破れた袋は袋じゃなくて
コンビニで2リットルのお水と木綿豆腐とハッシュドポテトを買ったとある日のこと。
その日は普段愛用しているキリンさん柄のエコバッグを持ち合わせておらず、そのうえ雨降りだった。
傘をさしながら商品を手で抱えて帰るのは流石に厳しいと判断し、レジ袋も一枚一緒に購入することに。
レジ袋の有料化が始まって以来私は「袋一枚ください」という言葉を発するときに、ほんの少し悔しくなる。いつものキリンさんエコバッグを持っていればプラスで3円とか5円とかを支払う必要は無かったのに。と、やはり少し損をした気分になる。
たかが3円、されど3円
塵も積もれば山となるのだから、、。
これは紛れもなくチリツモ案件だ。
しかし仕方がない時だってある。そう自分に言い聞かせてレジに向かった。
レジのお兄さんはついこないだまで高校生でした〜みたいな初々しい姿で仕事をしており、焦っているのか急いでいるのか、終始勢いのある動きをしている。
ピッピッと手早くバーコードをスキャンしてレジ打ちを進める様子はまるで、制限時間内に一番多くピッをした人が優勝!というようなゲーム(←そんなゲームなぞあるわけがなかろう)にでも参戦しているのか君は?!と聞きたくなるくらいの素早さであった。
続いて、お箸お付けしますか?ポイントカードはお持ちですか?袋はご入用ですか?の質問高速三連発。
君、なにをそんなに急いでいる?
君、まさかご年配の方にもそのスピードで?
君、まずは落ち着いたらどうかしら?
と心の中で質問返しをしながらも、
口からはちゃんと問に対する答えを発していた。
その時の私は、お箸の質問以外答えはYES。
片手にバーコードリーダーを持ち、もう片方の手でレジ袋を取り出す彼の動きはやはりまた急いでいた。
購入品に2リットルのペットボトルが含まれていた為2円のレジ袋(小)では入りきらないと判断されたようで、3円のレジ袋(大)にびゅんびゅんびゅんと勢いよく商品が入れ込まれてゆく。
私はそれを、バーコードを提示したのちのケータイを仕舞いながらポケーっとして眺めていた。
ひと〜つ、2リットルのミネラルウォーター!
サイズが大きい順に入れ込まれてゆく。
ふた〜つ、お豆腐!
…とここでお豆腐パックの角が見事に袋を引き裂く様が目に入った。
この事態には流石のお兄さんも動きがパタリと止まり、失礼いたしました、と丁寧に言いながら新しい袋に入れ直してくれた。
持ち手をピンと立てて袋全体が上にクシャッと引き上げられた形で、私の手に商品が渡った。
自動ドアを抜けて暫く歩いていると、私は驚くべき光景を目撃してしまった。
袋が
破れている
お豆腐パックの角がまたしても盛大に袋を突き破っているではないか。
それも、あともう少しで自らが創り出したその穴から落っこちてしまいそうな程だ。
そもそも、買ったものを両手で抱えてしまっては傘をさす手がふさがってしまうと思い渋々レジ袋を購入したというのに。使い終えたらまたゴミ袋として使おうと思っていたのに。
きぃーーーーー。
いつの間に、、。
なんともいえない沈んだ気分である。
辛うじて一体となってはいるが今にも崩壊しそうな
重い2リットルのペットボトルと
熱い小さなハッシュドポテトと
鋭い刃と化すパックに密封されたお豆腐と
薄いビニールで歪に形成されたナニカとを
ぐしゃっと両腕で抱え込み、
広げた傘は、腕と胴体との隙間や肩の上を絶妙なバランスを駆使して支えた。
なにやってんだ私
そして私の腕の中にあるこのビニール製のナニカは一体何なのだ、、?
破れた袋は袋と言えるのか?
Wikipediaはこう言っている。
袋(ふくろ)とは、物を入れる容器の基本的な形状の一つ。
だと。
形状が変化して物を入れることが出来なくなった時点で、やはり袋とは呼べないようだ。
結果的に私は、名前がまだないビニール製のナニカを3円で買った人になっていた。
世にも奇妙な出来事であった。
誰も悪くないんだけど、
強いて言うならお豆腐パックが悪い。
お豆腐は大好きで大好きで仕方がないくらいだが
お豆腐パックのことは今回の件でなんか少し嫌いになった。
頼むから金輪際わざわざ袋という貴重なモノを殺してまであのビニール製のナニカを生まないでくれたまえ。
お買い物をする時に私が必要とするのはレジ袋であり、残念ながらあのビニール製のナニカではないのだ。
破れたレジ袋を見て
レジ袋がお亡くなりになったと捉えるか
ビニール製のナニカが生まれたと捉えるか
そんなことを考えながら
やはりいつなんどきでも生と死は共存しているのだなぁとやけに深い考えまで行き着いた。
ここでタイトルを回収するが、
やはり破れた袋は袋ではない。
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