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【才能はみだしっ子を育てる⑥】フラストレーションのたまらない学びを求めて出会った、オンラインのインターナショナルスクール

日本の学校制度では4月に小学校4年生になる、9歳の男の子のお母様、Cさんにお話を伺いました。息子さんは現在オンラインのイギリス系インターナショナルスクールに在籍しています。

「才能はみだしっ子の育て方」を読まれて才能はみだしっ子の特性が息子さんにとても当てはまっていること、またご自身とおじいさまにも同じような特性があるなと気づかれたというCさんです。

赤ちゃん時代から、電車が大好き

息子は生まれたときは体が小さかったのですが、よく泣き、よく笑い、よく飲む元気のよい赤ちゃんでした。乳児の頃は、「たかいたかい」をしたところからヒュー、ストンと抱きながら落とす無重力系の遊びが大好きでよく笑ってくれました。

息子は0歳の頃から、駅や電車にとても強い興味を持つようになりました。改札口や駅のそばを通ると声を出して喜んだり、電車の車両に向かって何かを言っていたりしました。生後2カ月の時に実家に新幹線で里帰りをしたことがあり、もしかしたらその時のことがきっかけになったのかもしれません。それからは 鉄オタ生活が始まりました。

幼児期はとにかく駅で電車を観ることが大好きで、大きな駅で新幹線を見続けて数時間などということもしょっちゅうでした。旅行で訪れた先でも鉄道関連の場所で時間を過ごすことが多くて、読みきかせや図書館で借りる本も電車の本が多かったです。


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6歳の頃、京都の鉄道博物館に行きました。
食い入るように展示を見て、夢中になってクイズをとき、
運転体験も嬉々としてやってました。
(トップ画像もそのときの写真)

当時は、電車を観ているときに「帰ろう」と言っても自分が納得しないと「帰らない」の一点張りでした。私自身が子どもの頃、絵を描いたり「化石があるかも」と石を割ったりしているときに誰かに途中で止められると、不完全燃焼な感覚で嫌だったことを思い出し、「やりたいことを邪魔されずに、納得いくまでやりきる幸せな感覚をたくさん味わって欲しい」と思い、基本的に息子が満足するまで付き合うようにしていました。私もそうすることがとても楽しくて幸せでした。

子育てするなかで、私にはいくつか心がけている事があります。息子には「自分で決める、考えること」を促すこと。可能な限り子どもが興味のある事には私も関心を持って一緒に楽しむこと。そして失敗から学ぶことがたくさんあるので、たとえ私が何か失敗をしても隠さずに彼に共有すること、などです。

幼稚園時代、どんどん広がっていく好奇心。

幼稚園に入った頃から、息子の興味は電車以外のことにも広がって行きました。科学、漢字、お城、お菓子作り、職業体験、重機械などに興味を持ち、博物館やミュージアムに行ったり、ロボットや科学実験に興味を持って教室に通ったりしました。「サバイバル」(朝日新聞出版)という科学学習系のマンガシリーズには特にはまりました。様々な学びから得た知識を私に話してくれて、私も話を聞くのが楽しみでした。

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6歳のころ
大好きな「サバイバル」を読書中

好奇心や探究心がとても深くなっていったので、幼稚園年長の時に「探究学舎」に入りましたが、ここでの学びがその後の息子を大きく支えてきてくれたと感じています。「元素」に興味をもち、どっぷりはまって全ての元素記号を覚えてしまったり、経済金融では株やビジネスにはまったり、偉人についても詳しくなったりと、探究学舎では継続して 様々な分野について学ぶ楽しさを味わっているようです。

自分の好きな事に没頭する性格で、ダンゴムシが好きになると一人で、ずーっとダンゴムシを集め続けたりしていました。1カ月間幼稚園から毎日30個くらいのダンゴムシを持って帰宅したこともあります。

