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サンタクロース

人に希望を与えれば与えるほど、私の心は廃れていった

「僕と契約してサンタクロースになってよ」
どこかで聞いたことのあるそんなセリフを
形容し難いマスコットキャラクターみたいなあいつは
14歳の無垢な私になげかけた

サンタクロースは実在する
世界各地で目撃される
トナカイに乗って空を飛び
子供たちに夢と希望を与える彼らの存在は
もはや疑いようのない事実として刻まれていた

サンタの仕事は簡単だった
不思議な力を持つ宝石みたいな道具を使ってサンタに変身
トナカイに乗って毎年の担当地区の子供たちにプレゼントを配って回る
ただそれだけのことだった
そのはずだった

こんなプレゼントなんていらない
それより両親が欲しいって子供がいた
こんなプレゼントなんていらない
あの日空爆にあったあの街にいかなかった世界にして欲しいって子供がいた
こんなプレゼントなんていらない
別の両親の元に生まれる世界にして欲しいって子供がいた
こんなプレゼントなんていらない
いじめてくるやつら全員殺して欲しいって子供がいた

私たちが夢や希望や幸せだって思ってたものが
ただの押し付けだったなんて
私は考えたこともなかった
あの子たちは今頃どうしているのだろう
拒否されたひとりよがりの幸せを
なんとか笑ってごまかして
無理やり押し付けその場を逃げた
あの子たちは今どうしているのだろう

私はもうすぐ二十歳になる
サンタに変身できる魔法力はほとんどのこっていない
魔法力がなくなれば
私のサンタとしての仕事は終わる
泣いて別れを惜しむ子たちもいるなかで
私はただ
こんな仕事から解放されるその日を
まだかまだかと待ちわびていた



清世さん、展覧会頑張ってください!

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