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御徒町エレジー第17話【そば屋の辛え(カレー)ヤツ】
御徒町タイム、午前6:25。
改札口を出てすぐのところ。
いつも横目に前を通り過ぎる。
「よもだそば」
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当然だが、まだやってない。
いつも気になっているのが、看板のフレーズ。
よもだカレー。(インドカレー)
そば屋のクセにインドカレー。
非常に気にはなっていた。
その日のランチタイム。
すっかりカレーの口になっていた。
しかし、外は横殴りの雨。
傘を両手持ちの大剣のように構えても、ズボンの裾がビチョビチョになるヤツだ。
仕方ない。
近くのあそこへ行くか。
みんな大好きココ○チ。
貴族のカレーと俺は呼んでいる。
トッピングありきのカレー。
ソーセージとほうれん草を追加して1,500円のお会計。
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まあ、それなりにうまい。
だが、俺は偏屈なのでカウンター越しに聞こえる店員たちのやり取りが大嫌いだ。
明らかにマニュアル化されたチャキチャキしたデカい声で店用語を連発する中で食すカレー。
味に集中出来ない。。。
しかし、若者でもないのにイヤホンをしながら食事をするのも抵抗がある。
そして、会計時に必ず聞いてくる「楽○カードありますか?」が嫌で仕方ない。
持ってるけど、出したくない。
そう、俺は偏屈なのだ。
その日の気分は不完全燃焼。
そして、若干の胸焼け。
文字通り消化不良。
これは行くしかないだろう。
よもだそば。
しかし、「よもだ」って何だ?
ある日の午後14:00。
いつもの電話番を終えて、ナルトの様な忍者走りで御徒町駅前へと向かう。
最近気づいたのだが、毎昼グランドライン近くまで、確実に俺の行動範囲が広がっている。
平日のこの時間にランチを食べる人はそんなに多くないのだ。
よもだそば前に到着。
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しかし、店内なかなかの賑わい。
立ち席と座り席が半々な感じ。
ヨシッ!
ここは、よもだカレーとそばのセットにしよう。
だが、少女の胃袋とオッさんの消化器官を合わせ持つ俺には両方とも並盛りは無理だ。
カレーは並、そばは半盛りにしてみよう。
かき揚げそばが、非常に魅力的ではあったが次回にする。
午後の業務だけでなく、就寝中に胸焼けで苦しみたくない。
たぬきそば(半盛り)とよもだカレー並盛りをオーダー。
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本格的なカレーだ。
骨付きチキンがシャバいルーに浸かっている。
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そして、シャバルーの中に何やら赤い物体を発見。
こ、これはトマト!
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やるな!よもだ!
どれどれ一口…
かっ、辛いっ!
ダメだ、門が開いてしまう。
その時。。。
ポタッ、ポタッ。
開いた頭皮から汗が滴り落ちる。
コレはそば屋で出していいレベルの辛さではない。
俺はどちらかと言うと辛いのは好きな方だが、このカレー・・・
辛すぎるだろっ。
一杯目のコップの水を一気に飲み干し、給水に向かう。
やっちまった。
たぬきそばのツユの味がわからない。
舌が辛さにやられてバグってしまっている。
これは、恐るべきカレー。
だが美味い。
シャバルーに固めのライス。
これだけ食べに来る価値ありだ。
だが止まらない汗。
妻が買ってくれたスヌーピーのハンカチがオッさんの汗で悲しく濡れている。
ごめんよ、スヌーピー。
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食べ終えた頃には、ワイシャツの襟がビシャビシャ。。。
いや、シャバシャバに濡れてしまっていた。
帰り道。
秋の風に吹かれて、俺の短く刈り込んだ頭髪が早くも乾きはじめた頃。
御徒町の幾多の宝飾店のガラスに映る、産まれたての雛のようなパヤパヤしたヘアーを見て思う。
「よもだって何だ?」と。
第十八話へ続く