市場規模はピーク時1981年(昭和56年)1兆8千億円でしたが、徐々に落ち込み、2016年(平成28年) には、2千7百85億円に落ち込んでいます。
令和5年の現在、中古市場以外は相変わらず、市場は下降の一途を辿っています。恐ろしい落ち込み様です。

業界人は、現在、下げ止まっているとでも思っているのでしょうか?
それとも自分の会社だけは生き残ると思っているのでしょうか?
呉服店は数が売れないから商品単価をまた上げるのでしょうか?

仮に、現在の市場での生産と消費のバランスが取れたとしても、京都のメーカーで非分業の一貫生産システムを設けている会社は一社もありません。

つまり、年間生産量が減少するとロットで仕事をしている、蒸し水洗、整理などの会社は持ち堪えられなくなります。
廃業されれば、もちろん生産者は皆共倒れです。
廃業したくなければ、単価を異常にあげなければ採算が取れません。

さらに材料費や人件費の高騰が拍車をかけ、結果、正規の流通の新品着物の価格は高騰するしかないでしょう。

と、いうことで、一般ユーザーが既存の呉服店に行く理由が益々無くなり、客は減っていくばかりです。

まさに悪循環ですね。

さて、「しつけ糸のついた着物が箪笥に何枚もあります」
この言葉の持つ意味を軽く考えている業界人、または、着てもらえない着物を売ることを恐怖と感じない業界人達は、墓穴を堀り続けていた事に気づいた頃には後の祭りです。

着物を頻繁に着る女性は気に入った着物は他人に譲りません、ましてリサイクルショップに売るなど普通はあり得ません。

「着物が大好きです。着たいです。」

近年、このように思い始めている女性が増えているのです。

女性は着物離れなんかしておりません。

現実は、きもの屋が女性離れしているのです。

だから、今、着物業界にとって、絶好のチャンスなのです。

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着物デザイナー 成願義夫

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成願 義夫(ジョウガン ヨシオ)
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