多様な正社員(ジョブ型雇用)裁判例
この記事「多様な正社員(ジョブ型雇用)裁判例」は、厚生労働省「多様化する労働契約のルールに関する検討会」(第9回、2021年11月12日開催)の資料「参考資料3 多様な正社員の雇用ルール等に関する裁判例」を抜粋して転載した記事だが、読みやすくするため表記を一部変更。
明示された職務内容や勤務地との関係で限定合意が問題になった裁判例
KSAインターナショナル事件(京都地判、平成30年2月28日、労判111177号19頁)
使用者が行った従業員の配転命令の有効性が問題となった事案において、契約書では、「従事すべき業務の内容」として「経営管理本部(本部長付)・A監査室(室長)関連業務およびそれに付随する業務全般」とされているが、職種限定合意がない場合でも、労働契約書や労働条件通知書において当面従事すべき業務を記載することは通常行われることであるから、上記の記載をもって直ちに職種を限定する趣旨であると認めることはできないとされた事例。
社会福祉法人奉優会事件(東京地判、平成28年3月9日、労経速2281号25頁)
社会福祉法人の職員が提携関係のある会社に出向を命じられ、当該出向命令の有効性が問題となった事案につき、労働条件通知書には、「就業の場所」として、「特別老人ホーム白金の森」と記載されているが、当該記載は、採用時の労働条件の明示事項(労働基準法15条1項)である勤務の場所を記載したものであり、採用直後の勤務場所を記載したものにすぎないと認められるとされた事例。
タタコンサルタンシーサービシズジャパン事件(東京地判、平成24年2月27日、ジャーナル3号 9 頁)
雇用契約書及び採用通知書に「ITコンサルタント」と記載されているが、他職種の業務に従事させることができないという意味であることを窺わせる記載はないし、「ITコンサルタント」は国家資格のような明確な意味を有する概念ではなく、むしろ、社内では従業員が ITコンサルタントと呼称されるのはごく一般的なことであったとして、職種限定契約は認められないとされた。
日本コロムビア事件(東京地判、昭和50年5月7日、労判228号52頁)
求人申込票の記載は雇用当初における予定の職種、勤務場所を示すにとどまるものであって、将来とも職種、勤務場所を上記記載のとおり限定する趣旨のものとみることは困難であるとされた。
職務限定合意が問題となった裁判例
日産自動車村山工場事件(最一小判、平成元年12 月7日、労判554号6頁)
十数年から二十数年にわたつて「機械工」として就労してきたものであつても、当該事実から直ちに、労働契約上職種を「機械工」に限定する旨の合意が成立したとまではいえず、右機械工の組立作業等への配転命令につき、配転命令権の濫用には当らないとした原判決が維持された事例。
東武スポーツ(宮の森カントリー倶楽部・配転)事件(宇都宮地決、平成18年12月28日、労判932号14頁)
ゴルフ場のキャディらが、同人らをキャディ職から外し、勤務先も会社が指定する不確定な場所に変更する予定である旨を通告したゴルフ場運営会社に対し、同人らの職種、勤務地を変更する配転の仮の禁止を申し立てた仮処分事件において、同人らの職種をキャディ職に限定する雇用契約上の特約の存在が認められ、会社は同人らの同意なしにその職種をキャディ職以外に変更できないとされ、また、当該特約の点を措おくとしても職種変更命令は権利濫用に当たる、との判断に基づき、職種変更命令禁止に係る被保全権利の存
在が肯定された事例。
ヤマトセキュリティ事件(大阪地決、平成9年6月10日、労判720号55頁)
採用条件、採用後の勤務形態の違い、求人広告の内容と採用面接時における Y側の言動、警備業務に携わっている他の女子職員の採用状況を総合勘案すれば、社長秘書業務を含む事務系業務の社員として採用する旨の合意がなされたものというべきとされた。
岡山市立総合医療センター事件(広島高岡山支決、平成31年1月10日、判時2412号49頁)
Xにおいて技能・技術・資格を維持するために外科医師としての臨床に従事することは必要不可欠であり、意に反して外科医師としての臨床に従事しないという労務形態は想定できず、YもXの外科医師としての極めて専門的で高度の技能・技術・資格を踏まえて雇用したといえ、黙示の職種限定合意が認定できるとされた。
