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第6回_まちづくりのものがたりづくり_レポート

こんにちは。
さいと未来のまちづくり会議 運営事務局の田上沙慧美です!
2024年1月18日(木)19:00~21:00に開催した、第6回 さいと未来のまちづくり会議のレポートを綴ったnoteです。
当回が、今年度のさいと未来のまちづくり会議最終回になります。


講師紹介

今回、講師にお迎えしたのは、Creativity for local, social, globalを掲げる株式会社POPのクリエイティブディレクター・コピー/シナリオライター田中淳一氏。全国各地の自治体やローカル企業のブランディングやプロモーションを中心にコミュニケーションプラニングを手掛け、国内外で高く評価されています。
クリエイティブディレクターという仕事は、最近よく聞くことが増えた肩書かもしれませんが、具体的に一言で説明できる人は少ないのではないでしょうか。

クリエイティブディレクターって何をする人?
クリエイティブディレクターは、クリエイティブ(=デザインや言葉、映像などのアイデア)を使って、経済課題や社会課題を解決するスキルを持った人です。例えば、経済課題とは、企業の「物が売れるようにしたい」という課題であったり、社会課題とは、地域が「若い人たちに住んでもらいたい」などの課題が挙げられます。
その、クリエイティブディレクターが、どのように仕事を進めるかというと、大きく分けて、「着想」「企画」「定着」の3つの段階を順番に踏んでいきます。
まずは、着想の部分で、クライアントの課題の本質である根源課題を発見し、課題解決のためのコンセプト開発をします。そして、コンセプトに基づいたアイデアを開発していき、定着の段階で、アイデアを具現化し、クリエイティブのアウトプットのクオリティを向上させます。
普段何気なく目にしているCMやポスターは、単にかっこよく、おしゃれにPRしているのではなく、そのクリエイティブで解決したい課題があり、それを解決するためのクリエイティブになってるのです。

クリエイティブディレクターが必要な背景

もう時代は、ただ売りたいだけの企業は生き残れない時代になっています。インターネットやスマホの普及により、情報爆発が起きている現代に暮らす生活者は、情報選択の感度が高くなったと言えます。
2025年には、ミレニアル世代(1989年~1995年生まれ)が日本において50%を占めます。この、これからの消費の中心となるミレニアル世代の価値観として、社会問題への関心や社会への貢献の意識が強く、その下のZ世代ではなおさらその意識が強いと言われています。
そのため、「売りたいだけの商品」「来て欲しいだけの観光地」ではなく、「企業がなんのためにやるか」「地域は何のために存在しているのか」、この社会的存在意義/パーパスが、これから消費の中心となるミレニアル世代/Z世代に問われ始めているのです。
国内のマーケットは最低でも20年縮小し続け、同じ数のものを作り続けても、買う人や訪れる人は明らかに減っていきます。そんな社会の流れのなかで、生活者に選んでもらうには、「何をやるか」ではなく「なんのためにやるか」を知ってもらうことが、より重要になっていきます。
この、生活者に知ってもらうコミュニケーションプラニングをになうのが、クリエイティブディレクターです。

事例紹介

■鳥取市

鳥取市でシティプロモーションのプロジェクトが始まったのは、まだ鳥取にはスタバもセブンもなかった時代でした。市民は自虐的に何もないという鳥取市の根源課題を、誇りがないわけではなく、眠っている状態で誇りを起こしていくことが最優先だと着想。「Tottori discover Tottori」というコンセプトで、市民100名を集め自分たちが思う”すごい!鳥取”ネタを100みつけるワークショップの実施からスタートしたそう。ワークショップで出たアイデア1つ1つは小さなネタだが、最終的にはすごい!鳥取市100SUGOBOOKという本として出版されたことで、市民に自信が芽生え始めたといいます。
そこから徐々に、首都圏に向けたシティプロモーションを始め、都会の若者と鳥取市の人たちを義兄弟にする「鳥取ブラザー&シスター届」、都会の若者に鳥取市の移住体験「すごい!鳥取市ワーホリ」など、都会と鳥取市を繋ぐアイデアを、生活者の目に留まるクリエイティブで成功させてきました。
その後も、日本一住みたい田舎から、日本一住みたい街の人への伝言をプロモーションコンセプトに、吉祥寺駅にポスターでPRを展開し、話題性を博してニュースに取り上げられたことで、鳥取市民のさらなる鳥取市への自信の醸成にも繋がったそうです。2023年は、Z世代と鳥取市の関係人口を増やすことを目的に、アメリカ・アジアにファンダムのある「新しい学校のリーダーズ」のPVを鳥取市で撮影。YoutubeでPVを見たグローバルなZ世代が鳥取市を聖地として訪れるまでに変化しました。

