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ティム・バートン版と違う?『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』に違和感を持ったあなたへ
先日、ようやく1971年公開『夢のチョコレート工場』を鑑賞しました。そこで思ったことをひとつ。
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』を見る前に、見ておけば良かった!!!!!
昨年公開した、最新作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のレビューには、「前作とは違う」という意見が多数見受けられました。
違うんです、違くて当たり前なんです。
『チャーリーとチョコレート工場』と『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は別物なので、違うことは必然であって当然なのです。
まず、ウォンカの物語がどこから始まったのかを整理してみます。
最新作や前2作を見て、「ん?」と思った方、一旦落ち着いて、一緒に理解しませんか?
※当記事は、『夢のチョコレート工場』『チャーリーとチョコレート工場』『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のネタバレを含みます。
まず、本作の原作が小説であることをご存知ですか?
皆が夢見るチョコレート工場の物語が始まったのは、1964年。ロアルド・ダールによって児童向け小説として発表されました。
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原題は“Charlie and the Chocolate Factory”、日本版では「チョコレート工場の秘密」です。
本作を著したロアルド・ダールは、他にも多数の超有名作品を生み出し、後に多くのファンタジー映画となっています。
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ロアルド・ダール作品で映画化されたもの
・『魔女がいっぱい』2020年
・『BFG ビック・フレンドリー・ジャイアント』2016年
・『マチルダ・ザ・ミュージカル』2022年
・『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』2023年
など
これが後に、『夢のチョコレート工場』として1971年に映画化されました。
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公開当初はそれほどヒットはしなかったようですが、後にじわじわと人気を伸ばしました。
正直、1971年にこんな映像が撮れたのか、と驚かざるを得ません。
ミュージカルとしての完成度も高く、もっと人気が出るべき作品だと思います。
チョコレート工場の世界観、ビジュアル面はもちろん、特にあのラストシーンの映像には感動しました。
60年代の作品が大好きな変人大学生としては、同年代の邦画と比べて、クオリティ面に差がありすぎると感じました。
70年代にあれほどの合成技術や豪華なセット、CGを使用できたのか。いや、うん、本当に尊敬しかありません。
また、当時の社会に対するアンチテーゼが散りばめられていて、ただの単純なファンタジー映画ではないところが魅力的でした。
ところで、なぜ本作が最新作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の正統な「前作」と言えるのか?
見て頂ければ、1発で納得していただけると思います。まじで、とにかく、1回見て欲しい。
しかし、中々見る気にならない方も居るでしょう。手段がないという方もいるかと思いますので、その根拠を説明致します。
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』が『夢のチョコレート工場』の正統な続編である根拠4選!
1、テーマ曲
私は『夢のチョコレート工場』を見る前に、最新作を見てしまったのですが、この2作には同じテーマ曲が使われています。
『夢のチョコレート工場』が始まってすぐに、「ああ、この曲はここから来ていたのか」と納得しました。
ちなみにこの曲の名前は“pure imagination”です。
耳に残るキャッチーなメロディーが、穏やかで幻想的なチョコレート工場を演出しています。
以下は、1971年版『夢のチョコレート工場』、最新作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の比較になります。
1971年版を見たあとにこちらの下の映像を見ると、「ああ!」と納得して頂けるはずです。
2、ウンパルンパ
「チョコレート工場」で働く小さい人々、ウンパルンパ。
彼らのビジュアルが作品によって全く異なることをご存知ですか?
