陛下を救出する方法はあるのか?──政府の「皇室制度」改革に幕を引いた天皇誕生日会見 4(2017年10月04日)
(画像は平成24年のお誕生日会見に臨まれた陛下。宮内庁HPから拝借しました。ありがとうございます)
あとがきにかえて
▽4 陛下を救出する方法はあるのか?
70年前、昭和天皇のご聖断によってポツダム宣言受諾が決まり、日本は戦後への道を歩み始めました。いままた、天皇統治の根本に関わる「女性宮家」創設のかまびすしい論議が、陛下のご意思によって幕が引かれました。
国家の最重要課題について、最後の切り札であるはずの天皇に頼らざるを得ないという現実は、皇室制度の不備ではなく、行政機関・官僚機構が十分に機能していないことを示しています。
30余年前、場当たり的な昭和の祭祀簡略化が表面化したとき、20世紀を代表する保守派論客だった福田恆存(つねあり)は、こう語りました。
「このことが、もし本当だとしたら、大問題ですね。私には冗談としか思えません。現行憲法の中では、自衛隊問題と皇室問題はパラレルな関係にあると思っていましたが、皇室の方は自衛隊における『専守防衛』程度の原則にあたるものさえできていないようです。
…(中略)…お祭りというのは国家にとって大事なことであり、天皇の祭祀は個人のことを祈るわけではなく、国家のことを祈るわけですからね。もしこんなことを宮内庁が続けるとしたら、陛下を宮内庁から救出する落下傘部隊が要りますねえ」(「週刊文春」昭和58年1月20日号)
その後、事態はますます悪化しています。
「1.5代」天皇論に取り憑かれ、125代の歴史的天皇像を否認し、暴走し続ける側近たちから、陛下を救出するには、何が必要なのでしょうか。福田恆存がいう、「冗談」ではもはや済みそうにありません。
(そして、案の定というべきか、陛下のご譲位問題に関連して、女性天皇・女系継承容認=「女性宮家」創設論議がまたぞろ復活したのです)
さて、最後にひと言申し上げます。
この本をまとめるに当たって、畏友・佐藤雉鳴氏から貴重なご助言と励ましを賜りました。佐藤氏は私の仕事を深く理解する、数少ない1人です。佐藤氏の存在がなければ、この本が日の目を見ることはなかったでしょう。心から感謝の意を表します。
もうひと言、つけ加えます。父が逝って、6年になります。親孝行らしいことができなかったせめてもの罪滅ぼしに、この本を亡き両親と、晩年、体調を崩し、いっしょに酒を楽しむ機会が減り、後を追うように他界した義父の御霊(みたま)に、この本を捧げます。
平成27年4月 父の7回忌を前に。あの日と同じ満開の桜のもとで