経済安全保障推進法(案)条文(全文)
経済安全保障推進法案が可決し経済安全保障推進法が成立
昨日(2022年5月11日)、経済安全保障推進法案が参議院本会議で採決され可決し、経済安全保障推進法が成立した。
この経済安全保障推進法に関して共同通信は「人工知能(AI)といった先端技術の開発で官民協力を深めることなど4本柱で構成し、来春(2023年春)から段階的に施行する。ハイテク分野で台頭する中国や、(略)侵攻を続ける(略)の強権姿勢を念頭に、経済安保政策の強化を図る」(共同通信『経済安保推進法が成立へ 中ロを念頭、情報漏えいに罰則も』2022年5月11配信)と報じた。
また、共同通信の記事によると「4本柱は官民の技術開発協力のほか、重要物資のサプライチェーン(供給網)強化、基幹インフラの事前審査、特許の非公開とした。国が民間を支援する一方で、情報漏えいなどには罰則を規定。規制対象は国会の審議が不要な政省令で今後決めるとしている」とのことだが、朝日新聞は「どこまで公正で自由な競争が保たれるのかは懸念が残る」(朝日新聞デジタル『経済安保法案、企業活動の自由はどう担保? 成立後に138項目決定』2022年5月10日配信)とした。
さらに、東京新聞も「法律は重要物資の供給網強化や基幹インフラの安全確保などを図るため、新たに規制を導入するが、その対象や具体的な運用方法は138項目にわたって政省令に委ねられる。国会の関与がないまま、政府の判断で内容が決められてしまう懸念は解消されていない。透明性を持った決定プロセスと、国民への丁寧な説明は欠かせない」(東京新聞『<解説>経済安保法成立…規制対象や運用は政府任せ 透明性の確保と丁寧な説明が欠かせない』)と懸念を示している。
経済安全保障推進法案概要・要綱・法案(条文)
経済安全保障推進法案の正式名称は「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案」。衆議院議案受理年月日は2022年(令和 4年)2月25日。
内閣官房サイトには経済安全保障推進法案(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案)の概要や要綱や法案(条文)などもリンクされている。
理由
国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するためには、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大していることに鑑み、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するため、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本的な方針を策定するとともに、安全保障の確保に関する経済施策として、特定重要物資の安定的な供給の確保及び特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する制度並びに特定重要技術の開発支援及び特許出願の非公開に関する制度を創設する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
経済安全保障推進法提出時法案(条文)全文
経済安全保障推進法案(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案)の条文(全文)は内閣官房サイトにリンクされているが縦書きとなっているが、衆議院サイトには提出時法案(条文)全文が横書きで掲載されている。
経済安全保障推進法案(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案)
第二〇八回
閣第三七号
経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案
目次
第一章 総則(第一条-第五条)
第二章 特定重要物資の安定的な供給の確保
第一節 安定供給確保基本指針等(第六条-第八条)
第二節 供給確保計画(第九条-第十二条)
第三節 株式会社日本政策金融公庫法の特例(第十三条-第二十五条) 第四節 中小企業投資育成株式会社法及び中小企業信用保険法の特例(第二十六条-第二十八条)
第五節 特定重要物資等に係る市場環境の整備(第二十九条・第三十条)
第六節 安定供給確保支援法人による支援(第三十一条-第四十一条)
第七節 安定供給確保支援独立行政法人による支援(第四十二条・第四十三条)
第八節 特別の対策を講ずる必要がある特定重要物資(第四十四条・第四十五条)
第九節 雑則(第四十六条-第四十八条)
第三章 特定社会基盤役務の安定的な提供の確保(第四十九条-第五十九条)
第四章 特定重要技術の開発支援(第六十条-第六十四条)
第五章 特許出願の非公開(第六十五条-第八十五条)
第六章 雑則(第八十六条-第九十一条)
第七章 罰則(第九十二条-第九十九条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するためには、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大していることに鑑み、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本的な方針を策定するとともに、安全保障の確保に関する経済施策として、特定重要物資の安定的な供給の確保及び特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する制度並びに特定重要技術の開発支援及び特許出願の非公開に関する制度を創設することにより、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進することを目的とする。
