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パラサイト 半地下の家族(기생충)【ぐすたふ】のシネマ徒然草子.Chapter15

私用により、少し間が空いてしまいました。
今回は昨年、非英語作品で初めてアカデミー賞作品賞を受賞したというこの作品。

ずっと話題になっていて(SNSとかでも芸能人の方がこぞって絶賛していた印象)、今年の1月1日についにNETFLIXでも配信が開始しました。
ポスターからしても、絶対観た後に気持ちが沈む気がしたので、なかなか手を出せずでしたが笑、ついに。

もし気になる方がいたら、ぜひとも〜。
それでは、今日もごーごごー。

※記事の中にはネタバレも含まれますので、これから映画を見ようと思っている方は作品概要以降、ご自身の判断で読んでいただけますと幸いです


1.作品概要

 邦題:パラサイト 半地下の家族(原題:기생충(意:寄生虫))    
 監督:ポン・ジュノ
 主演: ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン他
 制作国、日本公開年:韓国、2019年

 ※画像はNetflixより、お借りいたしました

 ストーリー概要:
 半地下の家に家族4人で貧しく暮らすキム一家。
 ある日、長男ギウの友人である大学生のミニョクが、家庭教師のアルバイトを紹介しにやってくる。大学受験に失敗し浪人しているギウは、家庭教師として採用されるため、大学生だと身分と素性を偽ってこのアルバイトを受けることに決めた。
 面接も兼ねたアルバイト初日、見事アルバイト先のパク家の夫人の信頼を勝ち得たギウ。すっかりギウを信頼したパク夫人は、長男:ダソンのために美術の家庭教師も探していることを口にする。
それを聞いたギウは「いい美術の先生を知っている」と、自分の妹:ギジョンを紹介する。もちろん、彼女の身分も経歴もすべて偽って。
 まんまとパク一家を騙すことに成功し、ギジョンも家庭教師としてパク家で働き始めることになる。するとキム一家は、一家全員でパク家に就職することを目論む。



2.ぐすたふの「ここを見て!」

 ネタバレもいいとこ、クライマックスでギジョンが刺されるシーン。今回はここをピックアップ!

 このシーン、演出?脚本?すげぇ!!!と、観た時ちょっと感動してしまいました。
 映画の終盤、包丁を持った男(一応、誰かはぼやかしておきますね…笑)がギジョンに遅いかかってきます。刺されるその瞬間、ギジョンは手にしていたケーキを男の顔に思いきりぶつけるんです。よくバラエティとかで見る、あのパイ投げの図です。コメディの王道中の王道。
 それをこの緊迫したシリアスなシーンに入れてくるとは、なんというはちゃめちゃ具合。どういうことなのよ、ポン様。

でもでもでも。

このパイ投げシーンが、なんともリアルに感じられるから、この映画はすごい。
ちょっと想像してみる。
包丁を持った男が自分に近づいてくる。なんとかしなきゃ。どうにかしなきゃ。足は恐怖のせいなのか動かない。自分の手にはケーキ。どうするどうするどうする?
とっさの思いつきで、手にしていたケーキを男にぶつける。

想像してみると、実際にこんな場面に遭遇したとしたら、ギジョンのような対応しかできないんじゃないかな、と思うんです。
逃げ回るとか避けるとか、より良い対処法が他にたくさんあるかもしれないけれど、実際この状況に陥ったら、側から見たらコメディみたいでも、このシーンと同じことしかできない気がするんです。だからこそ、このシーンが余計リアルに感じられる。

制作側の意図として、完全にコメディに寄せるため(ブラックユーモア的な?)にこの演出をしたのか、はたまた私が感じたようなリアリティを観客に感じてもらうためなのかは不明ですが、いずれにしたってこのシーンは脱帽、シャポーでした。

現実=リアルって一番掴めないですからね。「現実の虚構」である映画を作る人って、日常をどんな感じで観察しているのか、すごく気になるなぁ。


3.ぐすたふのひとりごと 

 「この映画、すごいな」と思ったのが、映画後半部分の時間的濃度の濃い描写なんですよね。前半部分とのその差がまた面白い。

 キム一家が企てる計画の崩壊のきっかけとなる「パク家の元家政婦の再登場」が映画開始1時間3分頃にあります。約2時間10分ほどの映画のほぼ中盤。
 そこから後半は、ある半日のうちの出来事を描いているんです。前半の1時間は、ギウが家庭教師になる〜母親が家政婦としてパク家に雇われるまでの中長期間をポンポンとスピーディーな展開で描いてきたのに対し、後半部分は同じ1時間を半日の描写に割いている。この転調具合。そりゃあ、対象期間的にも、前半部分に比べて後半部分は細かく、ねっとり、じっくりした描写になりますよね。

 この後半のじっくり描写によって、私たち観客は、まるで映画のなかの登場人物たちと同じ時間感覚のなかにいるように感じさせられる。主人公たちと同じ緊張感を同じ時間的スピードで味わわされる。まるで、その場でコトの展開を見守っているような感覚に陥ってしまう。この映画を見たことある方は、映画後半は「固唾を飲んで見守る」状態だったのではないでしょうか?

といった理由で、この後半部分の描写が本当に素晴らしいな、と思ったので、今回のひとりごとにまとめておきました。後半部分がだらだらと冗長にならないのは、前半部分から色々とばらまいてあった回収すべき伏線がたくさんあることと、観客の感情を引きつける魅力的な登場人物たちのおかげなのではないかな、と思いました。

こういう構成が生み出す効果って、プロットを作成している段階でイメージできたりするのだろうか。いや、すべて意図しているんだろうなぁ。
これまたシャポーですわ。。。

さて、最後の最後のひとりごと。
この映画で一個だけ、伏線回収されてないんじゃない〜?と私が思ったのが、なぜギジョンはダソンを手懐けられたのか。
どうでもいいのに、なんかとっても気になるんですけど、私だけでしょうか?

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