見出し画像

医学部予備校:予備校選びにおけるポイント・各予備校ごとの違い

大学卒業後から今年度まで、様々な医学部予備校に出講していました。医学部予備校で教えた経験から、「医学部予備校って様々だな」と感じたので、どのような医学部予備校が良いかな?ということについて書いていきます。
ポジショントーク的に言えなかったことも多かったですが、今回は建設的な形で言えるところは言っておこうと思います。

この記事の概要
医学部予備校・大手予備校で教えている側として感じているそれぞれの予備校の差異を紹介する。

これから予備校を決めようとしている生徒・保護者にとって最善の予備校を選ぶことができるようにする。
・一つの予備校のみ勤務していると感じにくい様々な予備校のメリット/デメリットを紹介することで、それぞれの予備校でもっと教育内容がより良くなるようにすることを促す。
という狙いでこの記事を作成しています。

私(西園寺)の出講経験がある(授業なしでの関与はカウントせず)医学部予備校は7箇所ありますが、これらのところだけではなく、私が見聞きした話も念頭に入れて記事を書いています。「この予備校のここが良かった・悪かった」という話において、あまりにも具体的に指摘することはしませんのでご了承ください(暴露系だと暴露する代わりに後半有料にするという方法を取るのでしょうけどそうはしません)。
なお、今年の勤務先のほとんどは来年度は対面での授業はしません(代ゼミと他1箇所のみ来年も対面で指導)が、それは先日の記事(https://note.com/saionji_chem/n/n15c211508638)にもあるように悪かったと思っているからではありません(昔働いたところで1箇所のみパワハラが酷かったので早々とやめています)。

医学部予備校のメリット→医学部受験に関する情報がちゃんと生徒に伝わる!

医学部予備校に通うべきもっとも大きな理由は情報を手に入れることです。情報はとにかく重要です。都市・地方間の教育格差も根本的には情報の有無の違いです。近年はオンライン等で改善はされていると思います。対面・オンラインに関して、利点・欠点等は今回は議論しませんが、いずれにせよ、情報を手にいれることは何よりも重要です。
なお、大規模すぎると医学部受験に関する情報が(たとえ塾・予備校側が持っていたとしても生徒側が受動的な姿勢だと)手に入らないこともあります。

検討事項のまとめ

以降長文で色々書きますが、検討すべき内容(必要に応じて申し込みの際・面談の際に聞くべき内容)をまとめると以下の内容です。
サービスの内容、学習システム
講師陣(HPに載っている場合は調べれば良い。HPに載っていない場合にどういう人が教えるかは申込み・面談の際に聞く)
予備校のテキストがあるか(カリキュラムとかでも大丈夫)
・個別 vs 集団
・厳しい vs 緩い 
(下二つの項目は自分の問題・性格を真剣に考えているかどうか次第)
(料金は注意。料金はいきなり聞かない。根拠と共に考える。料金は試算の仕方次第でブレがあるので注意)

検討事項1:お金の問題

気になることだと思いますが、値段の背景も考えた方が良いです。

一般的な予備校の相場
一般的な予備校の相場は(医学部コースであっても)100万前後だと思います(成績優秀者は特待などで安くなることが多いですがそれは予備校側が合格実績を獲得したいからというのが一番の理由です。別にそれ自体は悪いことではないと思いますが⚪︎進は批判されても仕方ないかなと思います)。
大手予備校の話(代ゼミ、駿台 等)はここでは深入りしませんが、「自分でちゃんと勉強できる」ならば大手予備校の方が(コスパを考えると)良いかなと思います。

医学部予備校の相場
本当にピンキリです。講習料金等も含めて300万〜700万前後かなと思います。以下の注意点のほか、講習料金を含めるかどうかによって見かけの表示が安いように感じるのでそれは注意しましょう。

