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【#153_研究メモ】 ファミリービジネス領域における将来に残された研究テーマとは何か?~Rovelli et al.(2022)Thirty Years of research in family business journals からの学び vol.03
Rovelli et al.(2022) Thirty Years of research in family business journals では、 ファミリービジネスに関する主要学会誌である、Family Business Reviewと、Jounal of Family Business Stragegy、Journal of Family Business Managemenの3誌について、Bibliometrics(計量書誌学)の手法を用いて分析を行っています。
今後、研究が必要な領域として、次の4つが取り上げられていました。
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確かに、分析単位として、ファミリービジネスというと、ファミリー×経営の領域に従事する、創業家の取締役等に焦点が当たり勝ちかなと思います。ノンファミリーメンバーや、特に、現場メンバーも分析対象になった研究はまだ出会っていないような気がします(質的研究が多いというのもあるのだと思います)。マルチレベルでの分析や、縦断的な分析がなされることで、事象を、一つひとつ点で捉えるのではなく、より広く、面で捉えることが可能となり、研究や実践的な面での示唆が高まりますね。
ファミリービジネスの事業承継は、経営のバトンを引き継いだ瞬間から、次のバトンタッチが始まるので、それを縦断的に追っていく研究も、時間はかかりますが、面白そうです。30年スパンでの定性研究、やってみたいような怖いような(笑)
研究手法の面では、QCAが取り上げられているのが印象的でした。質的な分析と量的な分析のハイブリッドの様な手法ですが、サンプル数が、そこまで多くなくても、定量に近い分析が可能ということで気になっていました。いつかチャレンジしてみたいです。組織開発の領域でも、プロジェクトのタイプによっては、サンプル数がそこまで増えない案件が多いので、QCAを活用しての、実証的な分析は、テーマによってはハマるのではないかと妄想しています。
具体的な問いも記載されていました。
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ここまでリサーチクエッションを丁寧に記載してくださっているレビュー論文も珍しいなと思います。これをヒントに研究を進めると、査読を通りやすいでしょうか(笑)
取り上げられている中で、自分が気になった問いとしては・・・
・家族の変化はどのように、またなぜビジネスの変化に影響を与えるのか?
・伝統はどのように生まれ、なぜファミリー企業は伝統に執着するのか?
・高齢化が進む危機から派生するファミリー企業の課題とは何か?
・オーナー、起業家、経営者の感情は時間とともにどのように変化し、その変化はどのような結果をもたらすのか?
・感情は事業承継のプロセスとその成功にどのような影響を与えるのか?どうすれば感情の影響を減らすことができるのか?
・リーダーシップと所有権の継承は、ファミリー企業内の意思決定権限の分配とその意思決定プロセスに影響を与えるか?
・創業者や現リーダーのどのような心理的属性が、事業承継プロセスの成功に影響を与えるのか?
・既存のソーシャル・キャピタルは、どのようにしてファミリー・ファームのリーダーやオーナーから次の世代に引き継がれるのか?
現経営者や後継者以外に、このような継承に関与するアクターは存在するのか?
・家族参画のすべての側面をよりよく捉え、測定するための新しい尺度をデザインすることは可能か?
・実験を用いることで、ファミリービジネスの機能の背後にある動機やダイナミクスをよりよく捉えることができるのか?
・コンフィギュレーショナル・アプローチ(クラスター分析、fsQCAなど)を採用することで、ファミリービジネスの特徴や機能をよりよく把握することは可能か?
・ソシオグラムやソシオジェノグラムの使用は、家族関係者間の関係をよりよく理解することによって、ファミリービジネス研究の発展に役立つのか?
・縦断的ケーススタディは、ファミリー・ファームの進化を捉えるのに有効か?
問いを見ているだけでも、いろいろとアイディアが膨らみますね!
問いを論文の形に仕上げ切る、研究力を身に付けられるように、精進したいと思います。
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