老人ばかりとなった町に若い世代はどうすれば住んでくれるのか。
最近、生産緑地の指定の解除の影響もあり、畑をつぶして、道路がつくられ建売住宅がズラッと建てられる景色が郊外ではよく見受けられます。
そこに住むのは若い同世代の家族がほとんど。世代が同じなら、子育ての話題を中心に話題も盛り上がり、ご近所づきあいもなかなか楽しめる日々となるのではないでしょうか。
一方で・・・この光景は、戦後に大量につくられた団地の光景に似ていないでしょうか?
同世代だけが限られたエリアに一斉に入居し、建物と共に歳を重ねてゆく、という点で。
戦後、住宅不足の問題に対してとにかく量をつくるのだ、という流れの中で団地建設が盛んにおこなわれましたが、半世紀以上がすぎ、団地に魅了されて入居された方々は高齢になり、団地自体も建物として高齢になりました。
それにともない団地に近接していたお店も閉店し、買い物にすら困難になっています。若い世代が住むためには、団地の間取りは現代では狭く、生活スタイルにはあわなくなっているので改修もしくは建替えする必要性があります。
団地の構造体は壁により構造体が構成されているため、地震などには強いのですが、壁を撤去して間取りをするということが難しいという弱点があります。
おまけに4階建て程度ですと、エレベータは未設置がほとんどです。
改修が無理なら、建替えればいいじゃん・・・地球環境問題が叫ばれる中、この考え方だけで、ずっとやっていけるわけでなさそうです。
そんな問題の解決に一石を投じたものがあります。
そのひとつが、東京都日野市のたまむすびテラスです。
UR都市機構の「ルネッサンス計画」のとりくみの一つとして、団地型シェアハウス「りえんと多摩平」と菜園付き共同住宅「AURA243多摩平の森」そして高齢者向け住宅「ゆいまーる多摩平の森」により構成された多世代型街区となっています。
まず周囲環境と敷地内の建物はこんな感じにレイアウトされています。
この地域は地域医療福祉拠点化として、整備されていることもあり、いい感じに高齢者向け住宅の周りに施設が集まっています。
高齢者用住宅の近くにはシェアハウス、菜園付き共同住宅の他、レストラン、公園、駐車場、病院・・・があります。
朝起きて、散歩と菜園を楽しみ、食を楽しみ、子供たちと触れ合い、現役世代の活動力が常にそばにあり、家族が遊びに来てもきちんと駐車場が近くにあり、病院があって安心・・・とおじいちゃん、おばあちゃんになっても暖かい日々の物語が想像できます。
さて、具体的にひとつひとつ敷地内の建物をクローズアップです。
■団地型シェアハウス「りえんと多摩平」
団地型シェアハウス「りえんと多摩平」は2棟あります。2棟の間に中庭のスペースがあり、自転車を置き場もあり、デッキに、テーブルに・・・とコミュニケーションを誘発するしかけがたくさん仕込まれています。
コンクリートの壁が建物の主体のため間取りの変更が難しいので、そこをどうするか・・・ですが、壁をいじくることなく内装で勝負しています。
しかも1階については南側にデッキを張りつめて、リビングからアクセス可能にするような工夫が見られます。
■菜園付き共同住宅「AURA243多摩平の森」
菜園がたっぷりと建物の周囲にあり、1階の部屋については、その部屋専用の菜園が南側にまるでリビングから続く庭のように設計されています。
また建物周囲の菜園についても使いやすく整備されており、散歩する人が見るだけでも楽しめそうです。
■高齢者向け住宅「ゆいまーる多摩平の森」
高齢者向け住宅「ゆいまーる多摩平の森」。
エレベータの問題を後付けの廊下とエレベーターで解決しています。
コンクリート構造の建物に鉄骨でつくった廊下とエレベーターシャフトを設置しています。1階のエレベーターへのアクセスには階段とスロープで対処しています。
■周辺の建物たち
UR都市機構には、高齢者の近くに住む場合は家賃の割引があるという「近居割」というしくみもあるようです。
このような経済的な支援なども組み合わせて、多世代がともに生活しやすい場をつくることが必要とされています。
畑をつぶして、道路を造り建売住宅を建てて、若い同世代だけが住む・・・というビジネスモデルもそろそろ考え直す時代に来ているといえるでしょうか。
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