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着物は認知バイアスによって「売り手」と「買い手」の見える世界が違う・その2


時代遅れの和装関連商品製造&販売業者は、写真映えを意識できない。

写真は染めの振袖や訪問着のメインの花に一般的によく施されている刺繍などの後加工だ。

手間ひまかけて、刺繍や金加工をして、高級感や特別感を醸し出しているつもりだろうが、これが写真に映ると花の立体感をぶち壊し、しかも汚く見えることに気づいて欲しい。

金や銀の刺繍ならもっと悲惨なことになっているのは前回の記事で書いた通りだ。

もちろん効果的に刺繍が施されたものも中にはある。

しかし、このようにメインの花の白い可憐さをぶち壊し、デザインを台無しにしているものが圧倒的に多い。

例えば、白い生地や胡粉で染められた花びらに白糸で刺繍を施すと、職人や業者は先入観の認知バイアスで「綺麗な白い盛り上がり」だと錯覚してしまう。

実際は、刺繍の立体感が影を作り、糸と糸の隙間が彩度と明度を落とす。
よって色は濁り「グレー」に見えるのだ。

特に写真に映ると、前回の金と銀同様に、それがさらに強調される。

結果的に、わざわざ花を汚していることになる。

前回も書いたが、例えば振袖を着る女性にとって目的の優先順位の上位は記念写真を残すこと、つまり「写真映え」は大きな問題だ。

良かれと思ったこのような付加価値(刺繍、金彩など)が、デザインを台無しにしていることに気づかないのは、物をミクロ的にしか見ない職人さん達が陥る「価値の勘違い」だ。

着物は本来「刺繍を施しているという手間ひまの付加価値」よりも、見た目の美しを優先すべきものだ。

それが着る人を美しく見せる基本だ。

スマホやパソコンの画面で見る記念写真は特に美しさが優先される。

この価値観の勘違いは一時が万事だと知るべし。

ぜひ、全てを俯瞰で見る視野の広い蔦屋重三郎のようなプロデューサーの意見を聞いて欲しい。

このことだけには限らないのだが、このような 余計な付加価値は、「着る理由」よりも「着ない理由」になる可能性の方が高い事を知るべきだ。

和装業界の為にも、不易流行を実践していただきたい。
私は和装の職人さん達が日本から消えて欲しくないのです。

前回の記事
(時代遅れの和装関連商品製造&販売業者は、写真映えを意識できない。)
https://note.com/sakamotosaikyo/n/n8409f4ccd381


伝統デザイン研究家
呉服繁盛店の作り方アドバイザー
伝統産業商品開発アドバイザー

成願 義夫
https://www.jogan-kimono-design-school.com/

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成願 義夫(ジョウガン ヨシオ)
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