夏休み親子ボードゲームジャム2021in福岡(2日目)を実施しました!(2)
このnoteは、夏休み親子ボードゲームジャムin福岡の様子を報告したnoteの3つ目の記事です。よければ、1日目の様子及び2日目の様子を報告したnoteからご覧ください。
1つ前のnoteでは、ボードゲームジャムの2日目、ゲーム制作の様子を報告しました。連続投稿の最後となる今回のnoteでは、今回のボードゲームジャムにおいて、子どもたちのグループが制作したボードゲームを僕が把握している範囲でご紹介していきたいと思います。
ほとんどのゲームが100円均一で手に入る材料をもとに制作されましたので、特別な用具なく、ルールを把握しさえすれば、ご家庭で同じように制作して遊ぶことができるかと思います。
よければこのnoteをご覧になってくださったあかつきには、ぜひ制作して遊んでみられてください。そして、感想をください。子どもたちへフィードバックしたいと思います。
ボードゲームジャムにおける前提条件
初めに、子どもたちのグループが制作したゲームを紹介していく前に、ボードゲーム制作における前提条件として、どんな制約が課された中で制作していったボードゲームなのかを説明しておこうと思います。
1つ目は、「新しい家事」をテーマに作ったものであるということです。
2つ目は、「チャレンジ課題」が設定されているということです。
これらの条件や制約がどういう考えに基づいているかについては、ぜひこれ以前のnoteをご覧ください。
ともかく、ゲームジャムの中では具体的な条件として上記のものがあり、さらに短時間(約6時間)、グループでという条件の中で制作されたものであることをご理解ください。
【1】ありんこパニック
いきなり、人間ではなく「アリ」の家事をテーマにしたゲームです。アリの巣において繰り広げられる、女王アリを中心としたアリの家事をゲームの中に表現したものです。
上はボードの全景を写した写真です。このボードが凝っていて、なんだかワクワクしてきますね。
アリんこパニックは、それぞれのプレイヤーが自分の順番になったら、それぞれが持っているアクションポイントを消費していくゲームです。
ゲームの目的は、山札カードがなくなるまでに女王アリを守り切ることです。守り切ったときにどれだけ点数を稼げていたかという達成度のようなものも設定されています。ちなみに女王アリはボード中央にいるという設定です。プレイヤー間で協力しあうタワーディフェンス系のゲームです。(今回制作されたゲームで唯一の協力ゲーム!)
自分の順番になったら、まずは山札からカードを1枚引きます。カードには、ボード上の特定の場所に敵対している巣のアリが出現したり、それらのアリが女王アリに向かって前進してきたり、続けて行うアクションが1回休みになったりといったことが書かれています。
その後、全5ポイント持っているアクションポイントを写真のようなアクションに割り振ります。面白いのは、「死体処理」というアクションが入っていることです。
これは、実際にありたちの生態を子どもが調べてきて、アリの「家事」として実在するものをゲームに実装したものです。自分たちが戦って倒したアリをそのままにしておくと、巣の通路が塞がってしまいます。そこで、死体処理というアクションをして、「お墓」に連れていくことが必要になるというわけです。
また、アクションの中に「せんとう」というのがあると思うのですが、この部分にもおもしろポイントが実装されています。
プレイヤーたちのアリコマが、敵対するアリと同じマスに入ると「せんとう」のアクションをすることができます。敵のアリのコマの裏には「3・5・7」のいずれかの数字が書かれていて、この数字が「せんとう」に使用するカードの枚数と倒したときに得られる点数を表しています。写真は「5」の敵対アリと戦う時のカードです。写真左側に見えるものはなんだと思いますか?実はこれ、「激辛明太子」です!このゲームでは、激辛明太子で相手を倒すのです。おもしろ!実際にすることとしては、5枚のカードを裏向きにしてその中から1枚を選び、それが激辛明太子のカードだったら見事せんとうに勝利する、というものです。
せんとうのアイデアについては、少しだけ子どもに助言をしたのですが、そこに激辛明太子(⑥福岡のものを入れる!)という要素を入れてきたところ、さすが博多っ子という感じです。
テストプレイでは、敵対アリの種類の少なさなどを指摘されていましたが、何よりテーマの選び方が素晴らしく、このままブラッシュアップしていくことで独自性を持った良いゲームになるだろうなと感じます。
【2】せんたくパニック
