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【#163_研究メモ】ファミリービジネスにおける "質的研究のテンプレート"とは何を指すのか?~Köhler et al.(2024) からの学び vol.02

Köhler et al.(2024)では、ファミリービジネスの質的研究において、テンプレート的に分析手法を当てはめることの弊害について語られています。

本論の中で、テンプレートとして扱われているのは、

Gioia Method
Eisenhardt Method
Langley Method

でした。

Langleyの分析アプローチは、不勉強で、初めて聞いたのですが、Gioia Method、Eisenhardt Methodは、確かに質的研究の論文を読んでいると、よく見る手法かなと思います。

Köhler et al.(2024)は、

”歴史的に、テンプレートの作成は、質的研究が組織研究においてまだ目新しく使用されていない手法であったときに、質的研究を正当化する上で重要な役割を果たした”

”テンプレートは、研究者間の共通言語を生み出し、質的手法の訓練を受けていない読者が質的研究を理解し解釈するための枠組みを構築することを可能にし、一流ジャーナルへの掲載を促進し、より多くの研究者による質的研究手法の採用を促進した”

としつつも、

”時間の経過とともに、テンプレートの使用は独自の発展を遂げ、質的研究の多様性、柔軟性、革新性を制限し、制約するという点で、当初のテンプレートの多くの意図をはるかに超えている”

と指摘しています。

Gioiaや、Eisenhardt、Langley も、自身のアプローチが、”テンプレート化される”ことに対して懸念を伝え、それらの手法の広がりを、必ずしも望んでいないと、コメントしているのも印象的です。

また、

”今日、テンプレートを適用することによって、査読者は、研究者の能力に疑念を抱くようになり、実施されている研究に対して疑念を抱くようになることが多い”

テンプレートを活用することは、一見、研究プロセスの道筋を明らかにし、効率的にデータの分析・論文執筆を進めやすくしてくれるようにも感じます。しかしながら、状況にそぐわず、テンプレートをいたずらに使うことが、研究力に対する疑念に繋がり、査読プロセスでの確認がより厳しくなる、みたいなこともあるのでしょうか。

今、投稿を考えている学会誌で、過去に採用されている質的研究のアプローチについて整理していました。学会誌の傾向として、過去の論文の採録状況を確認するのは、一つの戦略として大事なことだなと思います。学会誌ごとに、やはり傾向はあるので。ただ、当たり前ですが、「過去に通っている手法だからこれで!」というのは、分析アプローチを選択する上では、まったく理由付けにならないのだなと(苦笑)

研究の目的と、分析対象の状況を考えたときに、最適な手法を選択できるように、各手法についての理解を増やしたいなと思いました!

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