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探究学舎に通い始めてから
元素図鑑を読みふけるように


お友達との関係

その一方で、お友達と遊ぶことも大好きで、滑り台、すなば遊び、鬼ごっこや一緒に続き物の絵を描いたりするなどしてみんなと楽しく遊んでいました。公園などで初対面の子と会ってもすぐ仲良くなりました。知らない子とも仲良く遊ぶのに、不思議と名前を覚えてこなくて「なんていう名前のお友達?」と聞くと「しらなーい」と答えることが多かったです(笑)。

マイペースで時々人と行動を合わせないところもありましたが、対人関係での悩みはほとんどありませんでした。人の気持ちのわかるとても優しい子で、私が少し悲しいことがあって泣いていたときには、頭をなでて慰めてくれたこともありました。

「探究学舎」で深まる学び

小学校入学前後にはさらに興味の対象が広がり、「探究学舎」で引き続き学びを深めていきました。物理でアインシュタイン、音楽でバッハやバッフェルベル、幾何学でフィボナッチ数列や黄金律などにはまり分野を超えてたくさんのことを学んでいきました。

「探究学舎」では私も一緒になって没頭してしまうことが多くて、レッスンが終わってからも建物内に残り、書庫で二人して本を読み続けることもありました。夕食の時間になってしまうまでいたこともありましたが、そういう時は夫に早めに連絡をしておいて、仕事帰りの夫と待ち合わせをして夕食を楽しく食べて帰宅するなど工夫をしていました(笑)。

9歳の今は、コンピュータプログラミングにはまっています。小学校2年生の冬に初めてパソコンを触り、そこからあっと言う間にパワーポイントで資料を作れるほどパソコンを操れるようになりました。ブラインドタッチでタイピングができるようになったと思ったら、Scratchを覚え、知らない間に株式取引ゲーム、シューティングゲームを制作し、今は独学でHTML、CSS、JavaScript、Unity等にも挑戦しているようです。

公立小学校では満たされなかった、学びへの意欲

通学していた公立小学校では、学校の授業が簡単すぎると感じていました。保護者の間でもそのような意見はよく聞かれていたのですが、「先生はたくさんの子どもたちの相手をしていて大変なのだから、子どもが文句を言わないよう躾けて、先生や理解が進んでいない子の邪魔をしないようにしよう 」という空気が流れていました。

学年があがってくると、手を挙げてもなかなか当ててもらえなくなってきました。おそらく普段手を挙げない子にもっと発言して欲しいという願いがあってか、普段から頻繁に手を挙げているとだんだん指名されなくなっていく様子がありました。 早めに課題をやり終えた子が別途用意されたプリントに取り組めるような工夫は学校側でしていただいていましたが、特にレベルアップした問題ではなかったため、退屈している感じもありました。 学校の勉強が退屈な分 、家で好きな事を 学ぶようにして、学びへの意欲を満たすようにしていました。

こうして学校での息子の様子を垣間見ていると、公立小学校の学びの中では、いくつかフラストレーションを抱えてしまうのだということに気がつきました。 それは、大きく3つありました。

1. 授業でもっとたくさん発言したい

2.5科目(国語・算数・理科・社会・英語)を自分の習熟度に合わせて学びたい

3.休み時間は自由に使いたい

休み時間については、昼休みなどの長い休み時間には、外で遊ばなくてはいけないというルールがあるけれど、本当は本を読みたいということでした。

オンライン・インターナショナルスクールNisaiと出会う

新型コロナ感染拡大で学校が休校になって家で過ごすようになり、家では比較的時間を好きに使えることなどに気づきました。 2020年夏に、「もっと自由に息子にあった学びを追求する時間を持っても良いのではないか」と家族で話し合い、 9月から イギリスのオンライン・インターナショナルスクール(Nisai British Online International School、以下Nisaiと表記)に転校しました 。公立小学校には在籍する形をとっています 。

