神へ捧げるソネット #71
佐佐木 政治
森の頂きに輝くひとつ星から こよいはしきりと言葉が届く
こんな辺境の谷間の枝枝をかきわけて 無縁をかこつわたしの小さな窓辺にさえも
どんなにはるかな距離が その奥に痺れてあるというのだろう
ほとんど虚構としか思えない幻の 夜毎の言葉をたずさえて
言葉は星の実体を残してたえず出発するが たとえその星が消滅したとしても何の責任をも転化されることはない
むしろ神よ あなたの壮大な沈黙がおびきよせるヴェクトルの道筋に導かれるばかりだ
ぼくらがまだ影や形どころか その存在すら 論理の埒外に放り出されていた頃 言葉はすでに永い旅のさなかであった
そして 小宵はからずも言葉は可憐なサインとなって わたしの意識の壁を突きぬけたのだ
おゝ ずっと遠いむかしこの世を去った幼い妹が いま確かな言葉を持ち
寝静まった夜空の辻に 一途な眸をかかげるように
死者のみが持つ真向正面の神話として ひとつの言葉が輝くように
あゝ小宵もまた窓辺に凭れて だれにも明かさない秘密の扉がひらく
永遠が衣を着せて偶然の輝きにはじけわたる 夜空の花畑から
さ迷いくるひとすじの星の言葉を こよなくひそやかな薫りのなかで受けとめるのだ
>>>>>>>>>いつもフォトギャラリーから素敵な写真を使用させていただいています。感謝してます。ありがとうございます。<<<<<<<<
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亡父の詩集を改めて本にしてあげたいと思って色々やっています。楽しみながら、でも、私の活動が誰かの役に立つものでありたいと願って日々、奮闘しています。