【読書】『砂糖の世界史』に学ぶ、白い砂糖の黒歴史
『砂糖の世界史』(著書:川北 稔)
教科書のようなタイトル。
砂糖という今では身近な調味料から世界史を見て行く本書。
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【砂糖の始まり】
砂糖の歴史を遡るとまず原料である『サトウキビ』が紀元前500年ごろから栽培がされており、8世紀〜9世紀にはエジプトや中東諸国で盛んに栽培されていました。
またイスラム教徒や十字軍の進行などによりヨーロッパ圏にも『砂糖』という存在が知られるようになりました。
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【砂糖と奴隷】
14世紀ごろ『砂糖』を知ったヨーロッパに人々は蜂蜜よりも甘く、そして美しい白さに誰もが魅了されました。
もっと砂糖を得たいと王侯貴族はサトウキビの産地に適した気候の土地、人を植民地化し『黒人奴隷』を手に入れます。
サトウキビはヨーロッパ気候に合わないため主にアフリカ西海岸で奴隷を使い多く栽培していました。
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【新大陸発見と負の三角貿易】
砂糖の魅力はとどまらず、更なる新たな土地を目指すなかコロンブスが新大陸(アメリカ)を発見します。
ここから負の三角貿易が始まります。
❶アメリカ大陸の大西洋上に浮かぶ西インド諸島がサトウキビ栽培に適していることに気づく。
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❷早速、アフリカの奴隷を西インド諸島に輸出。
西インド諸島で栽培した砂糖はイギリスなどヨーロッパ諸外国へ。
↓
❸アフリカの部族争いに目をつけたヨーロッパは武器などを与え「相手の部族を奴隷として連れてくれば見返りに武器と宝飾を与える」と言い奴隷を手に入れる。
『奴隷』はアフリカ西海岸から奴隷船に乗って西インド諸島へ。
❶〜❸を繰り返し幾千万の黒人奴隷と引き換えに数千トンの砂糖と莫大な富を手に入れました。
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【ステータス・シンボル】
一方、ヨーロッパの貴族や商人は『砂糖』という希少性を使って己の見栄と富を誇示していました。
“ 紅茶に砂糖を入れる ”
は今では当たり前ですが当時は紅茶も希少で希少性のある「砂糖」と「紅茶」を一緒に飲むことは貴族や商人にとってステータスとなりました。
また砂糖のお城を作ったりして興じてました。
(この名残がウエディング・ケーキとも言われてます。)
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【砂糖の安定化、そして現代】
その後、17世紀ごろビート(砂糖大根、甜菜)という植物から砂糖を製造する方法を発見、開発。
大陸諸国でも栽培可能なビートにより砂糖の供給が安定。
また奴隷解放の機運によって黒人奴隷が解放。
(但し、黒人奴隷を解放したのは人道的な側面よりも白人の利得のため解放した傾向が強い)
そして現代の砂糖が世界中の一般大衆まで供給されるようになりました。
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【おわり】
著者は最後にこう言います。
『歴史を学ぶということは、年代や事件や人名をたくさん覚え込むことではありません。
いま私たちの生きている世界が、どのようにしてこんにちのような姿になってきたのかを、身近なところから考えてみることなのです。』
身近にある『甘い砂糖』から決して甘くない『人間の黒歴史』を見ることで、今日の現代日本で生きる私たちが恵まれていることに気づかされます。
しかし今も世界では希少性の高い素材や原料を安い人件費で新興国から輸入しています。
時代が進み希少性を失えば、私たちは振り向きもせず生産する人々を忘れるでしょう。
今も『低賃金奴隷』が世の中に居ることを忘れてはいけない。
そう遠い昔から警鐘を鳴らす一冊です。
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