2つ目に紹介するゲームは、「洗濯」をテーマにしたゲームです。意図したかしていないかは分かりませんが、ゲーム内でのプレイヤーの行動の「選択」と掛かっていて、ネーミングのセンスが光っているなと思います。
このゲームは、「ハゲタカのえじき」のバッティング(カード裏向き一斉公開による競り)要素と「キングドミノ」のパズル要素を合わせたコンセプトのゲームです。
ゲームの準備として、ゲームに参加する全プレイヤーが「1」から「20」までの数字が書かれた同じカードセットを受け取ります。また、物干し竿が描かれた個人ボードを受け取ります。
その後、中央に今回の洗濯物タイルが絵が描かれた方を上にして提示されます。洗濯物タイルには赤か青のシールが貼ってあり、それぞれプラス点かマイナス点かを表しています。各プレイヤーは自分の持っているカードセットから1枚を選び、裏向きに伏せ一斉に公開します。
一番高い数字を出していた人がその洗濯物タイルを獲得することができ、自分の個人ボードに配置していきます(ハゲタカのえじきと同じように、マイナス点のものは1番低い数を出した人が獲得する)。個人ボードは上部と下部が分けられていて、基本的には上部から順番に獲得した洗濯物タイルを配置していきます。
上部の空きスペースがなくなると下部に洗濯物を配置せざるを得なくなるのですが、なんとそこに干すことになってしまった場合、マイナス点になってしまうのです。
洗濯物タイルは裏面に点数が書かれていて、その大きさや種類によって点数が異なっています。どの洗濯物を取りに行くのか、また、どのタイミングまで取りに行って良いのか、そんなことを考えることが必要なゲームになっています。ときには取りたくない洗濯物を取らされてしまうことも・・・
このゲームで注目したいのは、なんといっても細かく作られたコンポーネントの数々です。ゲーム内容が面白いのはもちろんのこと、洗濯機を模した円筒状のコンポーネントが目を引きます(競りの対象となる洗濯物タイルはここに全て入れて、ここから取り出します)。「⑥福岡のものを入れる!」というチャレンジ課題には、獲得する洗濯物の中に地元softbankホークスのユニフォームや山笠の際に着る(?)ふんどし(ちなみにマイナス点)などがあり、非常にユニークに仕上がっています。
元々「バッティング」というゲームの要素は、その結果によってプレイヤーを一喜一憂させる力があるのですが、そこに加えてクスリと笑えるような競りの対象があって、テストプレイもとても好評でした。
個人的には、洗濯物の種類をうんと増やしてもらって、何度遊んでも得点が記憶できないくらいのバリエーションができたら良いのでないかと思います。
【3】ゴミマスター
3つ目に紹介するゲームは、「掃除」をテーマにしたゲームです。すごろくのようなボード上をクルクルと周回しながらゴミを集めていき、たくさんゴミを集めた人が勝利というゲームです。
ゲームの準備として、各プレイヤーに初期装備として掃除機カードが配られます。そして、ボード上の各マスに写真のようにゴミカードやイベントカードがシャッフルされた上で配置されます。適当なところに、自分のプレイヤーコマを置いたらゲームスタートです。
プレイヤーは自分の番が来たら、サイコロを振ります。サイコロの出目の分だけ時計回りに自分のプレイヤーコマを動かします。止まったマスに置いてあるカードを獲得します。
基本的には、これを繰り返していき最後のカードがなくなるとゲーム終了、その時点で持っているゴミカードの得点の合計が一番大きかった人が勝利となります。
ここまでだと、なんとなくひねりが無いような単調なゲームに聞こえてしまいますが、このゲームの本質はここからです。写真をご覧いただくとわかるのですが、実は初期に各プレイヤーに配られる掃除機には「上限」が存在しています。なんの上限か?それは、ゴミの積載量の多さ=このゲームにおける得点カードを貯めておける許容量です。
ゲーム中、上限を超えてしまってゴミカードを集めてしまうと、バースト、つまりそれまで集めていたゴミカードを全て破棄してしまうことになってしまいます。そうならないうちに、自分の掃除機カードをグレードアップする必要があるのです。グレードアップに必要なのはこれまた得点にもなる、ゴミカードです。自分の順番そのものが貴重なので、できれば一気に掃除機をLv1からLv3までアップさせたい、けれどゴミを溜めすぎしまっては、バーストしてしまうかもしれない。そんなせめぎ合いを頭の中でシミュレートしながらやっていくのが実に楽しいですね。
ちなみに、得点になるゴミカードもとても内容が凝っていて、子どもたちはゲラゲラと笑いながらカードを作成していました。
