サイコロ塾レッスンレポート:インカの黄金編
こんにちは!
8月2回目となるサイコロ塾では、「運を味方につけよう」というテーマのもと、インカの黄金を用いたレッスンを行いました。
前回のウミガメの島とはまた違った「運」を用いた仕組みのあるゲームです。身の回りにある「運」を用いた仕組みについても考えを及ばせながら、レッスンを行いました。
それでは、今回もレポートスタートです!
1、「運」を用いた仕組みについて
前回のウミガメの島では、「サイコロ」が運を演出するための道具として使われていました。そこで今回レッスンの初めに、子どもたちに「サイコロ以外に運を用いた仕組みって何があるかな?」と尋ねてみました。
子どもたちから上がってきた意見は・・・
・サマージャンボ
・ガチャガチャ
・ガラポン
・懸賞
なるほどなるほど。確かに身の回りにある「運」を用いた仕組みを子どもたちが身近に感じてるんだなということがわかりました。まだ、さまざまなデジタルゲームに採用されている「ガチャ」があがってこなかったあたり少し安心もしました。
子どもたちのあげてもらった仕組みの中には、全体の「場合の数」が把握できないものがありました。場合の数が想定できない場合、もちろん確率を計算することができません。世の中のこういった仕組みには、巧みに場合の数をぼやかすことで、見えなく(確率を計算できなく)しているものがあります。それで、無用に自分の運に頼ってしまうことがあるわけですが、仕組みの側に振り回されて判断を誤ってはいけないということも今回子どもたちに伝えたいこととしてはありました。
2、インカの黄金について
インカの黄金の詳しいルールは、リンク先をご覧ください。ここでは簡単に概要を紹介します。
インカの黄金では、各プレイヤーは探検家になって、インカのお宝を探す冒険をします。毎回、各プレイヤーは、「A:探検をやめて、テントに戻る」か、「B:探検を続ける」のどちらかを選びます。
「A:探検をやめて、テントに戻る」を選んだ場合には、それまで手に入れていたお宝をテントに持ち帰ることができます(これが、点数になります)。ただし、以降今回の探検に再び参加することはできません。
「B:探検を続ける」を選んだ場合には、カードの山札で表された探検カードを1枚めくります。カードには次の3種類があります。
<あ>青色のお宝カード
お宝を表すカードです。書かれた数字分の宝石を「B:探検を続ける」を選んだプレイヤーで山分けします。
<い>黄色の遺物カード
インカ文明の遺物を表すカードです。「A:探検をやめて、テントに戻る」を選んだ時、1人だけで戻ることができると獲得することができます。
<う>赤色の障害カード
探検中に遭遇する危険を表すカードです。探検を続けている際に、同じ種類の障害カードの2枚目がめくられると、その探検は失敗になります。
全員が「A:探検をやめて、テントに戻る」か、2枚目の障害カードがめくられたら、ラウンドが終了します。全部で5ラウンド行って、点数が高かった人が勝利!というゲームです。
3、インカの黄金をプレイ!
さて、今回も前回と同じようにゲームのルールを読む上では子どもそれぞれの担当を決めて、それをみんなで読み合わせてゲームプレイを成り立たせていく、という方法を取りました。今回は、ゲームの中でプレイヤーがすること自体は多くはないのですが、それに伴う処理が多くあって、全体を一度で把握することは難しく、「分からん」という声が聞こえてくることがありました。それぞれの担当の箇所自体も、前後の文脈を把握していないと分からない部分もあるので、その辺りを考えながら割り振るというのが今後の僕自身の課題だなと感じました。
プレイを始めると、最初の1回目の選択で早速面白いことが起こりました。それは、子どもたちの5人中3人が「A:探検をやめて、テントに戻る」ということを選択したことです。
初めの1回目は、当然お宝カードが1枚もめくられていないので、まだテントの外に手に入れた宝石はありません。そのため、「A:探検をやめて、テントに戻る」という選択をしても、宝石が手に入らず意味がないのですがよく分からずテントに戻ってしまったというわけです。これは、「わかる」ことと「できる」ことが違うことをよく表しているなと思いました。ルールを分かったつもりでいても、その中の振る舞いまでは想像力が及んでいなかったということです。この後、「あっ、そっか」と子どもが自分自身で気づいたことは良かったことです。
その後は、ゲームの進め方を理解しプレイを続行していきました。何度か不幸(写真のように探検の序盤で同じ種類の障害カードが続け様に捲られてしまう)に見舞われましたが、子どもたちなりに「行くか、戻るか」を考えてプレイしている様子が見られました。
4、インカの黄金における「運」の考え方