注意①:後から個別指導料等で増える

医学部予備校の場合、集団授業のみという場合よりは個別指導も追加オプションで取れることが多いです。というよりは普通は個別指導も付きます
これは個々人を伸ばすうえで良いとは思います。考え方としては、個別授業を取ることを前提に考えた方がいいかなと思います(=最初は取らないつもりでも結局は取る方がいいと思うようになる)。なのでそれ込みでの値段で考えるようにしてください。

注意②:安いところに注意

安いところは多分サポートが甘いor講師の質が低いです。
私は基本的には、「良いサービスはお金がかかる」と思っています。それを高いままにせず企業努力・方法で安くできる(広告をあまり打たない/他の仕事でうまくいっているから予備校事業は慈善事業 等)かどうかがわかると良いかなと思います。

注意③:個別授業塾について

個別授業塾の場合、全部の授業数が短い(そして時間対費用が高い)のは欠点です。個別授業だから授業時間数がかなり圧縮できるかというとそうは思わないです。個別授業の理想としては「ある程度やるべきこと(他の人と共通)をやる+それぞれの個人に不足している内容・苦手な内容を強化する」なのでそう考えると結構な時間数は必要になります。
時間帯費用に関しては、個別授業塾の場合(当然ですが)払う金額の半分以下しか講師は報酬として受け取らないのでそのへんも加味して安すぎるところを選ばないようにすべきでしょう。

検討事項2:講師陣

場所によって少し話は異なるかなと思います。
一般論としては、集団授業塾の方が優秀な講師は集まりやすいと考えています。もちろん集団授業塾の方が高いのは大変だからというのもありますが、あくまでも個人的な意見としては「個別授業が大変ではない」場合は準備不足なのかなという気もします。というのも、個別授業もちゃんと個々に最適化された授業をしようと思うとそれなりに準備が必要になってきます。必然と大変になるので、力量のある先生(=集団授業の塾で引く手あまたな先生)はあまり個別授業はやらないかと思います(どっちかというと私が得意なのは個別授業ですがこれからそこまで多くは引き受けないと思います)。

都内・首都圏の場合

優秀な講師が複数の予備校を掛け持ちしていることが多いです。なので講師陣だけで決めるのは良くないと思います。ちゃんとどういうふうな学習システムでやっているのかを考えるべきかなと思います。優秀な講師陣であることは最低条件で、それに加えて+αの内容があるかが大切です。

私が勤めていたところではない医学部予備校について生徒が「ここの講師はすごいんだよ!」と言ってたことがあったのですが、(結構業界のことを知っているつもりの私でも)全然知らないこともありました。洗脳されているだけという可能性もあるので、「良い講師」かどうかはある程度複数人の評価を見聞きする方が良いです。

また、首都圏だと正社員として属していることも少ないと思います。というのは正社員として働くと責任が重かったり、雑務が多かったり、その割に安い給与の場合もあったりするからで、(働き方にもよりますが)予備校講師の場合、あえて正社員として働くメリットは少ないのでは?と思います。1つの予備校のことばかり勤めていると、講師or組織の学びや成長は多くはないので、他の予備校にあまりいない人が働いているところは注意だと私は思っています。

さらにいうと、学歴「だけ」が特徴なのは危険だと思います。予備校講師としては、なるべく学歴以外の面でも良さを出していけるかが勝負になってきます(自戒)。

※参考
大手予備校は講師陣は大変良いと私は思います(少なくとも私が駿台御茶ノ水に通っていた頃の多くの先生方や、他の授業を見聞きする限り他の代ゼミの先生方は良かったです)。システム面では成績の爆増のためには「基本的にはちゃんと自分で予習・復習・勉強する+必要に応じて質問しに行ける積極性をもつ」ことを前提としているため、大手予備校に行くならその覚悟を持って行くようにしましょう(是非代ゼミへ!)

