銀座のざくろで秋の松花堂
ちょっと贅沢な昼にしましょう…、と銀座のざくろ。
銀座松屋の並びのビルの地下一階。民藝風のどっしりとした造りの店で、ホールでサービスをする和装の女性スタッフも、彼女たちを助ける白いジャケットの男性スタッフもきびきびしていながらふるまい優雅。
もてなされるボクが上等になった気持ちがするのがステキ。
贅沢な料理や空間を、一層贅沢にしてくれるのがサービスをする人の力なんだとしみじみ実感させてもらえるいいお店。
ちなみにここでは女性スタッフが男性スタッフに指示をだします。
お客様をもてなすフロントラインにいるのは私たちだから…、という誇りに満ちた凛々しさと、彼女たちがどうやったら働きやすくなるだろうと心を砕く男性スタッフのやさしさにウットリします。すばらしい。
ランチタイムがはじまったばかりというのにお店はにぎやか。一日限定10食っていう季節の松花堂弁当があって、まだありますか?…、とおそるおそる聞くとまだありますよという。
にぎやかなのは中国からのお客様がたがたくさん入ってらっしゃるから。彼らの目当てはしゃぶしゃぶですから…、と。たしかに肉がおいしいお店です。ボクもいつもはステーキだとかしゃぶしゃぶ仕立ての牛肉がメインの定食をたのむもの。
ただ今日は秋という季節を思う存分感じたくって、それで秋の松花堂。
松花堂がやってくるまでをおいしく待とうとアスパラ豆腐をたのんでスルンとお腹に収める。
四つ仕切りの弁当箱には刺身に吹き寄せ、焼いた牛肉、それから季節の栗ご飯。
刺身は鯛とマグロと王道です。
吹き寄せには鱈の西京焼きに帆立の揚げ物、エビの酒煎り、卵焼き。この卵焼きのおいしいコトにウットリしました。
牛肉を味噌漬けにして焼き上げた、おそらくこれがメインディッシュでさすがにおいしい。味噌の効果でやわらかく、脂がジュワッと口に広がりひんやりさせる。ご飯をねだるオゴチソウ。
汁の代わりに土瓶蒸し。松茸は入っちゃないけど代わりにしめじに椎茸、舞茸、ハナビラタケと食感、風味が多彩なキノコが入って仕上がる。鶏肉、銀杏と具材たっぷり。汁も良し。
それにしても栗ご飯のほっこりとしておいしいこと。実はご飯に大きな具材がゴロゴロ混じる炊き込みご飯は苦手でだから栗ご飯はあまり食べない。けれどここのは栗の大きさ、量がほどよく出汁をたっぷり含んだご飯に栗の甘味と香りが時折混じって、秋を思う存分味わえる。
ふっくら酸味を残して煮た梅を、吉野の葛に閉じ込め梅の果汁と一緒に味わう吉野紅梅を追加でたのんで、食後の舌を甘やかす。
ぷちゅんと葛がスプーンにのっかり、スルンとすべって喉の奥へと流れ込む。梅の酸味と香りがあとくちスッキリさせて、昼のお腹に蓋をする。