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ミュトスの雨<神へ捧げるソネット>#96

佐佐木 政治

おゝ 何という誉与が 
ぼくらの歩調をゆさぶることか

あなたの言葉が虚しければ虚しいだけ
辺境の空は輝きを増す
あなたの言葉が 不在の重みを増せば増すだけ
ぼくらの言葉は 天秤の片方にかけのぼる
言葉が花咲くようにと ぼくらのテアートルは絶えずめまぐるしい

他の天体で あなたは言葉の花畑をしつらえようとしない
永遠の休憩がしじまとなって 言葉はすべて封じられている
あなたが何かの代償と引きかえに死をあづけたままだ
言葉が炎だけの まだあれくるう世界のために

あゝ 雨や霧や雪が 時間の支柱をぬらすさわやかさ
風のふところに わが身の熱をひろげて
飛び交う小鳥たちの誉与



父・佐佐木政治
昭和6年長野県飯田市に生まれる。飯田高松高校卒業後、大学で仏文学を学ぶことを断念、木曽にて印刷業を営む。生涯、詩を詠み、本を作る。亡くなる二年前に脳梗塞で麻痺や認識障害を患うものの、動かない手を駆使して最後の詩集「神へ捧げるソネット」を手作りした。


>>>>>>>いつもフォトギャラリーから素敵な写真を使用させていただいています。感謝してます。ありがとうございます。<<<<<<  

 

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彩美 saimi
亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。