ゆうちゃんとハッピーの10の物語(9)🐶❤️ハッピーの冬の散歩日記
冬の朝、空気がひんやりと冷たく、白い息が空に溶けていきます。ゆうちゃんとハッピーは、ほんの少し雪が積もった道を歩き始めました。足元の雪がカサカサと音を立て、まるで時間が止まったかのような静けさが包み込んでいます。
「寒いけど、ハッピー、元気だね!」
ハッピーはふわっとした白い毛に雪をまとう中、元気よく歩いています。その姿は、まるで冬の静けさを楽しむかのように、力強く歩を進めていきます。雪を踏みしめるたびに音が響き、その音が世界を静かに支配しているかのように感じられます。
ゆうちゃんは時折、冷たい風を避けながら手袋をはめ直し、「寒いね」とつぶやきましたが、ハッピーはまるで気にしていない様子で、雪を踏みしめ、鼻をクンクンと鳴らしながら歩き続けます。ハッピーにとって、この雪の道はただの遊び場に過ぎないのでしょう。
近所の小さな公園に立ち寄ると、空気はさらに冷たく感じました。雪が積もったベンチに腰掛け、ゆうちゃんはハッピーを撫でました。
「今日は雪だね、ハッピー。」
ハッピーはゆうちゃんの手をじっと見つめ、少ししっぽを振りました。その瞬間、後ろから声が聞こえました。
「ハッピー、元気そうだね!」
振り返ると、近所の年配の女性が声をかけてきました。「この寒さでも散歩かい?」「はい、ハッピーが元気なので。」
女性は微笑みながら言いました。「寒くても犬にとっては散歩が一番なんだろうね。うちの犬も昔は雪の中を走り回ってたわ。」その言葉に、ゆうちゃんは一瞬胸が締め付けられるような気持ちになりました。あの犬も、今はもういないのだろうか。女性の優しい笑顔と共に、何か切ない感情が心に広がります。
ハッピーは女性を見上げ、優しくしっぽを振りました。元気な姿に、心が温かくなると同時に、時折、過ぎ去った日々を思い出す切なさが胸に込み上げてきました。
その後、二人は公園の端にある池のほうに歩いていきました。雪が池の上に薄く積もっており、ハッピーはそこで立ち止まり、じっと池を見つめました。静かな水面には雪がひとひらひとひらと降り積もり、まるで時間がゆっくり流れているかのように感じられました。
ゆうちゃんは、しばらくハッピーの後ろに立ちながらその光景を眺めました。ハッピーは何かを感じ取っているかのように、動こうとせず、ただ静かに池を見つめ続けます。彼の瞳の奥に、何か深い思いが映っているようで、ゆうちゃんはふと、ハッピーがどんな想いを抱えているのかと考えました。
やがて、ハッピーは顔を上げ、ゆうちゃんに向かって「わん!」と一声。まるで「行こうよ!」と言っているかのようでした。その声に、ゆうちゃんは微笑みながら立ち上がり、二人で帰路に就きました。
帰り道、雪はしんしんと降り続き、世界はどんどん白く覆われていきました。ゆうちゃんとハッピーは並んで歩きながら、まるで時間がゆっくりと流れているかのような感覚を味わいました。周りの風景が徐々に静まり返る中、ゆうちゃんはふと、ハッピーがいつまでも元気でいてくれることがどれほど貴重なことか、強く感じました。
「ハッピー、今日はいい散歩だったね。」
ゆうちゃんがそう言うと、ハッピーはしっぽを振りながら「わん!」と返しました。その返事に、ゆうちゃんの胸は温かくなり、雪の中でもハッピーがそばにいるだけで、心がほっこりと温かくなるのを感じました。ハッピーがいるから、どんな寒さも耐えられるような気がする。その瞬間、ゆうちゃんの心は幸せでいっぱいになりました。
家に帰る頃、雪は少しだけ積もり始め、二人の足跡が雪の中に残りました。あの日の雪の道を歩いた足跡が、いつまでも消えずに残っているように、ゆうちゃんとハッピーの冬の散歩は、心に残るかけがえのない思い出となりました。
それでも、ふとした瞬間に、雪の冷たさと共にどこか切なさを感じることもありました。時間はいつか過ぎ去ってしまうけれど、こうして一緒に過ごす時間が、いつまでも心の中で温かく生き続けることを、ゆうちゃんは確信していました。