エコロジカル・アプローチ@バレーボール【11/16】スモールサイドゲームと「主体的・対話的で深い学び」
エコロジカル・アプローチ@バレーボール【10/16】"Smashbal" 段階的に制約が発展するスモールサイドゲームからの続きです。
前回は、プレイヤーのレベルに合わせてルール(制約)を段階的に変化させていくスモールサイドゲーム(SSG)の典型例としてSmashbalを紹介しました。
バレーボールは元々「制約」の多いスポーツなので、その「制約」を様々に変えてSSGを工夫しやすいという特徴があります。
さらに、ある程度ゲームができるようになったレベルでは、ルールは基本的に変えなくても、出現して欲しい、使いこなせるようになって欲しいプレーの得点や、避けたいミスの失点を大きくするという方法もあり、むしろそれが一般的なSSGでしょう。
また、攻撃側と守備側に分けて、それぞれ特定のプレーに集中できるようにするというのもやり方の一つとして重要です。
ここでは行いませんが、次に示すサッカーの例のように様々なSSGのアイデアを提案・共有し合うというのも有効でしょう。
対象:U10
サイズ:フットサルコート一面
分類:制約主導アプローチ、スモールサイドゲーム
制約:相手陣の中間地点にミニゴール、ドリブルイン有、その他はフットサルルール
狙い:奥と手前の選択
ここで強調したいのは「ねらい」と「制約」が明確になっているということです。
この「ねらい」と「制約」を明確にすること、さらに、その練習環境を用意する指導者の取り組み方として最も重要と思うことを、私の経験から紹介したいと思います。
私は2018、19年度の2年間富山大学人間発達科学部附属特別支援学校の校長を務めました(学部教員間の互選)。その教員研修で授業者に問われていたのが「ねらいと目当ては何か?」ということでした。
ちょうど学校教育では「主体的・対話的で深い学び」の実現が求められており、それは「教える」というよりも「学習者が主体的に学ぶ環境を整える」ということで、エコロジカル・アプローチの立場に共通するものと考えられます。そこで、授業をエコロジカル・アプローチの視点でとらえてみると次のようになります。
授業:スモールサイドゲーム SSG(の集まり)
ねらい:そのゲーム(授業の中の取り組み)によって獲得できるスキル等
目当て:プレイヤー(生徒)は何を目指せばいいのか?
何を目指す(競う)ゲームなのか?=「制約(ルール)」は何?
「ねらい」と「制約(ルール)」を明確にして、そのルールで何が起きているか?獲得できると思ったスキルが獲得できそうか?を観察し、「制約(ルール)」を調節していくことが重要です。そのためには、繰り返し「ねらいは何?目当ては?」と問いかけられることが役に立ちます。
それによって、「こういう状況が用意できれば、これが自分のものになるのではないか?」という「仮説」を立ててやってみることにつながり、
観察→仮説→実行→検証(観察)という試行錯誤のループが成立していきます。
(ここで注意しておきたいのは、「目当て(制約)」によって起きること・得られることは必ずしも「ねらい」通りでなければならないわけではなく、「ねらい」以上のことが起きる・得られることはよくあるということです。「ねらい」の方を変える可能性も考えながら、起きていることをしっかり観察したいですね。)
次回は「学習者が主体的に学べるように、指導者はどんな力をどうやって身につけていけるか?」ということについて、教員研修から紹介していきたいと思います。
バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。