学校法人日通学園事件(千葉地判、令和2年3月25日、ジュリスト1549号4頁)
大学の教育職員として採用時に求められる経歴や業績、事務職員等との採用手続の相違、大学の教育職員の業務内容の専門性、特殊性、事務職員等との労働条件の相違、Yにおける大学の教育職員から事務職員への職種の変更の実績等を総合すれば、職種を教育職員に限定して雇用契約が締結されているものと認められるとされた。
KSAインターナショナル事件(京都地判、平成30年2月28日、労判1177号19頁)(再掲)
タタコンサルタンシーサービシズジャパン事件(東京地判、平成24年2月27日、ジャーナル3号9頁) (再掲)
勤務地限定合意が問題となった裁判例
新日本製鉄(総合技術センター)事件(福岡高判、平成13年8月21日、労判819号57頁)
就業規則及び労働協約中の転勤に関する規定が存在したこと、当該労働者らの入社時に既に技術職社員の転勤措置が実施されており、入社当時旧八幡市と旧戸畑市にしか八幡製鐵所の工場は存在しなかったとしても同措置が規模を拡大して継続される状況にあったこと、当該労働者らと使用者との労働契約締結の際、勤務地を限定する旨の明示の合意はされなかったこと等の事情によれば、当該使用者は当該労働者らに対し、個別的同意なしに転勤を命じる権限を有するとされた事例。
新日本通信事件(大阪地判、平成9年3月24日労判715号42頁)
電気通信事業等を営む会社の従業員に対する仙台から大阪への配転命令の有効性等が問題となった事案において、採用面接において、採用担当者であった Zに対し、家庭の事情で仙台以外には転勤できない旨明確に述べ、Zもその際勤務地を仙台に限定することを否定しなかったこと、Zは、本社に採用の稟議を上げる際、Xが転勤を拒否していることを伝えたのに対し、本社からは何らの留保を付することなく採用許可の通知が来たこと、その後 Yは Xを何らの留保を付することなく採用し、X がこれに応じたことがそれぞれ認
められ、これに対し、Yが転勤があり得ることを X に明示した形跡もない以上、XがYに応募するに当たって転勤ができない旨の条件を付し、Yが右条件を承認したものと認められるから、X、Y間の雇用契約においては、勤務地を仙台に限定する旨の合意が存在したと認めるのが相当であるとされた事例。
日本レストラン事件(大阪高判、平成17年1月25日、労判890号27頁)
XY間では、採用時点において、黙示にせよ勤務地を関西地区に限定する旨の合意が成立しており、その後、マネージャーA職に至る各昇格の際にも上記合意が変更されるには至らなかったものと認定することができるとされた。
社会福祉法人奉優会事件(東京地判、平成28年3月9日、労経速2281 号25頁)(再掲)
日本コロムビア事件(東京地判、昭和50年5月7日、労判228号52頁)(再掲)
勤務時間限定合意が問題となった裁判例
マンナ運輸事件(神戸地判、平成16年2月27日、労判874号40頁)
原告である女性従業員が会社の正社員に登用された当時の就業規則において、労働基準法(平成9年法律 92 号改正前)64 条の3第1項を受け、女性労働者の深夜勤務が禁止されていたという事実関係の下で、当該従業員と会社との間の労働契約の内容として、深夜勤務に従事させないとの勤務時間限定の合意が成立していたと認められた事例。
労働条件の変更の合意が問題となった裁判例等
山梨県民信用組合事件(最二小判、平成28年2月19日労判1136号6頁)
就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべきものと解するのが相当であるとされた事例。
東武スポーツ(宮の森カントリー倶楽部・労働条件変更)事件(東京高判、平成20年3月25日、労判959号61頁)