通っていた小学校にはお友達もたくさんいますし、先生のことも大好きで、 図画工作、体育、音楽の授業はとっても 好きでした。でも、やはり学びのフラストレーション を解消してあげたいと思ったのです。ちょうどステイホームが終わったくらいの時期にクラスメートが国内のインターナショナルスクールに転校すると知ったのをきっかけに 、いろいろと調べた結果、Nisaiにたどり着きました。現在、公立の小学校では出席扱いになってはいませんが、Nisaiがお休みの時などはいつでも学校に来てねと声をかけていただきました。

息子は幼稚園入園前後から英語のDVDを見たり、英語の預かり保育に通ったりしていました。年中の時には、沖縄で1ヶ月インターのサマースクールに通ってみたこともあります。日本語優位ではありますが、英語が追いついていくような形で英語を習得していました。小2の時に英検2級に受かっていたのと、PCを使った授業は「探究学舎」で経験していて操作に慣れていたことなどから、息子はNisaiの学びに抵抗なく適応していきました。

Nisaiでの学びで、フラストレーションが解消

Nisaiではまず、レベルチェックテストを受けました。選んだクラスはICT、English、ScienceとMathsの4科目でした。各科目それぞれ、週に4回授業があります。授業は1回30分、宿題は週に数回出ます。クラスの人数は最大で12人程度で、4人のみというクラスもあります。

イギリス時間で授業を受けるためには、時差に対応をしなくてはなりません。授業の終了時刻が遅い時間にならないかということが懸念事項でしたが 、日本からの参加を考えているとイギリス本校 に伝えると、ブルネイの姉妹校の先生が授業をしてくださることになりました。現在は午後3時からICT 、4時20分からScience、5時からEnglish、7時からMathsの授業を取っています。 (Mathsだけはイギリス本校の授業を受けています。)

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授業を受けている様子

Nisaiの授業では、先生とクラスメートの顔が一切見えません。音声とテキストチャットで会話します。自分と先生・生徒間のコミュニケーションは全員で共有できるホワイトボードを使い、さらにプライベートチャット(自分と先生だけが共有する文字チャット)、パブリックチャット(自分、クラスメート、先生全員が共有する文字チャット)、マイクロフォン(挙手制で、口頭で発言ができるマイク)を使い分けて発言します。チャットは常時使用可能です。このシステム のおかげで、息子は授業中にいつでも発言をすることが可能となりました。公立の学校での学びのフラストレーションの1.授業でもっとたくさん発言したいが解消されていきました 。

2.5科目を自分の習熟度で学びたいという点に関しては、飛び級制度が解決策となりました。 年齢相応ではYear5 のところ、レベルチェックテストでYear9 でも大丈夫との判定でした。現在は少し様子をみて、ICT、English、ScienceはYear7 、MathsのみYear8 で受講していますが、先日EnglishとICTの先生から「Year8に上げてもOKですよ」 と提案していただきました。息子は、今の授業で扱っている 題材が面白いし、先生もとても良い方だからしばらくそのままにしようかと考えているようで、自分の習熟度に合った内容の授業を、自らの意思で選び学ぶ事ができています。また、先生が細やかに息子の学びの進度を見てくださり、さらに先に進めるという提案もいただいたりして、とても充実した学びの時間を持てているようです。

3.休み時間は自分の自由に使いたいという点に関しては、毎日の時間をブロック分けして管理しています。朝は7時に起床、午前中は日本の学習内容をマイペースで進め、午後はNisaiの授業が始まるまで好きなことをする時間としています。プログラミング、読書、トランポリンをしながらテレビを見たり、公園で遊んだり、LEGOで創作したりしています。Nisaiの授業が午後3時から始まり、途中夕食をとり、 午後7時30分に授業が終わったあとは、寝支度をして9時から10時の間には就寝するようにしています。忙しい毎日ですが、息子は勉強と合間の時間をとても充実して過ごしているようです。

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オンラインスクールに通いながら、在籍小学校でも活動したい

Nisaiに入ってからの息子の大きな変化として、自己肯定感が上がったように親としては感じています。授業中にいつでも何度でも発言ができて、しかも先生に認めてもらえるという環境にいて「今の自分をしっかりと受け止めてもらえている安心感」のような雰囲気を彼から感じます。