■登米市

全国1700超ある自治体の中でも認知度がほぼないに等しい登米市(とめし)。まずは名前を憶えてもらうことを最優先課題とし、市民への登米市の魅力のヒアリングから始めたそうです。「うちでは、餓死することはないよ!」という言葉から着想を得て、「登米無双」というコンセプト動画を製作。ネガティブな意見も複数あった一方、観光映像対象受賞や世の中の反応が後押して、「登米無双2」「登米無双3」までシリーズ化。動画の聖地巡礼で登米市を訪れる人や、登米市という地域プロフェッショナルサポーター制度が根付いたといいます。
このシティプロモーション以前は、認知度もほぼ0だった状態から、連続テレビ小説「おかえりモネ」の舞台となり、市民のプライドの醸成に繋がりました。

■雫石

それぞれ個性的な4つの地区が町を構成しており、町内がなかなかまとまらない課題を抱えていた雫石町。町を売り出すには、まずは町がまとまった方向を向いていくことが重要だと根源課題を設定しました。
地区ごとに地域会議を開いたヒアリング、小中高それぞれに取材を行い、ブランドメッセージを決める投票を開催し、最終的に「虹の似合うまち雫石町」を町のスローガンに策定。町内各地にロゴやスローガンを設置して浸透させた結果、町民から虹が出た野心が投稿されるようになり、写真展や虹の商品開発が活発になったそうです。こうして、ロゴやスローガンが町内に浸透し、様々な場面で使われたりイベントのコンセプトになるまで、5年を要したといいます。

■今帰仁村

ドローンの4K空撮動画が流行っていた時代、「ドローンでいい動画を撮ってほしい」との依頼から始まった今帰仁村でのプロジェクト。田中氏はすでにドローンでの観光地動画が流行っているなかで、話題になるかが疑問だったと言います。また、田中氏が実際に今帰仁村に宿泊して村を歩きながら、良くも悪くも手付かずの村のため、観光客を受け入れる体制が十分ではないという課題や、「荒らされるのは嫌だから、誰にでも来て欲しくはない」という村民の意識に気付いたそうです。
「海」という沖縄共通のセールスポイントでの競争は、競合相手が多すぎて分が悪いことは明らかです。観光が盛んな沖縄の南部では、すでに沖縄旅行がfast化している一方で、村を歩くとほぼ村民が声を掛ける人懐っこさや田舎の温かさが残っているのが今帰仁村。そこに今帰仁村ならではのブルーオーシャンを見つけ、「slow okinwa」をコンセプトに掲げてショートムービーを製作しました。そこから動画を見て共感した一人旅の旅行者が訪れ、ホテルがないことから増加した民泊では、現実でみも動画のような時間が村民と旅行者の間で紡がれています。

地域の”もの”を”ものがたり”にするポイント

地域に眠る良いもの(=スペック、ポテンシャル)をものがたりへの昇華する5つのポイントがあるといいます。
1.引き算する
何でも伝えたいは、何も伝わらないとほぼ同じ。何を企業の強みとして、地域像を目指すのか、引き算をして確固たる指針を作り発信するのが重要である。

2.オリジナルを探す
そこにしかないオリジナルな魅力は必ず存在する。ヨソ者の視点を入れるなどして発掘し、磨くことが大事である。

3.”もの”に込めた想いを伝える
スペックでは差別化が難しいが、ものづくりに込めた想いこそ地域からの情報発信においては優位点になる。

4.ホスピタリティを大事に
情報の押し売りはスルーされるどこか、嫌われる時代。受け手が能動的にみたくなる、知りたくなることを心掛けないと誰にも届かないし、地元住民が誇らしく思える気遣いも必須である。

5.クリエイティブを活用する
人は最終的に好きか嫌いかの共感軸で物事を判断する。正しいことを正しく伝えるのが正解ではなく、人に好きになってもらうには、クリエイティブの力を活用することが有効だという。

きれい、おいしい、やさしいなど。
地域の良さがスペックのままの状態だと、似通った表現のため、人には届きません。
このスペックを、ターゲットに届くよう”ものがたり”へと最適化し昇華するのが、クリエイティブの役割ですが、このクリエイティブの仕上がりによってものがたりの出来は大きく変わってきます。

西都のパーパスブランディグを実施するヒント

冒頭で記した通り、西都市が生活者に受け入れられるためには、社会的存在意義の確立が重要です。
西都市のポテンシャルである「西都市の特色」や「地域住民が培ってきた想い」と、
この時代の生活者に価値のある「さまざまな社会課題」や「生活者が求める知的欲求・感動体験」など。
この両方を内包する場所に西都市の存在意義が眠っています。
この存在意義を見つけ、生活に伝えて共感を得ることが、西都市の活性化に繋がっていくのではないでしょうか。

(文責:田上沙慧美)


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