連作短歌「東京」3
憂鬱と惰気と借銭つもってく池を眺めても何も生まれぬ
舌を食み気まずさごまかし火をつける煙にかすむ本心探り
偽りの劇に酔いしれ目をそらすふいに襲うは真実の味
ひもほどき起死回生の一手打つほどなく崩壊チラつく自害
かさんでくそれでも君はなぜ優しいそろそろ腹を切ろうかしら
出生が五十年ほど早ければ馬鹿を言うなよそれでも同じ
つもってく吸い殻借銭不信感金の切れ目で男は自滅
崩れ出す希望の展望沈黙と憂鬱はじけ真っ逆さま
コンビニの窓に映りし捨て猫は奈落の底の骸の形相
すごいじゃん!輝く瞳君ひとりただそれだけで救われていた
黒髪に面影重ね想う秋水面にうつるあの日のフィルム
段ボールまとめる君が振り向いて大丈夫かな?無理に微笑む
二兎追って逃した君の微笑み想い散りゆく眼で見つめる東京
何となく残ってみたはいいものの空席あらず捨て猫のまま
窓一つ隔てた先は日常と春と朝陽で僕は一人
いつの日か立派な虎に化けれたらもう一度だけ逢いにいきたい
夢追うて書を捨て町へ捨て猫は今日も1匹水面を見つめ