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【読書感想】エンジニアのためのデザイン思考入門

タイトルからデザイン思考の手法が淡々と紹介されている本と想像していたのですが、一読して驚いたのは、この本は何よりも東京工業大学「エンジニアリングデザインプロジェクト」の、成功談だけではなく失敗例もたくさん含まれた生々しいドキュメンタリーであること。

(エンジニアリングデザインプロジェクトとは、デザイン思考を実践的に学ぶ東京工業大学の授業です。2015年度から始まったこのプロジェクトでは、実際にデザイン思考を用いてプロダクトを生み出しています)

もちろん、デザイン思考の様々な手法が(ふせんの色やペンの持ち方などまで!)具体的に紹介されており、またタテマエメソッドのような日本人向けにアレンジされた手法も紹介されておりそれだけでも業務に即役立ちますが、それだけにとどまらず、デザイン思考は「マインドセット」であり、具体的な手法にこだわるべきでないとか、目的のために柔軟に手法をアレンジする大切さもあわせて書かれていることが説得力を高めています。

最初に「失敗例もたくさん含まれた」本と書きましたが、僕がこの本に感じた最大の魅力はまさにここです。例えば、エンジニアとデザイナーの仕事の進め方や価値観があまりに違ってプロジェクトが進まないという失敗例が紹介された後に、チームでデザイナーとエンジニアを理解するための漫画をお互いに読むといった解決策が提案されています。
うまくいかないから「デザイン思考はダメ」ということではなく、ユーザーが喜ぶプロダクトを世の中に産み出すことは「うまくいかなくて当たり前」とチームで認識した上で、手法を柔軟にアレンジしたり、謙虚さやお互いを尊敬しあう心構えの大切さも丁寧に書かれていることが印象的でした。

ややもすると言われたことだけをするようになりがちなエンジニアに、これからの時代にふさわしい「手がよく動き、新しい価値を想像する力のあるエンジニア」になってほしいとの思いから書かれたエンジニア愛にあふれたこの本ですが、同時に、エンジニアだけではなくデザイナーやプロダクトオーナーなど、チームでものづくりをする人全員が読むべき本だと思います!

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