#168日目 100年以上前の活版印刷、レタープレス体験記
こんにちは。ロンドンではじめての移住生活を送っているsacaikumiです。
7月後半の振り返り記事、まだまだ続きます。続いては、100年以上前の活版印刷を体験させてもらった話です。
The Printer’s Devilとしてレタープレスアーティストを12年やっているStephenのスタジオに月曜日と水曜日の二回遊びに行って、作品作りのコラボレーションを体験して来ました。
スタジオは8畳くらいの部屋で、びっしりと木版やインクがしまわれていました。
壁にはStephenの過去の作品がたくさん。
まず初めに、レタープレスの右も左もわからない私に、いろんな種類のフォントを見せてくれました。
こんなふうに引き出しの中にびっしりと仕舞われています。木版はビンテージマーケットを渡り歩いて集めていると言っていました。そして欠けている文字や、複数回使わないと言葉が作れないときは、新たに自分で木版を作ることで補充出来ちゃうのだとか。
その木版がオリジナルであれば(つまりコピーでなければ)、Aのタイポに制作会社の情報が載っています。
1888年に刊行されたフォント参考資料書はとてつもなく面白かった。ひとつひとつの文字がアート。少しも妥協がないのが伝わって来ます。
そしてこの本も手刷りなのだと思うととんでもない技術力。どのページもインクの乗り方が完璧な状態でした。
事前知識はそこらへんで、いよいよ本題の「何を刷ろうか」という話。
私の英語はお世辞にも流暢とはいえない拙いものだけれど(日本人ってすーーーぐ謙遜するよね)、去年からnoteを使って散々考えることをしてきて、さらにロックダウン下でもう一段深いところまで考えを掘り下げていったので、そこで得た着想を伝えて行きました。
次はその話を元に、言葉を探していく作業。
私の口から出たキーワードと、それを元に「マジカルバナナ(懐かしい)」したワードを書き出していって、合体させて一つのセンテンスに出来ないか考えました。
そして次は、選ばれた言葉をどのフォントで、どんなデザインで並べるかを考えるステップ。
ずっしりとしたフォントをどういう配置にするか、頭の中でイメージしながら置いてみます。
そうした位置が決まったら、今度はその文字がズレないように隙間を埋めていく作業。これのことをたまたまロックアップと呼ぶんだそう。
ロックアップが終わると、こんなふうにびっちりと隙間が埋まります。この作業、意外とパズルゲームみたいでなれないうちは大変でした。
Stephenくらいずっとやっていると、もう頭と目にインチがインプットされているみたいで、ぴったりの形を一瞬で探し当てていました。
私は後日ロックアップがうまく出来ない(わりと悪)夢を見た。
ここまでやって、ようやく印刷の準備が完了です。ここからは私の大好きな作業、インキング!
まずはローラーに均等にインクがつくように良く伸ばして…
慎重に木版に塗っていきます。Stephenがすごく簡単そうに手本を見せてくれたけど、意外と難しい。何よりこのコロコロが地味に重いし、私の身長では結構腕を高く上げっぱなしにする必要があるし、しっかりインクを乗せるために上から押す力を加えながら、周りが汚れないように引き上げる力も必要になってくる。(伝わるかしら…)
インクを2〜3回載せたら、紙を引き、重石となる紙を重ね、ローラーをがしゃん!と引く。(これはすごく重労働なので、写真はありません)
そして紙をペロリと剥がしたら完成です。
紙をそうっと剥がす感覚が最高でした。
お日様に透ける紙がまた美しい。
紙によって必要なインクの量が変わってくるので、仕上がりを見てインクの量を調整していきます。私の好みはパリッとしっかりインクが乗ったものなので、このときは少しCONTINUEのインクが足りなく感じました。
そんなこんなで一日物凄く楽しませていただいたので、もう1日を使って販売用の作品をすることになりました。
こちらが販売用。
私好みのインク多めのパリッと感出せました。
プリントの隅に情報を載せるためのインプリントも自分でがしゃんがしゃんと押させてもらいました。
目視で中心を探して、紙の重みで並行を取る。これもまたすごくフィジカルな体験でした。
刷った作品はこちらで購入頂けます。日本からの購入も可能です。英文ですが言葉の意味もサイトには掲載されています。
今年は難しいと思うけど、Stephenのスタジオでは定期的にワークショップが開かれているので、ロンドン旅行体験の一つとして参加してみるのもおすすめです。
Hackney Wickにスタジオがあるから、コロンビアンフラワーマーケットに行ってからのワークショップなんてスケジュール、最高だと思います :)
コロンビアンフラワーマーケットの様子。
最後に、プリントした作品のInstagram情報と、StephenのInstagram情報を載せておきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。