水産、水産物、水産業が使い分けられている?水産基本法
「農林水産業の健全な発展」と言う文言が、各種法律の中でどう使われているのか、引き続き見ていきたいと思います。
今回は、水産基本法です。
第一条
この法律は、水産に関する施策について、基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにすることにより、水産に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。
まず、法律名称なのですが、他の一次産業についての法律と比較してみると、
農業:食料・農業・農村基本法
林業:森林・林業基本法
農業や林業系の法律では、タイトル部分に「✕✕『業』」と「業」の文字が入ります。
ところが、水産基本法は「水産」とあるだけで、「業」の文字は入っていません。
第一条の制定目的を読んでも、「『水産』に関する施策」とあり、
水産業ではありません。
第二条以下を見ていくと、
第二条
水産物は、健全な食生活その他健康で充実した生活の基礎として重要なものであることにかんがみ、将来にわたって、良質な水産物が合理的な価格で安定的に供給されなければならない。
2 水産物の供給に当たっては、水産資源が生態系の構成要素であり、限りあるものであることにかんがみ、その持続的な利用を確保するため、海洋法に関する国際連合条約の的確な実施を旨として水産資源の適切な保存及び管理が行われるとともに、環境との調和に配慮しつつ、水産動植物の増殖及び養殖が推進されなければならない。
3 国民に対する水産物の安定的な供給については、世界の水産物の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、水産資源の持続的な利用を確保しつつ、我が国の漁業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入とを適切に組み合わせて行われなければならない。
第三条 水産業については、国民に対して水産物を供給する使命を有するものであることにかんがみ、水産資源を持続的に利用しつつ、高度化し、かつ、多様化する国民の需要に即した漁業生産並びに水産物の加工及び流通が行われるよう、効率的かつ安定的な漁業経営が育成され、漁業、水産加工業及び水産流通業の連携が確保され、並びに漁港、漁場その他の基盤が整備されることにより、その健全な発展が図られなければならない。
2 水産業の発展に当たっては、漁村が漁業者を含めた地域住民の生活の場として水産業の健全な発展の基盤たる役割を果たしていることにかんがみ、生活環境の整備その他の福祉の向上により、その振興が図られなければならない。
となっています。
つまり、第二条では、「水産『物』」、第三条では「水産『業』」への言及がなされており、
水産基本法においては、「水産」、「水産物」、「水産業」の語が使い分けられている事がわかります。
では、「水産物」や「水産業」と区別される「水産」それ自体とは何なのでしょうか?
実は、水産基本法の中では、「水産」についての定義がありません。