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小説とWEBの狭間で美しく苦闘したい

お帰り。
ただいま。

たったふたこと。

このたった二言に、
どれだけのパワーが宿っているのだろう。
やはり言葉は計り知れなくて、
その言葉の内側に秘められた想いは
その人にしか分からない。
または、その人たちにしか、絶対に分からない。

自分の書いている言葉。
並べている言葉。

自分はいつから原稿用紙を捨てたのだろう?
いつから、WEBライティングばかり習得しようとして
「中学生でも読める文章」に拘るようになった?

それが書けることは
たしかに親切かもしれない。
世の中に求められている文章は
そういう文章かもしれない。

小説のような小難しい言葉が
並んでいる本は、いつしか
読まれなくなるのかもしれない。

そう思うと、すごく悲しい。
でもきっと
それも間違いだ。

だって小説は何千年と前から
今日までずっと、
文化として
歴史として
生活として
過去として
未来として

自分たちの前にあるじゃないか。
生き残っているじゃないか。

「なんでも書ける物書きになりたい」
僕は友人にそう言った。
だけどいつかこうなると分かっていた。
こんな気持ちになると分かりきっていた。

それでも。

WEBライターとして
SEOライティングが不自由なく
書けるように。

セールスライターとして
どんなキャッチコピーも
書けるように。

シナリオも
取材も何もかも。

不自由なく書ける人になりたい。
いつ、そんなふうに思ったんだっけ?
だいぶ前のような気もすれば、最近だった気もする。

不自由なく。
なに不自由なく書く。

そんな文章、ほんとうに必要か?
そんな文章が本当にあるのか?

僕は小説を書く。
二年前から本格的に書いている。
いろんな公募賞に応募して、
去年やっと第一選考を通過した。

ほんとうに
涙が出るくらい
嬉しかった。

いちばんに報告したのは
中学二年生の頃からずっと
一緒だった愛犬のポメラニアン。

ここでは、まだ名前は出さない。
なぜか?

大切だからだ。

ここへ彼の名前を載せるのは
自分の本名を載せることよりも
よっぽど勇気が要る。

だから。

まだ僕は彼の名前を
ここへは綴れない。

でもいつかきっと、
自分の本名と一緒に
ここへやってくる。

「聞いてよ!第一選考通ったよ!
二年前に語彙力って言葉も知らなかった
この僕が、きみのおかげで……!」

「……ありがとう。」

「だってこの物語は、きみが死んでしまってから書いた
僕の最大の願いの物語。死んだはずのきみが、僕の目の前に
帰って来てくれる物語。ラストシーンだけじゃなくて
初めから中盤、中盤から最後まで目を腫らして書いた物語。」

言葉の重みが、他と桁違いだった。

それなのに。
きみは遺骨になったまま
うんともすんとも言わないんだ。

だから聞こえた言葉が
自分の頭の中にあった言葉だったのか
きみの囁きだったのか、今でもハッキリしない。

"これは僕たちだけの物語じゃない。
だから、このままじゃダメなんだ。
他の物語と言葉の重みが違っては
ダメなんだ。
僕たちだけじゃない。
この世界中で今日も藻搔いている人
が何人もいる。物語はひとつじゃない
"

きっとその通りだ。

美しい言葉だった。
美しいから
痛かった。
すごく痛かった。

作家って怖い。

自分でない他の誰かの
人生に関与するんだから。

物語りを書いてるときに、思うことがある。
物語りは、自分が綴っているはずなのに
なぜだか逆転する。それも比較的早い段階で。

いつも彼ら彼女達は、
自分の人生を
自ら歩み出す。

僕はそれを傍らで
覗いている気分になる。
無防備な彼等の人生を観てる。
指先をキーボードに当てながら、
いつだって彼等を見守っている。

だから誰かが死んでしまった時に
生き返らせたくて仕方ない。

でも現実はそれを許さないんだ。
その世界はもう
僕の世界じゃないから。

その世界はもう彼等の世界であって
僕の世界じゃない。
僕は彼等に何もしてあげられない。

ひとつの物語に、死んでいく人間や動物が
必ず出てくるわけじゃない。
それでも、そのような展開になった時、
こちらをじっと睨んでくる人物の視線に
気が付かないわけがない。

すごく憎んでいる。僕のことを。

「どうして?お前が書いているのに助けてくれないの?
そのキーボード上で、clearすればいいじゃない?
原稿用紙に書かれた文字をその消しゴムで消せば、
すぐに助けることができるでしょう?
あなたは残酷だ。こうして私たちを生んでおいて、
勝手なやつよ。見捨てるんだもの」

見捨てて、いないはずなんだ。
仕方がないことなんだ。
きみたちの世界を、簡単に変えることはできない。

そうじゃないと、
言葉に重みがなくなる。
言葉に重みがなくなると
嘘になってしまう。

嘘の世界になったら、
そもそもきみ達は消えて無くなってしまう。

全部、そうして繋がってるんだ。
ごめん。ごめんよ。

きっと今日、ここへ綴った言葉たちは
今日しか書けない。
明日になれば、同じ熱量で書くことが困難だから。

今日書けなかった文章が、
明日になれば書けることもある。

文章は生きているから。
だから、WEBと小説を両方書いていくには
もっと訓練が必要だと思う。

僕が文字を綴る理由は1つしか無くて
とても単純だから。

誰でもいい。
誰でもいいから、誰かの役に立ちたい。
人生で出会うことのない誰かが、
いつか僕の書いた文章を読んで、
泣いたり
笑ったり
怒ったり
喜んだりしてほしい。
ほんとに笑っちゃうけど
綺麗ごとに聞こえるけど

ただそれだけ。


皆、今日もありがとう。
寒いから、風邪引かないでね。

本当いつもありがとう。

それでは、また明日ね。

ー文章ー
 文章の中にある言葉は辞書の中にある時よりも美しさを加えていなければならぬ。(芥川龍之介)

ー文章ー
 文章に善悪の区別、たしかにあり。面貌(めんぼう)、姿態の如きものであろうか。宿命なり。いたしかたなし。(太宰治)



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