ゴルフ場を経営する会社とキャディ職従業員との間で、同会社が同従業員に対し、雇用契約を1年の有期契約に変更し、賃金等に関する労働条件を変更する旨を口頭で説明したとしても、同従業員がその内容をすべて把握し、詳細を理解して記憶にとどめることが到底不可能である場合には、労働条件の変更の合意が成立したとは認められないとされ、同人らの期間の定めのない雇用契約上の地位があることの確認請求及び旧給与規定に基づく賃金と実際に支払われた賃金との差額の請求を認容した事例。
技術翻訳事件(東京地判、平成23年5月17日、労判1033号42頁)
社長から業績悪化を理由とする賃金減額の提案を受けた従業員が明示的な回答をせず、減額された賃金に異議を唱えることなく数か月間就労した後に、更なる労働条件切下げの通告を受けて退職した事例において、いったん成立した労働契約について事後的に個別の合意によって賃金を減額しようとする場合に、使用者は、従業員に対して、賃金減額の理由等を十分に説明し、対象となる従業員の理解を得るように努めた上、合意された内容をできる限り書面化しておくことが望ましい等とされ、従業員からの差額賃金請求が認容された事例。
一般財団法人あんしん財団事件(東京地判、平成30年2月26日、労判 1177号29頁、東京高判、平成31年3月14日、労判1205、最三小決、令和2年3月10日、労判1220号133頁)
Yの職員である Xらが、Yが Xらに対してした各配転命令等が退職強要の目的で行われた違法なものであり、これらによって精神的苦痛を受けた等と主張して、Yに対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料等の支払いを求めた事例の第一審判決において、配転命令について、対象労働者の個々の具体的な状況への配慮やその理解を得るための丁寧な説明もなくされたものであること等を理由として、人事権の濫用に当たるものとして違法とされた事例(ただし、控訴審・上告審において Y勝訴)。
配置転換命令等に関する裁判例
東亜ペイント事件(最二小判、昭和61年7月14日、集民148号281 頁)
神戸営業所に勤務する営業担当の労働者に対する名古屋営業所への転勤命令について、業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であつても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもつてなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではないというべきとした上で、当該転勤命令は、業務上の必要に基づくものであり、母親、妻、長女との別居を余儀なくされる家庭の事情を理由にこれを拒否したことを理由に懲戒解雇したことが有効と認められた事例。
新日本通信事件(大阪地判、平成9年3月24日、労判715号42頁)(再掲)
安藤運輸事件(名古屋高判、令和3年1月20日、労判1240号5頁)
Yと期間の定めのない雇用契約を締結し、運行管理業務・配車業務に従事していたXが、Yから、本社倉庫部門において倉庫業務に従事するよう配置転換命令を受けたことに対し、当該配転命令は無効であると主張して、Yの本社倉庫部門において勤務する雇用契約上の義務を負わないことの確認を求めた事案において、職種限定の合意は認められないが、特定の業務に当たっていくことができるとする期待は、合理的なものであって、単なる Xの一方的な期待等にとどまるものではなく、Yとの関係において法的保護に値するとされた上で、当該配転命令は、権利の濫用に当たり無効と解するのが相当であるとされた事例。
西日本鉄道事件(福岡高判、平成27年1月15日、労判1115号23頁)
職種をバス運転士とする職種限定合意を含む労働契約を締結していた者が、バス運転士以外の勤務を命ずる辞令を発せられ、その後退職したという事案において、労働契約が職種限定合意を含むものである場合であっても、労働者の同意がある場合には、職種変更をすることは可能であるが、労働者の職種変更に係る同意は、労働者の任意(自由意思)によるものであることを要し、任意性の有無を判断するに当たっては、諸般の事情を総合考慮して慎重に判断すべきものであると解されるとされた事例。
東京海上日動火災保険事件(東京地判、平成19年3月26日、判時1965号3頁)