地方の場合

良い講師は限られる(大抵は首都圏にいる)ので、「学歴(試験が得意)・実力(教えるのが得意)」が揃っているような講師がいたら、そのような塾・予備校に入ると良いのかなと思います。

「地方だと予備校ないから浪人したら首都圏に出る」というのはリスクも高いです。都会で勉強するというのもなかなか苦労するので、憧れを持って上京してもうまくいかない場合も多いです(これは完全に人に依ります)。

・私自身の経験としては、(高校時代は宇都宮から西日暮里に通っていましたが)浪人して都内に出て一人暮らしを始めました。慣れない生活で、高3時東大A判定からの不合格だったですが、予備校にいたときは調子が悪く、クラスが最上位ではなく低いクラスのままでした。絶望の起床も経験したので、うまく行ったことばかりではありませんでした。
・別の方の話ですが、東京に出て体調崩れがちでなかなか回復せず授業も満足に出席できず、地元の塾に戻ったそうです。
・パンフレットに載っているような寮はどこも家賃が高いので、結局遠くから通うというパターンもあります(私もお茶の水の校舎に通っていましたが、最初に住んでいたのは上野のほうで通勤電車を避けるため30分かけて歩いていました)。

学生講師について

コーチングには良いかもしれないが、ティーチングとしてはあまり望ましくないというのが私の考えです。学生は自分の経験に頼りすぎるところはあるからです。学生時代アルバイト講師を通じて「経験だけだとどうしようもない」と学びました。

検討事項3:テキスト・授業内容・サポート体制

オリジナルテキストがあるところの方が良い

授業内容が行き当たりばったりではなく、全体的な計画がしっかりとねられているからです。なお「そのオリジナルテキストをどれくらい使うか」は自由だと思います。自分で使う場合はまだやりやすいですが、他の先生が作ったテキストを無理してやる必要はないと思いますし、個々人によって状況も違うので計画の修正は適宜必要だからです。

個別授業塾の方が行き当たりばったりの授業になりやすい

昔個別指導塾の方針のもとでやったことがあるのが「問題集をやる→わからなかったところを次回授業で解説」の形式の授業でした。確かにわからないことだけやるので一見すると時間効率が良いように見えますが、応急処置をしているだけで系統的な理解が乏しいので合格点まで取りにくいです。本人の満足度としては高くても受かりにくいのかなと思います。

わからないときの質問対応ができるか

通常大手予備校の場合、授業の前後30分程度で質問対応ができます。これをどう考えるかは人によるかもしれません。授業がないときでも質問対応してほしいという場合、上記だと不満でしょう(特に講習期間は実際にその校舎にいる期間は偏るので質問できるまでだいぶ期間が空いてしまうことになります)。加えて、質問対応自体は講師としては無給(あるいはコマ給に含まれている)のため講師によってはぞんざいになるかもしれません(私が浪人時代に一度その経験がある程度で、実際にはほとんどの講師の方は優しく対応をしているように見えます)。
これへの対処法として「オンラインの質問サービス」「大学生アルバイトによる質問対応」があり、それらで満足できるかどうかも人に依るかなと思います。
理想を言うと、「ちゃんと質問対応の時間が設けられている」「講師の方が長く校舎に滞在している」と良く、医学部予備校ならそのようなサポート体制であるべきと感じます(なかにはLINEやComiruのようなアプリを通じて講師の方とやりとりできるところもあります)。

検討事項4:厳しい vs ゆるい

・厳しいところは合格実績は良いイメージです。でもドロップアウトしやすいし予後が心配です。また厳しいところだと働く側としてもパワハラも発生しがちで雰囲気が苦しくて良い気持ちで教えることができません。
・緩いとそれはそれで合格しにくい(医学部合格は簡単な世界ではないです)。医学部予備校として実績が10%未満だとどうだろうと感じます(低偏差値から合格するのが得意な予備校もあり、そういうところが低偏差値層を集めすぎると実績は少なくなってしまうと思います)。
・安直に「授業を切る」ことができるところも注意です。講師目線では、切るベき授業はあまりないです。
・結局、私は厳しさと緩さのバランスが大切だと思っています。


いいなと思ったら応援しよう!