まず、『夢のチョコレート工場』でのウンパルンパがこちら。
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『夢のチョコレート』版ウンパルンパ
U-NEXTの『夢のチョコレート工場』のカバー写真がかなり好きだったので載せておきます。
中央にいるジーン・ワイルダー扮するウォンカ、若干ムロツヨシ感があるな…と思っています。
共感してくれる方求めてます、上の写真めっちゃ似てると思う。うん。
これじゃチョコレート工場ってよりかは、ルンパ王国じゃん?って感じでとても良いですね。
こちらのウンパルンパは、最新作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』でも登場します。
もちろんお馴染みのあの歌も、両作で使われています。
1971年版は途中からMVか?となる編集が入っていますが、実際に作中でもあの映像が流れます。
私は初めて見た際、斬新すぎて驚きました。
最新作でのウォンカは、まだウンパルンパを理解しきれていないため、困惑しているのが面白いです。
初めはやっぱり皆こういう反応するよね、思いました。ウォンカも一応普通の人なんです。
次に『チャーリーとチョコレート工場』のウンパルンパがこちら。
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ウンパルンパ
少し近未来的なビジュアルになったように感じられますね。
ヘッドホン?はマイク部分がスプーンなんだな。
いつでも味見できるようになってるのかもしれないですね🥄
私、個人的にティム・バートンは大好きなので、こちらのウンパルンパももちろん好きです。
ビジュアルの奇抜さや独特さ?スタイリッシュな感じは、やはりティム・バートン版の方が磨きがかかっていますよね。
こちらのウンパルンパの歌は、一時期tiktokで流行っていたので、映画を見たことがなくても知っている方がいるかもしれません。
中々にシュールで、少し恐怖すら感じます。
こちらのウンパルンパは、1人の役者が全員分の撮影をしたことで有名で、役者160回?ほど同じ撮影を繰り返して作られているそうです。
異常ですよね、ちょっと心配になります。
そして、最新作でのウンパルンパがこちら。
先程、歌の方で比較したので、お分かり頂けているかと思います。
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最新作のウンパルンパは、やはり『夢のチョコレート工場』版ウンパルンパとほぼ同じスタイルをしています。
ちなみに、最新作のウンパルンパを演じたヒュー・グラントは、1度は見たことのあるイケおじ俳優です。
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ヒュー・グラントは、『ノッティングヒルの恋人』1990年や「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズ、『ラブ・アクチュアリー』2003年などで活躍しているので、是非見てみてください。
3、チョコレート工場の内装
『チャーリーとチョコレート工場』に登場するチョコレート工場に比べて、『夢のチョコレート工場』『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』に登場するチョコレート工場は、より現実感があります。
チョコレート工場って言い過ぎて分かりずらいですね。
簡単に言えば、『夢の…』と『ウォンカと…』の2作に登場する工場には、窓があるんです。
それがこちら。
少々分かりずらいのですが、後方に窓、というかガラス張り?になっていて、陽の光が入っているのが確認できます。
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『チャーリーとチョコレート工場』にはこのような窓(?)は見受けられませんでしたよね。
全面が芝生などで覆われていて、こちらの方が「夢」っぽさはあります。
現実味がなくて、ファンタジー要素が多いです。
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どちらのチョコレート工場が好きかは、好みによりますが、最新作では、前作の工場が作られる過程がラストシーンで描かれました。
『夢の…』を見た事がある方は、最新作のラストシーン、グッときたのでは?
4、ウォンカの過去
レビューの中で、『チャーリーとチョコレート工場』で描かれた歯科医の父を持つウォンカの話と全く違って、意味が分からなかった、といった趣旨のものを見ました。
意外と知られていないのですが、ウォンカの両親は厳格で、歯医者の父に虫歯になるからとチョコレートを禁止されていたため、ウォンカはその反動でチョコレートが大好きになった、という設定は、ティム・バートンのオリジナルです。
原作には存在しません。
また、『夢のチョコレート工場』では、ちょくちょくスラグワースの影が登場しますね。
ウォンカがライバル社であるスラグワースらと争っていた、という設定は『夢のチョコレート工場』にて登場します。
この話は最新作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』で中心になってくるので、最新作を見た方はスラグワースを覚えてしまうはずです。
また、ウォンカの幼少期に、母がチョコを手作りしてくれて…といったストーリーは、ティム・バートン版とは全く異なるため、ここに違和感を覚えた人が多かった様です。
ここの差によって、ウォンカのイメージが真逆になってしまうので、最新作を見る際は要注意です。
ちなみに、これは噂ですが、原作者ロアルド・ダールは、『夢のチョコレート工場』にてウォンカが良い人になってしまうラストシーンに納得がいかなかったそうです。
そのため、再映画化で本作を愛するティム・バートンがダークなウィリー・ウォンカを作り出したと言われています。
しかし、ティム・バートン版へのロアルド・ダールの評価は明かされていませんし、最新作のウォンカは「良い人」です。
1990年に亡くなってしまったロアルド・ダールの中にいた「ウィリー・ウォンカ」はどんな人物だったのかが気になりますね。
いかがでしょうか。
とにかく、最新作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』を見る方、見た方には、『夢のチョコレート工場』を合わせて見ることを心からオススメします。
最新作と『チャーリーとチョコレート工場』は、はっきり言って別物です。
ティム・バートン版『チャーリーとチョコレート工場』は、独立した1つの作品として捉えることを勧めます。
正直、今回あのような勘違いが起きた原因は日本の映画広告にあると思います。
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大々的に『チャーリーとチョコレート工場』の続編と書くのは如何なものか、と思います。
まあ、残念ながら、これほどまでに誇大広告をしないと興行収入を上げられないからなのですが…。
50年経っても愛される名作「チョコレート工場の秘密」。
いつか、ティム・バートン版ウィリー・ウォンカの前日譚を見られる日が来たらいいな、と思いますね。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
〈作品リスト〉
・『チョコレート工場の秘密』1964年アメリカ/ロアルド・ダール
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・『夢のチョコレート工場』1971年アメリカ/メル・スチュアート
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・『チャーリーとチョコレート工場』2005年アメリカ/ティム・バートン
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・『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』2023年アメリカ/ポール・キング
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