労働契約において職種を限定する合意が認められる場合には、使用者は、原則として、労働者の同意がない限り、他職種への配転を命ずることはできないが、当該合意が認められる場合でも、採用経緯と当該職種の内容、使用者における職種変更の必要性の有無及びその程度、変更後の業務内容の相当性、他職種への配転による労働者の不利益の有無及び程度、それを補うだけの代替措置又は労働条件の改善の有無などを考慮し、他職種への配転を命ずるについて正当な理由があるとの特段の事情が認められる場合には、当該他職種への配転を有効と認めるのが相当であるとされた事例。
多様な正社員の整理解雇に関する裁判例
学校法人奈良学園事件(奈良地判、令和2年7月21日、労判1231号56頁)
Yが設置する本件大学の大学教員として雇用されていた Xらが、YがしたXA1 ら5名に対する平成29年3月31日付け解雇(以下「本件解雇」という。)及びXA6ら2名に対する同日を終期とする有期労働契約の更新拒絶(以下「本件雇止め」という。)がいずれも労働組合法7条1号及び3号所定の不当労働行為に当たるばかりでなく、本件解雇が労働契約法16条に違反して無効であり、また、本件雇止めが同法19条柱書に違反して無効であるなどと主張して、Yに対し、Xらそれぞれの労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた事案において、職種限定がある場合でも本件解雇・本件雇止めの有効性の判断に当たっては整理解雇法理に従うべき等とされた事例。
学校法人大乗(ダイジョウ)淑徳(シュクトク)学園(大学教授ら・解雇)事件(東京地判、令和元年5月23日労判1202号21頁)
学校法人との間で無期労働契約を締結して勤務していた大学教員らが、前記学校法人が前記教員らの所属学部の廃止を理由になした解雇が無効であると主張し、前記学校法人に対し、労働契約上の地位の確認、解雇後の未払賃金等の支払を求めた事案において、所属学部・職種の限定の有無は解雇の効力を判断する際の一要素にすぎないとされ、また、Xらの所属学部が限定され当該限定された学部が廃止される以上 Yの財務状況等と関係なく人員削減の必要性が認められるという Y の主張が採用されなかった事例。
ユナイテッド・エアーラインズ・インク事件(東京地判、平成31年3月28日、労判1213号31頁)
グアム島に本社を置く国際旅客事業を業とする会社の成田ベースに所属し、FA(客室乗務員)として勤務していた労働者が、成田ベースの閉鎖に伴い整理解雇されたため、前記解雇が無効であるとして労働契約上の地位確認及び解雇後の賃金支払を求めた事案において、解雇回避措置の相当性や被解雇者選定の合理性等について検討がなされた事例。
専修大学北海道短期大学事件(札幌地判、平成25年12月2日、労判1100号70頁)
複数の大学等を設置運営する学校法人から短期大学の学生募集停止を理由として整理解雇された同短期大学の教員らからなされた労働契約上の地位確認請求及び未払賃金請求等について、同法人の対応は解雇及び解雇に伴う不利益を回避、軽減するための努力を十分に尽くしたものと認められる等として、解雇は有効であるとして棄却された事例。
CSFBセキュリティーズ・ジャパン・リミテッド事件(東京高判、平成18年12月26日、労判931号30頁)
外資系企業が数年にわたり巨額の損失を計上していたため大規模な退職勧奨を実施することとなり、貢献度が低く市況が良くないインターバンクデスクを人員削減の対象とすることとし、退職に応じなかった労働者を解雇したことについて、裁判所は当該解雇を有効とした事案。
シンガポール・デベロップメント銀行事件(大阪地判、平成12年6月23 日、労判786号16頁)
外資系企業が大阪支店を廃止し、大阪支店で送金輸出入業務、外国為替輸出業務を担当していた労働者を解雇したことについて、裁判所は当該解雇を有効とした事案。
多様な正社員の能力不足解雇に関する裁判例
ドイツ証券事件(東京地判平成 28 年 6 月 1 日ジャーナル 54 号 39 頁)
