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『TROPICARTA』 デザイナーズノート

デザイナーズノート 第2弾は『TROPICARTA』です。
僕の作ったゲームの中では、プレイ時間が「5分」ともっとも短いゲームです!

…というのは嘘で、
盤上遊戯製作所さんのボードゲームレーベル「A&R GAMES」の第一作目として、『デザインのひきだし42』に付録として同梱されていた『Dividing Doughnut』がプレイ時間「3分」と最短です。

プレイ時間については、後々出てくるので一旦置いといて、
アイデアのひらめきから、デザインなどの制作ノート、書いていきます!

『TROPICARTA』のゲーム概要なんて知らないよ、という方は、POLAR POND GAMESのこちらの記事をご覧ください。

『TROPICARTA』プレイイメージ

きっかけは「すごろく × カルタ」

『TROPICARTA』の1つ前に作った、墓守がテーマの『GRAVEKEEPERS』は
モチーフもメカニクスも揃ってマイナーというか、マニアックな方向性だったので…その反動もあってか、誰でも遊べるシンプルなゲームを作りたいと思っていました。

墓守がテーマの『GRAVEKEEPERS』

自分が作ったことのないジャンルでたくさんの人が遊べるゲームって何があるかなーと考え、たどり着いたのが「すごろく」。
「すごろく」なら、一度は遊んだことがありますよね。

駒を進める方法はサイコロを振る、手札を使う、ルーレットを回すなどさまざま。てことは、駒を進める方法を工夫すればいろいろできるぞ!
で、思いついたのが「カルタ」で駒を進めるというアイデアでした。

「すごろく」×「カルタ」。
この2つを合体させたら、誰でも遊べる最強のゲームができるのでは?と作り始めたのが『TROPICARTA』です。
まさにボードゲームの「恐竜戦車(ウルトラセブン第28話参照)」。

自分で言うのもなんですが、発想が安直すぎる!

珍しく、プレイ風景から考えてみた

僕の作ったゲームで「カルタ」といえば、POLAR POND GAMESの一作目『insect inc.』。

左右対称の抽象的なパーツを組み合わせて、お題の「昆虫」を完成させるのですが、これが、めちゃくちゃ難しい。ただでさえ難しいのに、後半は色情報がなくなり、形だけで探さないといけません。

お題が出てから、じっくり探す時間が続いて…
ハッと見つけられた時に脳汁が出るタイプのカルタです。

めちゃむずいカルタ『insect inc.』

なので、同じカルタを作るなら真逆が良いなーとざっくり考えていました。
見つけるのが簡単で、とにかくワチャワチャしていて終始忙しい。
プレイ時間が短く、さっと終わる。5分とか、10分とか。
そんなプレイ風景をイメージしてルールを考えていきました。

止まることのないカルタを作るには

毎回お題が発表されるタイプのカルタは、ショートゲームの繰り返し。ショートゲームが終わると「間」ができてしまい、ワチャワチャ感が止まってしまう…。

なので、普通のカルタのような「お題に対して正解の札を取った人」が駒を進められる、という仕組みだとテンポが悪すぎる。

リアルタイムでどんどんお題が増えていく形にしても、全プレイヤーが同じお題を狙うので、誰かが正解の札を取ったら、どれが取られたか確認したり、取られたお題を取り除く処理が入ったりと、やはり「間」ができてしまう。

逆に、カルタなのに他プレイヤーの動きを全く気にしないで良い。
そんなプレイ感のカルタがあったら面白くないか?と思いまして…

「お題=すぐ探す対象」ではなく、「カルタを繰り返すことで、お題(マイルストーン)の達成に近づく」という仕組みはどうだろうと考えました。

そこで登場するのが、プレイヤーボード(シート)!
どんな悩みも解決する万能薬です。

手前がプレイヤーシート。カルタで触れた果実のマス(鳥コマの隣接マスに限る)に鳥コマを移動できる。

全プレイヤーで異なる地図を持っており、1マス移動するためにカルタを行う。ゲーム開始時にお題が発表され、全プレイヤーで同じお題を目指す。けれども地図が違うから、お題に向かう道も異なる(カルタの対象が異なる)、というわけです。

これなら他プレイヤーを気にすることなく、お題に到達するまでひたすら連続カルタ。「間」が生まれることなく、終始ワチャワチャしたプレイ感です。

カルタなのに、プレイヤーボード(シート)がある!
まさに僕好みのゲームになっているのではないかと。

ちなみに、場の果実カードは表 / 裏で異なる果実が描かれており、触れると裏返る。場に見えてない果実は、もう一回触れて、ひっくり返して探さないといけないのです。

カルタのイラスト、めっちゃ難しい…。

早速モックを作ってテストプレイです。
ルールが決まったら、行動あるのみ!

23.12.12 verは、全体的に茶系。マスの区切りは、プレイヤーカラー。

最初、モチーフはナッツが良いなーと思ってました。
理由はナッツ類が好物だからです。

6つの形 × 色違い4種のナッツっぽいイラスト(果実っぽいのも混ざってますが)を24種用意してプレイしてみたら、予想に反し、『insect inc.』と同じ状況に…。
ナッツの色は地味だし、色も規則性がなくバラバラなので見つけるのめちゃめちゃ難しい。探すのに時間がかかって、全然ワチャワチャしない。

ということで、モチーフ変更!カラフルにして、南国風の果実に。
形も一部変更し、柄や種などを増やして果実っぽく調整。

24.01.03 verは、くすみカラー+ベージュ系。毒々しい。

ただ南国といえどデザイン的にカラフルすぎるのは、僕のゲームっぽくない(いつもベージュや茶色、グレーを多用しているので)。なので赤系、黄色系、ピンク系、緑系のくすみカラー4色+ベージュにしました。

これなら大丈夫だろう!テストプレイのリベンジだ!!
と意気揚々とテストプレイするも、一つの果物に複数の色が使われており、前回よりはわかりやすくなったけど、最初にイメージしていたワチャワチャ感とはまだほど遠い結果に…。

観念して、パッと見で何色かわかるようにカラーを再調整して(赤とピンクのバランスに何度も調整かかりましたが)、やっとこさ完成。

FIX版。マスの区切りは緑で全プレイヤー統一。プレイヤーカラーは裏面に変更。

わかりやすいカルタ作るの…ムズカシイ!
ということで、なんとか『TROPICARTA』が完成しました。

『TROPICARTA』

プレイ人数:2-4人
対象年齢:6歳以上
プレイ時間:5分
GAME DESIGN & ARTWORK:Masaki Suga
箱サイズ:170mm × 127mm × 42mm
カードサイズ:58mm × 89mm

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