レビュー「レジェンド＆バタフライ」

東映70周年の記念映画、ということで期待値多めで足を運んだのだが、そこまで「悪くはない」という印象でしかなかった。ストレートに書けば、期待はずれ。

尺が足りない

そもそも、本能寺の変までを描ききるには、映画という素材は尺が足りない。それでも描こうとするから、場面の描写が薄っぺらになる。転じて、織田信長という人物が何処でどのように戦ったのかを知っていることが前提となり、物語への没入感を奪われる。場面転換ごとに、今、自分はどこの場面を観ているのか、という作業を頭の中の年表と照らし合わせるというレビュー作業がきつかった。

会話劇として

だから、本来、この映画は濃姫と信長の「会話劇」として楽しむべきなんだと思う。ベタな尾張訛りが随所に散りばめられているのは、少々、余計な感じもするが、会話劇と、そこから派生するアクション、苦悩、喜び、悲しみ、そんなものを楽しめば良いのだと、気がついたのは物語中盤のド派手な殺陣の後だった。

綾瀬はるかの映画

会話劇、という観点から言うと、綾瀬はるかの演技力が見事。木村拓哉は、それなりの技量はあると思うが、時代劇における彼を見慣れていないせいか、綾瀬はるかの映画、という感じがした。さすがは大河主演女優ですね。

それでも苦言

それにしても、最後の本能寺の変の描写は取ってつけたような殺陣と、演出で、興ざめだった。「ハッピーエンディング」と、「ノーマルエンディング」、両方を用意するのは、まあ良しとしても、映画である以上は大河ドラマを超えるような演出は欲しい物だと思う。
謀反を起こした明智光秀のモチベーションも、もう少し長い伏線があっても良かったのではないかな、と。