3回目の探検が終わった時に、インカの黄金における運の仕組みについて子どもたちに考えてもらう時間を作りました。
インカの黄金では、前回行ったサイコロではない仕組みで「運」というものがゲームの中に実装されています。それはもちろんカードを使った仕組みです。
カードの山札には、ゲームの開始時には30枚(+1枚の遺物カード)があります。そして、そのカードの内訳は、「お宝カード」と「障害カード」がそれぞれ15枚ずつ入っているのです。つまり、2回に1回は赤色の障害カードが出る計算というわけです。
この情報からすぐに判断を決めるわけではなく、赤色の障害カードについてはその種類も重要です。5種類のカードが各3枚ずつ山札に入っています。結局のところ冒険失敗になるのは、「30枚の山札にある3枚の同一の赤カードから2枚を引いた時」ということになります。
山札を母数と表現すると、冒険を進めるに連れて母数はもちろん減っていきます。例えば、1枚目に赤の障害カード「クモ」がめくられたとします。障害カードがめくられる可能性自体は14(15-1)/30(31-1)になるので、依然として高いままですが、そこからさらに「クモ」をめくる確率となると、2/30となります。
これを高いと見るか、低いと見るか?このあたりは正直個人の感覚かなと思うのですが、単純に「赤い障害カードが出る」確率と見比べれば、全然低く、まだまだ「A:探検をやめて、テントに戻る」判断をするには尚早かなと思われます。
このカードを使った運の仕組みを子どもたちに説明したのちに、「じゃあ、どんな時にA:探検をやめて、テントに戻る?」と尋ねたときが面白かったです。なんとなく、僕自身としては写真のホワイトボード下部に書いた「まだ残っている赤色の障害カードの3枚目が出た時」というのが妥当と思ったのですが、続けて子どもから「いや、場合による!」と声が上がったのです。続けて聞いてみると、「遺物カードがあったり、カードの上に残っている宝石があったら戻るかも」ということでした。
確かに!そう、ことは単純ではなく、上記はあくまで確率上の話をしてきただけなのですが、そこには各プレイヤーの思惑や心理が働くので、本当に「場合による」ことも多いのです。おっ、そこが分かってるんだと、前回やった考え方がしっかり踏襲されていて嬉しくなりました。
5、勝敗など
最後に個人的にとても面白かったのが、結局のところのゲームの勝敗がどうなったかということです。普段サイコロ塾では、あまり「誰が勝った」ということを強く意識せず、毎回の勝者が誰であってもフィーチャーすることはないのですが、今回そして前回と普段はあまり勝敗に絡んでくることがない子どもが勝ち、いつも1番争いをしている子どもが最下位だったのでなかなか興味深く見ていました。
1番をとった子どもの戦略は、安全策。初めのうちに宝石を何個か手に入れることができたら、ある程度カード上に溜まってきた宝石の量を見て、すぐにテントに戻るということをしていました。一方、負けてしまった子どもは残りカードの枚数から、赤い障害カードが何枚残っているかを数えて確率を子どもなりに計算したり(合ってはいなかったようですが、少なくとも判断の材料にしていました)して、その上で判断をしていたのですが・・・
これだから、ゲームは面白いですね!「なんだ結局「運」に振り回されるのか?」という声が飛んできそうですが、そうではなくて、必死で子どもなりに論理的に考えた上で、最終的に「運」に任せたというのが面白いのです。
「運」とはいえ、早めに戻る判断をした1番を取った子どもも素晴らしいし、最後まで計算をして判断を決めた子どももすごいです!勝敗こそつきましたが、そのどちらもが「運」を味方につけようと取り組んだことが良かったなと思いました。自分なりに考えて判断した結果であれば、最終的な勝敗に少し納得ができたかな?
最後のまとめとして、身近にある「運」を使った仕組みに関して、確率から「判断できるもの」と「判断できないもの」があることを子どもたちに伝えました。有料のガチャなどに触れる機会はもう少し先になるのかもしれませんが、振り回されることなく自分で判断していってくれるようになればと思います。(お祭りのクジには注意!笑)
次回予告
さて、来月からは新たなテーマでゲームをプレイしていきます。これまでは、どちらかというとゲームの仕組みや構造から何かをテーマとして取り上げて学ぶことが多かったのですが、来月はゲームで扱っているテーマを学習内容に据えてやってみます。
取り上げるテーマは「食」です。そして、プレイするゲームは「レシピ」です。子どもたちに身近なテーマですので、楽しくゲームがプレイできるといいなと思います。
それでは、次回のレポートもぜひお楽しみに!
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