自業自得の地獄に堕ちる

沈んでいく。
堕ちていく。
願い続けた。冷たい毛布の中、息をひそめて。
目をつむった。
それが僕が許される唯一の方法だと思った。
あれだけ神様を嫌ったくせに、地獄だけは信じた。
芥川に共感した。
現実は無法則で理不尽な苦しみを僕に与える地獄だった。
法則のある苦しみだけが存在する言い伝えの地獄を求めた。
天国は嫌だった。
知恵の実を食べる前の存在にだけはなりたくなかった。
それは本心だろうか。
完璧なまでの感情の排除を望んでいたじゃないか。
同じことだ。
だけど失敗した。
とうとう人間を辞めることはできなかった。
感情は影のように僕にまとわりついた。
死のうと思った。
やってやった。
失敗した。
明らかに失敗が予想できる方法でそれを試みた。
僕は信じた。
全ての終わりを。地獄からの解放を。
でもちぎれたベルトを見たあの日悟った。
僕は僕自身すら否定した。
地獄にとどまることを選んだ。
憧れ続けた感情の徹底的排除は失敗に終わった。
破壊したいと思った。
僕を産んだ人間を。
僕を取り巻く友人を。
触れる事ができないのにこれ見よがしに存在する幸せを。
僕のいるこの世界を。
憎悪した。
否定し返した。
閉じこもった。
どうにもならない現実から目を逸らし、それでもあちら側から手を差し伸べられるのをひたすら待ち望んだ。
主人公になりたかった。
何もせずとも何かを手に入れられる主人公に。
でもそれは僕の誤解だった。
主人公はいつでも自ら行動した。
自らアクションを起こすことによって物語がはじまった。
僕はその事実に気づいていながら目をつむった。
堕ちていった。
いやそもそもスタート地点がどん底だった。
恨み続けた。
結局全ては自業自得だったことにも気づかないふりをして。
引き返すことはできなくても、新しく築き上げるチャンスはいくらでもあった。
この地獄は僕が完成させたものだった。
自業自得の地獄に堕ちた。
それだけだった。

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