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ドイツ鋼鉄奮闘記(5)

METAL ON METAL Vol.30
2005.4.25号(連載第三回)

 皆さん、こんにちは。日本と比べてヨーロッパは気候の変化が激しく、今日辺りから突然暖かくなりました。ところで、こちらの冬は寒いだけでなくとても暗いんですよね。私が住んでるハンブルクの緯度は北サハリン(旧樺太)とほぼ同じ位なので当然かな。曇りの日などは、「あれ、今日、太陽見たっけ?」と思うほど。だから、皆、明るい春の到来を待ち焦がれているんでしょうね。まだ三月末なのに、もうTシャツ一枚で歩いている人がチラホラ。

 さて、先月(3月)、パソコンが壊れたと書きましたが(詳細はこちら)、その後、大変な事態になりました。現地のパソコン修理業社さんに渡したところ、更に更にぶっ壊されて……もう電源すら入らなくなりました(前は一応、電源は入ったんですよね😅)。画面は真っ黒のままです。修理業社さん曰く、「内部プログラムが日本製と欧州製では全く違った」と……。でも、ここはドイツ。勿論?!謝っては貰えませんでした。
 予定では、私が四月一杯でアレンジ前段階としての曲作りを完了させねばなりません。けれど、楽曲データは全部パソコンの中。バックアップを取っていなかったので、電源が入らない以上、全曲が消失してしまったことになります。私の作った曲を元にバンド風にアレンジして、その後すぐにスタジオでレコーディングに入る予定でね、すでに各楽器分まとめてガッツリとスタジオを予約してあります。今更、予約をキャンセルする訳にもいきません。もうすぐ四月に入るので……つまり、私は一ヶ月程で全10曲を再度書き上げねばならないんです。ま〜じ〜で〜?😅 更に、自分のパソコンにインストールして使い慣れていた音楽制作ソフト自体が使えない訳で……とにかく大ピンチ!!
 ドイツに日本のパソコンをサポートするサービスがある訳もなく、国際便で日本へ郵送して修理依頼する事も考えましたが、最短でも三週間程かかるそう。そんなことしてたら絶対間に合わない!!!こうなったら、(郵送より飛行機で帰る方が速いので)自分でパソコン抱えて日本に帰る⁈
 でも、運よくスタジオのパソコンが一台空いていて、ラーズが「使って良いよ」と言ってくれました。スタジオのパソコンにインストールされてる音楽制作ソフトは Cubase。私のと違うんで少しお勉強しないとダメですが、とりあえず、なんとかなりそうな気はする😅
 そんな訳で、最近は毎日スタジオに通い、朝から晩まで曲を書き続けています。

 1ヶ月で全10曲を一から書き直すなんて不可能と思いましたが、意外となんとかなるものね。結構ええ感じで進んでおります。そして、こうなってみると、「かえって良かったかも⁈」という気もしてきました。と言うのも、スタジオだと作曲作業以外は何もできないし、隣の部屋では他のミュージシャン達が仕事しているので、自分もすごく仕事モードになって集中できるんです。(先週まではフィンランドのVANGUARDがレコーディングしていました。)

 ところで、曲を書く時に私が一番気をつけるのは“何も意図しない”ことです。でないと、ありのままの自分をさらけ出すことができないからです。
 自分を実際より良く見せたいと思うのが人のサガのようで、意識するとどうも格好をつけた曲になってしまう。それが嫌なんですよね。ありのままの自分を表現してるような、そんな曲を作りたい。だから私は、作曲を始める前に、無意識になろうと一生懸命努力します。そういう意味で作曲は、私にとって、半ば瞑想みたいなもんですね(笑)。そうやって意識の枠を超えて無意識から楽曲が生まれると、聴いた時に自分でも、「なるほど!私ってこういうことを考えてたのか!」と気づかされることが多いんです。自分再発見の旅みたい。

 そんな中、最近私が気づいたのは、私が歌い続ける理由。連載第一回目に「私自身、何のために歌い続けるのかと自問してます」と書きましたよね。理由はいろいろあるんでしょうけど、そのうちの一つに気づきました。
 大袈裟な言葉になりますが、多分、私、音楽活動を通して「挑戦する姿」を見せたいんです。
 日本にいた頃、「どうせ無理」って言葉をよく聞きました。彼らに「無理って言う前にまずやってみようよ」と口で言ってもダメ……。それが悲しかったんだと思います。皆が自分の人生に対して希望を失っていたら、個人の集合体である“世界”がよくなるはずがない。逆に、一人でも多くの人が前向きになって、皆が様々なことに取り組んだから、世界も少しはよくなるかも……。
 で、言葉でうまく伝えられないから音楽で表現しようとした。更に、音楽でも表現しきれない部分は、体張ってと言うか、実際にそれを生きて見せることによって表現するしかないと結論したんでしょうね。今思えば、“夢に賭けて世界へ飛び出して地挑戦してみる”という行為自体が表現の一つだったのかもしれないなって思います。
 家族や私を愛してくれる身近な人たちを捨ててきた私は身勝手だけど、それでも私を理解してサポートしてくれた彼らのためにも、この“伝えたいこと”をしっかり生き抜いてみたいな。音楽にのせて歌ってみたいな。
 気合だけじゃ駄目だから、私に十分な音楽的才能があるよう願っています。

 明日はイースター祭、キリストの復活を祝うお祭りです。誰もが家族や愛する人たちと一緒に楽しむと思うけど、私はスタジオにこもって曲を書き続けます。これが今の私に与えられた場所だから、この場所でベストを尽くして、行けるところまで行ってみよう!どこにたどり着くか分からないけど、一生懸命生きた結果として辿り着く場所なら、きっとそこが私にとってベストの場所。

おまけ

 当時の連載記事だけじゃ何だし、毎回"おまけ"をつけてますが、う〜ん、今日はどうしようかな〜。 

 あ、そうだ、私が挑戦の場所としてハンブルクを選んだ理由を書こう!

 えっとですね、何のアテも無い&ドイツ語知識ゼロにも関わらず、ハンブルクに渡った理由。それは、私が一番影響を受けたバンドがハンブルク出身だからです。ちなみに HELLOWEEN 。そう、彼らのアルバム、"守護神伝第一章"(1987)と"守護神伝第二章"(1988)が好きすぎて〜。それだけの理由だったんですよね〜。チャレンジャーやな、私😅 
 ちなみに、2021年現在も14年振の復活をかけて(?!)、新しいアルバムの制作中ですが、作曲パートナーであるギタリストのギド・ベネデッティに、いつだったか「基本的に、誰かみたいな音になりたくないし、ジャンルにも(ヘヴィメタルという枠にさえも)囚われたく無い。でも、あえて言うなら"守護神伝第二章"みたいに、カラフルで、自由な発想で"やりたい事"なんでもやって、"魂のエネルギーが溢れ出してる!"みたいなアルバムを作りたい!だから、貴方も何にも囚われずに心から自由に私の曲をアレンジしてね」って伝えました。 

 全然ヘヴィメタルを聞いた事なくて、ハロウィンも知らないって方は……ここから、その"守護神伝第二章"が聴けますよ▼





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