Y との間で職種限定の労働契約を締結し、上級の専門職として特定の職種・部門のために即戦力として高待遇で中途採用された X が、Y からの解雇の意思表示を受けたものの、同解雇は無効であるとして、Y に対し、解雇通告月の翌月から判決確定まで月額給与の支払等を求めた事案において、裁判所は、本件労働契約において職種制限の合意が成立していると認められることから、X を他職種に配転する等の解雇回避措置を検討しないことが解雇無効になるものではないとし、Y 主張の解雇事由が存在することから、本件解雇には客観的合理性及び社会通念上の相当性があると認められるとし、Y の解雇の意思表示により X は Y 社員の身分を喪失したとして、X の請求をいずれも棄却した事例。
アスリーエイチ事件(東京地判、平成29年8月30日、労経速2334号28頁)
コンタクトレンズ・化粧品の販売等を目的とする会社において、代表者の次の地位に当たる職位で雇われていた労働者からの、能力不足を理由とする解雇は無効であるとしてなされた労働契約上の地位確認及び不法行為を理由とする損害賠償請求について、韓国を本拠とする同社代表者に代わって日本法人を統括することを期待されて中途採用された経緯等にかんがみれば、求められた役職上の職務に関する能力不足の場合に、他の配転可能性も認められないことからすれば、同解雇には社会的相当性も認められる等として、棄却された事例。
トライコー事件(東京地判、平成26年1月30日、労判1097号75頁)
外国企業の日本の事業所における記帳・経理業務、従業員の給与計算業務等の代行を行う会社にて記帳・経理代行業務に従事していた労働者が解雇は無効であると主張して、雇用契約上の地位確認と未払賃金の支払を請求した事案につき、当該労働者は、会社から、職務懈怠が明らかになる都度、注意・指導をされながら、その職務遂行状況に改善がみられなかったもの等と認められることから、雇用契約上求められていた職務を遂行しうるに足る能力を十分に有していなかったものといわざるをえないこと等に照らして、本件解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められ有効である等とされた事例。
日本ストレージ・テクノロジー事件(東京地判、平成18年3月14日、労経速1934号12頁)
外資系企業が、英語、パソコンのスキル、物流業務の経験を買われて中途採用された者を、業務遂行能力が著しく低く勤務態度不良として解雇したことについて、裁判所は当該解雇を有効とした事案。
日水コン事件(東京地判、平成15年12月22日、労判871号91頁)
SEとして中途採用された労働者(X)を能力不足と勤務不良を理由に解雇したことについて、裁判所は当該解雇を有効とした事案。
労働条件明示に関する裁判例
友定事件(大阪地判、平成9年9月10日、労判725号32頁)
労基法15条は、労働契約の締結に際して、使用者が労働者に対して労働条件を明示すべきことを使用者に義務づける(同条1項)とともに、明示された労働条件と現実の労働条件とが相違した場合に、労働者に即時に労働契約を解除することを認めて労働者の救済措置を定めた(同条2項)ものであって、雇入後に労働契約又は就業規則が変更された場合を律するものではないとされた事例。
京都市交通局事件(京都地判、昭和24年10月20日、労裁集7号56頁)
労基法15条は、使用者が個々の労働者との間に労働契約を締結するに当たってしなければならない義務を定めたものであって、就業規則を変更する場合には適用がないとされた事例(以上、厚生労働省「多様化する労働契約のルールに関する検討会」第9回資料「参考資料3 多様な正社員の雇用ルール等に関する裁判例」抜粋)。
参考資料3 多様な正社員の雇用ルール等に関する裁判例(PDFファイル)
追記:多様化する労働契約のルールに関する検討会 報告書
無期転換ルールに関する見直しや多様な正社員の労働契約関係の明確化等について、厚生労働省の「多様化する労働契約のルールに関する検討会」において検討が行われたが、2022年3月30日、「多様化する労働契約のルールに関する検討会」報告書を厚生労働省が公表。
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*ここまで読んでいただき感謝(佐伯博正)