さらに「自分はどんな人間なのか」という点も理解してきたようで、以前は「僕はどんな性格なのか、わからない」と答えることが多かったのに、最近は「僕ってほんと歌が得意でおっちょこちょいで、お笑い好きだなぁ」と言ったりするようになりました。現在はいろいろなことに集中できる時間が増えて、満足感や達成感が高まり、自分を肯定的に認めることができ始めているのだと思います。

今後は、息子が委員会活動やクラブ活動を地元の友達と一緒にやりたいと言っているので、タイミングを見て公立小学校とNisaiに両方同時に通うことになるかもしれません。 その時は、Nisaiに通ったことで違う視点を持つことができているので、以前小学校で感じていたフラストレーションの解決方法も思いつくかもしれません。本人なりにどのような選択をするのか、相談した上で任せようと思っています。

日本の教育について思うこと

Nisaiに通い始めて日本の教育についてもいろいろと考えるのですが、一条校以外のオルタナティブスクール(ホームスクール、インターナショナルスクール、フリースクールなど)の学習活動も正式な教育であることを認めて欲しいと強く感じます 。教育にも、職業や居住地などと同様に選択の自由がもっとあっても良いのではないかと思うのです 。海外では小学校卒業検定のような仕組みがある国もあるそうです。日本にもそのような制度があれば、吹きこぼれの子どもたちがより有意義な時間を過ごせるのではないでしょうか。

また、現状のクラスに 「学び合い」 の仕組みがあれば良いのではないかと思います。私の理解している 「学び合い」 とは、先に問題を解いた子 が、問題と格闘している子に 知恵を絞って解説するという仕組みです。人に教えるという行為は、学ぶよりも深い思考が必要だと 言われます。ひとりの先生が大多数の子どもを教えるという形から、子ども同士が学び合うようにして行くことにも 意義があるのではないかと思います。

最後に「子どもにどんな人生を生きてほしいか」ということについてですが、「息子には、自分が楽しいと思える人生を慈しみながら歩んで欲しい」、ただそれだけが私の願いです。 この世に生まれてきたのは、本当に天文学的な確率で幸運だったからだと思いますし、 自分である瞬間はこの人生しかないのだから、誰が何と言おうと、自分が納得できる生き方で人生を楽しみ、生の一瞬一瞬を大切に感じながら歩んでいってほしいと願っています。 つまらない時があったとしても、心持ち次第で「楽しい」に変えることだってできます。生きていればいろいろなことがあると思いますが、生きることを慈しむ気持ちをいつまでも忘れないでいて欲しいと思っています。

【インタビュー後記 ~酒井の思い~】

Cさんの取材の間、近くに息子さんがいらしたのですが、とても明るい笑顔で時々画面に入ってきてくれました。毎日楽しく充実して過ごしているんだなぁと感じられて、とても嬉しく思いました。

学校のお友達や先生とは仲良く過ごせていたけれども、「学び」を進めることができなかった公立小学校でのフラストレーションは、好奇心や探究心が旺盛なCさんの息子さんにはとても大きなものだったのではないかと想像します。

子どもの頃の時間はゆっくり流れています。様々なことを知ったり、気づいたり、吸収したりして成長するために、じっくりと時間を掛けることができるようになっているのではないかと思います。学校に通っている時間は子どもにはとても長い時間。その時間が退屈で、周りに合わせて行動しなくてはいけないルールばかりだったら、つまらないことでしょう。

Cさんがご家族でされた決断はとても大きなもので、心配や不安もあったことだろうと思いますが「子どもにとって一番大切なことはなんだろうか」という視点を貫き通されたことで、息子さんには充実した毎日が与えられているように感じました。

公立校の良さも認めながら、その時々で息子さんに必要な学びを選択するCさんご家族。学びの選択肢は一つではないということをCさんご家族は示してくださっていると思います。









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