【才能はみだしっ子サポーターズ ①】「ギフテッドの保護者が安心できる場所の提供をしたい」ギフテッド応援隊
書籍「才能はみだしっ子の育て方」では海外には様々な才能はみだしっ子=ギフテッドの子どもたちと保護者への支援機関があるとご紹介しました。
日本にも積極的にギフテッドの子どもたちを応援する団体があります。
今回は「ギフテッド応援隊」をご紹介します。
保護者同士のつながりから、啓発活動に至るまでの道のり
ギフテッド応援隊は2017年1月にギフテッドのお子さんを持つ保護者である冨吉恵子さんが代表となり発足しました。もともと冨吉さんは日本ギフティッド協会に所属をして、ギフテッドの子どもの子育てについて学び、ブログを書いてご自分の体験を発信していました。けれども、あまりにギフテッドの情報が日本では少なく、ギフテッドのお子さんを持つ保護者の方と相互に支えあうためには、コミュニティの形成が大切と考えられました。
そこで、まずは日本ギフティッド協会で知り合った保護者同士で繋がり、そこからネットワークを広げていきました。発足から現在に至るまでに北海道から沖縄まで全国約270名(2020年9月時点)の会員が参加される団体へと成長しています。
現在はメンバー限定でSNSを活用して日々の情報共有を行い、地域毎に勉強会やお茶会などを定期的に開催し、専門家のお話を聴くなど保護者のニーズに応えることが主な活動となっています。またギフテッドの子ども向けの遠足やイベントも開催しています。
さらに、海外の情報を翻訳して発信するといった啓発活動もされています。これは、ギフテッドの子どもたちは、「IQが高いズバ抜けて優秀な手の掛からない子どもたち」ではなく、「人一倍繊細な面を併せもつ子どもたち」であるということを、多くの方々に正しく知っていただきたいという思いと、その子どもたちの個性を大切にする教育が展開されることを願っての活動です。
「うちの子はギフテッド」ということを安心して言える場所に
ギフテッド応援隊が発足した当時、まだ「ギフテッド」という呼び名が日本では一般的ではなかったため、自然体でギフテッドという共通の言葉を使える場所を作りたかった、とおっしゃる冨吉さん。そして、ギフテッド応援隊はギフテッドの保護者同士が「安心して心を開いて話ができる場所としたい」とおっしゃっています。
新型コロナウイルス感染症による今の状況になる前は、主にリアルなイベントの開催を行っており、ギフテッドの子ども同士、保護者同士の交流も大切にされていました。開催される度に満席となっているということで、やはりギフテッドのお子さんをお持ちの保護者の方が、世の中にはたくさんいらっしゃるのだとあらためて感じました。
今後はオンラインのイベントを開催していくことで、日本各地や時には海外にお住まいの方とも繋がっていくようにとお考えです。
また、最新の話題では、ギフテッド応援隊の会員の中から有志を募り、8組の親子の体験談を集めた電子書籍「ギフテッド育児奮闘記」を2020年10月に出版されました。それぞれのお子さんの個性に合わせた学びの選択や、試行錯誤で個性を活かした子育てを模索されている様子など、ギフテッドの子どもと親のリアルな姿を知ることができます。
以下はギフテッド応援隊のホームページから抜粋させていただきましたメッセージです。
多くのことに気づく。探究心・好奇心が旺盛。数字や文字に強い興味を持つ。科学的・芸術的・言語的分野などに高い関心がある…
そんなユニークな能力を感じさせる子どもがいます。この生まれながらの能力を、ギフトだと考えます。
ギフトを持った子どもたちは一律の集団指導になじまないことも多く、学校教育からドロップアウトしてしまう例も珍しくありません。聡明な一面をもちながら、人一倍苦手なこともある、理解とフォローの必要な繊細な子どもたちなのです。
日本にはギフテッドという概念が根付いておらず、定義も確立していないため、型にはまらない彼らの成長を支えていくことは容易ではありません。
安心して過ごせる居場所、得意や好きなことに向き合える環境、チャレンジできる世界こそが彼らには必要です。
子どもたちが自分のギフトを大切に、希望を持って成長していける環境を作りたい。
そして、こうした子どもたちの存在を正しく知ってもらいたい―
「ギフテッド応援隊」 ホームページ
【インタビュー後記~酒井の思い~】
ギフテッド応援隊を取材して、私は世界各国のギフテッドチルドレンの支援団体の多くが保護者により立ち上げられていることと共通性を感じました。子育て中に親は自分の子どもにとって最適な学びは何なのか、どのような場を作ってあげれば良いのかと試行錯誤をするものです。ギフテッドの子どもの子育てはある意味とてもユニークです。自らの学びをギフテッドの子育てで悩んでいる保護者同士で共有して助け合うという発想はとても大切だと思いました。ひとり一人がゼロから情報を探さなくても事例があれば、その事例にぴったり合わなくてもご自分なりの子育てを考える上で参考になるのではと思います。
本の製作時に取材をしたニュージーランドのNew Zealand Association for Gifted Children (通称NZAGC)は、ギフテッド応援隊のように保護者が始めた子どもと保護者のための慈善団体でした。その後、ギフテッドの子どもたちの教育について学びたい教員が参加して、現在では保護者、子どもと教員の会として成長していました。現在の代表は保護者ではなく元教員の方です。教員の方が参加されることで、学校とどのように連携をすれば良いかをよく話し合われており、アドバイスもされています。例えば、どのようなアプローチの仕方がギフテッドについて知識のない先生にとって受け取りやすいか、といったことです。ギフテッド応援隊の皆さまも、公教育においてギフテッドの子どもへの理解が進んでほしいと願っていらっしゃいました。NZAGCのように、教員の方との交流もこれから機会が増えて行かれると良いのではと思いました。 (酒井由紀子)