「水を招く」ほか、中村哲先生に関する書籍
2022年9月某日
「水を招く」
著者:中山博喜
「希望の一滴」
中村哲、アフガン最期の言葉
西日本新聞社
「人は愛するに足り、真心は信じるに足る」
中村哲・澤地久枝(聞き手)
岩波現代文庫
ここ数日しつこく書いている
荻上監督の #川っぺりムコリッタ を観たら、
川といえば、そろそろ中村哲先生の映画を観られる頃だと思い出し、
積ん読していた本を開きました。
小さな島の中でやいのやいの言っている私達にとって、
励まされると言うよりも、赤面もの。
先生の言葉を借りれば
「自身の身は、針で刺されても飛び上がるけれども、
相手の体は槍で突いても平気だと言う感覚」
そしてこれは比喩表現ではなく、
哲先生のお父様が、東京にいた時に遭った、
関東大震災と朝鮮人虐殺などの事態を経験しての言葉でもある。
現地で活動する日本人の若者が犠牲になった際も、
日本の政府もメディアも一斉に騒ぎ、危機管理が甘かったのではなどと言い出すが、
中村先生は初めから危険さをずっと訴えてきた、
その中で半ば事故のように亡くなった方がいたとて、
その後ろに何十万ものアフガン人の命が助かったり、失われたりしていることは気にもとめないのかと憤る。
そういう日本の国際感覚のなさ、
自国だけ安全ならばという感覚に、
静かな方だけども、内心は強く憤っていらっしゃるのが伝わります。
(話は逸れますが、夏に見た「東京裁判」でも、
南洋の島々で日本軍が行った戦争犯罪にの非道さについて、
「国際感覚の無さ」を指摘しているナレーションが有ったのを思い出しました)
映画 #FLEE でも描かれた、
80年代のソ連によるアフガニスタン侵攻、
あの頃にもう中村哲さんは彼の地に関わっていて、
そこからの長い年月を現地で活動してきた。
その後のソ連撤退からの混乱、
大干ばつと9.11テロの報復戦争、
アメリカのやり方と現地の実情の恐ろしいズレ、
「タリバン」という言葉には政治組織の他に、
“勉強する子供たち”のことも「タリバン」というのだそうで、
その現地の言語を知らずに、
「タリバンが集まっている場所を攻撃して何十人即死」と。
しかしその“タリバン”は全員、集まって学んでいた子供達だったと、
そんなことが、沢山あるという話が、
次々と語られて、
知らないことばかりです…。
中山博喜さんの写真集「水を招く」は、
昨年の、米軍がアフガニスタンを撤退した際に、
私が色々とTwitterで情報を探していたら、
気軽に話してくださる医師の方がいて、
その方はアフガニスタンにもいた事があり、
中村哲先生の著書も数多く読破されている様でした。
その方のお薦めでもありました。
(他に「ペシャワールにて」もお薦めされました、
とにかくご著書が多く、まだ私はこれだけです)
アフガニスタンの人々の、こちらでの想像とは全く違う、
のんびりした様子、(当たり前なんだけど→)歯を出して笑い、
寄り目をして冗談ばかり言う人の写真などもw
苦労して漸く水が通った水路を、
嬉しそうに歩く中村哲先生と、
これからは長い道のりの水運びをしなくて良くなる(珍しく外に出ている)女性の姿、
カラッカラの砂漠ではない、
水がくれば作物が育ち、虫も魚も動物も賑やかに生きるアフガンの地が写されている。
あとがきに書かれた、
苦楽を共にしたアフガニスタン人のメンバーからの電話のくだりに涙が溢れた。
文化も宗教も、
言葉も価値観も何もかも違う場所で、
それでも中村哲先生が信頼に足る、心から頼れる人だと言う事を、
現地の人々が身を持って感じ、
全身で受け入れて、親しみを持ち、敬い、
遂には自分達で引き継いでいく様子、
その様子は「希望の一滴」が分かりやすいです。
私が初めて読んだのは「希望の一滴」で、
とにかく無知で何も分からないながら、
写真も多いし、入門に最適の本だった気がします。
それにしても激動の地域なので、
この文章が書かれたのが何年で、
その時はアメリカは誰政権かとか、
911前なのか後なのかとか、
困難はありますけども、
…いや…そんなことに「困難」なんて言葉を使ったら、
恥ずかしいな…。
頭でっかちに生きる私たちに、
先生の生い立ちやお人柄なども含め、
中村哲先生の本は薬です。
全く話は変わりますが、
今日突然、
20年来の友人が亡くなったという報が入りました。
コロナ禍の直前に食事をしたまま、
会っていませんでした。
コロナと同時に、私の夫は大病し、母を見送ったことをメールで励ましてくれてました。
その後自分が大病を患ったことを、
言ってくれなかった。
人の話ばかり聞いて、話してくれない。
そういう人なんですけど、
私は本当に友達だったんだろうか。
母が死んだときより泣きました。
何もできず、ソワソワして、
映画も観る気にならず、
中村哲先生にすがった次第です。
会えるときに会わないとダメなんですね。
対談本の澤地さんのその様な気持ちも読み取れました。
メメント・モリ、と昨日書いたばかり。
しかし死は突然やってきますね。
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