ここでは紹介できていませんが、イベントカードにも面白いもの(爆弾で他の人も道連れにしてゴミがバーストする、など)が多くあったり、自分の番にサイコロを振る代わりに、1回だけ「サボる」という行動が取れたり、自分たちでのテストプレイも、グループ間の相互でのテストプレイでも大盛り上がりでした。
このグループのファシリテーターが言っていたことですが、ゲームの終了時に部屋(舞台となっているボード)全体が綺麗になって終わる、というのもテーマに合っていて素晴らしいですね。もちろん、いくつかのイベントカードに調整が必要なものもあるのですが、とても完成度が高いゲームだなと思います。
【4】子どものオークション
最後に紹介するゲームは、子どもにとっての「家事」=お手伝いをテーマにしたオークションのゲームです。ゲームは、お手伝いをしてお小遣いを集める前半部分と、集めたお小遣いを使ってオークションに参加し、得点を得ていく後半部分に分かれています。
前半部分のお手伝いカードは、最初だけじゃんけんで順番を決めて、選んでいきますが、もらえるお小遣いが大きいほど、次にお手伝いカードを選ぶ順番が遅くなります。これを全部で5回繰り返して、それぞれのお小遣いの合計学が決まります。
そうして集めたお小遣いを元手にして、今度はお買い物をする部分です。お買い物も全部で5回行いますが、毎回出てきた商品に対して、非公開で支払うお金を決めます。一斉に公開した後、一番高い値段を出していた人が商品を獲得します。
面白いのは、前半部分でカードを集めるときに、ボーナスカードを引くことができて、それによって、後半部分に入る前の合計を増やすことができるところです(マイナスもあります・・・)。
子どもたちの身近な事象がゲームの中でよく表現できているなと感心しました。楽しいお買い物のために、お手伝いをする、というのがいかにも子どもらしくっていい発想だなと思いますし、子どもそれぞれが想定していた家事=お手伝いよりももっともっと色々な家事について知れたのではないでしょうか。
それぞれのカードのパラメータを決める場面では、親子で議論しあって、「いや、お風呂掃除は○○円だね」など積極的な会話がなされていたように思います。
ゲームの一連の流れがわかりやすく、1回のプレイ時間が読みやすいこともあり、何度もテストプレイが行われていました。前半部分のお小遣いの総量が、後半部分に響いてくるゲームデザインなので、前半に凹んでしまったプレイヤーに対して何らかの救済策があると良いのではないかなと思います。
まとめ
製作されたボードゲームをまとめてみて改めて思ったのですが、すごくないですか!?もちろん、ファシリテーターの力や、多くの助けがあったとはいえ、4つのグループそれぞれで4つの新しいゲームができたことはとてもすごいことなのではないかと思います。
終わってみれば、既存のゲームシステムを改良するという方向性でゲームデザインをしたところは僅かで、ほとんどがオリジナルの、自分たちでいちからテーマを元に考えたゲームでした。
もちろん、作り込みやバランス調整、遊んでもらうためのアートデザインやルール上の工夫などは必要ですが、本当に「ゲーム」ができたのです。ゲームを作ったことがある人ならわかってもらえるかも知れないですが、これは本当にすごいことです。アイデアは頭の中にあるだけでは、意味がなくこうして形にすることが重要だと思っています。その点、子どもたちがこうやって形にしたことはとても価値があることだと感じています。
研究的に言えば、今回は制作物によって子どもたちの創造性を評価することは考えていませんが、それでも1つの成果としてこの世になかったもの、新しいものが生み出されたことは子どもたちの創造性が発揮されたことの証左として十分なのではないかなと思います。
今回、東京での開催も予定していましたが残念ながら新型コロナウイルスの影響で中止・延期にせざるを得なくなりました。とはいえ、福岡でのこの実践を経て、「ゲームデザインを通した子どもたちの創造性の育成」ということに確かな手応えを感じました。
あとは、持ち帰ったデータをきちんとした形で世の中に発表できるように頑張りたいと思います。
ここまで読んでくださってありがとうございました。また「ゲームジャム」という手法で持って、子どもたちとゲーム作りができる日を楽しみにしています!参加してくださった皆さん、一緒にゲームジャム自体を作っていってくださった皆さんどうもありがとうございました!
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