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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#74

佐佐木 政治

おゝ 燠火おきびの袋よ 人間の形となって燃えている宇宙 秩序が眠る草原
眼と眼が合い、唇と唇が合い、静かに流れ下る感情の瀑布
己の火は意識せずとも われわれはたえず火を持ち歩く
原初の核融合の夢を静かにみなぎらせて

なんという不思議な秩序 だれもみとらない不思議な静寂
己自身でないものが奏でる音楽 しゅうなる静寂の包囲
それにも増して 他者であることの栄誉よ

火は火に近づく 火袋が火袋を恋う 
触れ合う度の見えないスパーク
二人は互いに己を抱きしめて 
どこの馬の骨ともわからぬ者同士が一点を見つめる
閃光が身を焼く


父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。


>>>>>>>>>いつもフォトギャラリーから素敵な写真を使用させていただいています。感謝してます。ありがとうございます。<<<<<<<<


 


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彩美 saimi
亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。