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【信州上田】2024秋の信州旅その4 刀屋の蕎麦と、種ごとピーマンの美味しさ

 上田のごっつい蕎麦屋さん〔刀屋〕へ、両親を連れて行ったでござる、の巻。

刀屋

 両親には、前もって大盛りの写真は見せてある。
 それが、いかに巨大な盛っぷりであるかも、知らせてある。
 間違って大盛りを頼まれたら、大変なことになるからだ。
「いや、普通盛りで」
 どうやらわたしは、自分基準すぎる心配をしていたらしい。

刀屋の大盛り
刀屋
天ちらし

 うちら夫婦は二人とも大盛り。
 これに加えて、天ちらし(天ぷらの盛り合わせ)も頼む。
 長ネギ、ピーマン、茄子、まいたけ、大葉、さつまいも、かぼちゃ、そしてエビだ。

 お漬物が一緒に出てくれるのだが、今回は、
「この鮮やかに赤いの、何?」
 ピーマンだった。
 赤いピーマンが、中の種ごと漬けたものが出てきたのだ。
 試しにつまんでみると、種の食感もあいまって、とても美味しい。
(今度、ピーマンを調理するときには、種を取らないでみようかな……)

漬物に、ピーマンの漬物も

 なお、天ちらしも大盛り蕎麦も、いつものようにぺろりと何なくいけた。
「なあ、この蕎麦も食べてくれないか」
 父は食べきれず、残った蕎麦をわたしへ寄越した。
 普通盛りとはいえ、通常のお店の超大盛りに匹敵するのだ、この上、天ちらしまで食べたのだから、仕方がない。

(そういや、すごく似たシチュエーションを、近い過去で体験したような……)
 そう思いながら、父の蕎麦もぺろりと平らげる。
(ああ、そうだ、これとまったく同じシーンを、小説で書いたばかりだった)
 来年刊行予定の、上田を舞台にした青春小説の話だ。
 ただし親子ではなく、主人公とその親友の話である。

 この旅行はわたしが両親を招待するものなので、刀屋でのお会計も、わたしが持つ。
 が、両親としては、そんなつもりはさらさらなく、伝票を母がさっと預かってしまった。
 かつては子供でも、大人になれば、さすがに親へご馳走のひとつもしたいものだが……。
 いや、しかし、ありがたい親心として、ここは諦めて、おごってもらうか……。
 と思った、その刹那。
「こちら、預からせていただきます」
 隣の夫が、さっと伝票を奪ったのだ。
 それは見事な早業だった。
 母が器を持ち上げた、その一瞬の動きと油断をついて、夫は素早く手を伸ばしたのだった。
 こうなれば、両親も諦めざるを得ない。
 が、そのせいですっかり警戒され、翌日の夕食では、けっして伝票をこちらへ渡そうとはしなくなっちゃった。

 なんだろう、この、謎の攻防戦。

 会計の時、入口付近でピーマンを売っていた。
 一袋50円。
 安い!
 しかも、後で数えたら、一袋の中に15個くらい詰まっていた。

 帰宅後、さっそくこのピーマンを使っておかずを作った。
 ピーマンの煮浸しだ。

 種を取らず、ほどよくピーマンを潰す。
 出汁の素、醤油、料理酒、すりおろし生姜を放り込んだ鍋で、くつくつ煮込む。
 味しみのため、ちょっと冷ます。
 食べる直前に温めて、出来上がり。

ぐつぐく煮込む

 とても美味しく、15個あったピーマンは、全部1食で消えて行った。

種ごとピーマンの煮浸し

 この記事のシリーズ → マガジン「信州上田の旅と美味

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