(基本方針)
第二条 政府は、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本的な事項
二 特定重要物資(第七条に規定する特定重要物資をいう。第六条において同じ。)の安定的な供給の確保及び特定社会基盤役務(第五十条第一項に規定する特定社会基盤役務をいう。第四十九条において同じ。)の安定的な提供の確保並びに特定重要技術(第六十一条に規定する特定重要技術をいう。第六十条において同じ。)の開発支援及び特許出願の非公開(第六十五条第一項に規定する特許出願の非公開をいう。)に関する経済施策の一体的な実施に関する基本的な事項
三 安全保障の確保に関し、総合的かつ効果的に推進すべき経済施策(前号に掲げるものを除く。)に関する基本的な事項
四 前三号に掲げるもののほか、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関し必要な事項
3 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。
5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。
(内閣総理大臣の勧告等)
第三条 内閣総理大臣は、安全保障の確保に関する経済施策の総合的かつ効果的な推進のため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、必要な資料又は情報の提供、説明、意見の表明その他必要な協力を求めることができる。
2 内閣総理大臣は、安全保障の確保に関する経済施策の総合的かつ効果的な推進のため特に必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、必要な勧告をし、又はその勧告の結果とられた措置について報告を求めることができる。
3 内閣総理大臣は、安全保障の確保に関する経済施策の総合的かつ効果的な推進のため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、安全保障の確保に関する経済施策に資する情報を提供することができる。
(国の責務)
第四条 国は、基本方針に即して、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進する責務を有する。
2 国の関係行政機関は、安全保障の確保に関する経済施策の実施に関し、相互に協力しなければならない。
3 国は、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するために必要な資金の確保その他の措置を講ずるよう努めるものとする。 (この法律の規定による規制措置の実施に当たっての留意事項)第五条 この法律の規定による規制措置は、経済活動に与える影響を考慮し、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において行わなければならない。
第二章 特定重要物資の安定的な供給の確保
第一節 安定供給確保基本指針等
(安定供給確保基本指針)
第六条 政府は、基本方針に基づき、外部から行われる行為により国家及び国民の安全を損なう事態を未然に防止するため、特定重要物資の安定的な供給の確保(以下この章において「安定供給確保」という。)に関する基本指針(以下この章において「安定供給確保基本指針」という。)を定めるものとする。
2 安定供給確保基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 特定重要物資の安定供給確保の基本的な方向に関する事項
二 特定重要物資の安定供給確保に関し国が実施する施策に関する事項
三 特定重要物資の指定に関する事項
四 第八条第一項に規定する安定供給確保取組方針を作成する際の基準となるべき事項
五 特定重要物資の安定供給確保のための取組に必要な資金の調達の円滑化の基本的な方向に関する事項(第十三条第一項に規定する供給確保促進円滑化業務等実施基本指針を作成する際の基準となるべき事項を含む。)
六 安定供給確保支援業務(第三十一条第一項に規定する安定供給確保支援業務をいう。第八条第二項第四号及び第九条第六項において同じ。)並びに安定供給確保支援法人基金(第三十四条第一項に規定する安定供給確保支援法人基金をいう。第八条第二項第四号及び第三十三条第二項第五号において同じ。)及び安定供給確保支援独立行政法人基金(第四十三条第一項に規定する安定供給確保支援独立行政法人基金をいう。第八条第二項第四号において同じ。)に関して安定供給確保支援法人(第三十一条第一項に規定する安定供給確保支援法人をいう。第八条第二項第四号及び第九条第六項において同じ。)及び安定供給確保支援独立行政法人(第四十二条第二項に規定する安定供給確保支援独立行政法人をいう。第八条第二項第四号及び第九条第六項において同じ。)が果たすべき役割に関する基本的な事項
七 第四十四条第一項の規定による指定に関する基本的な事項
八 特定重要物資の安定供給確保に当たって配慮すべき基本的な事項
九 前各号に掲げるもののほか、特定重要物資の安定供給確保に関し必要な事項
3 内閣総理大臣は、安定供給確保基本指針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定により安定供給確保基本指針の案を作成するときは、あらかじめ、安全保障の確保に関する経済施策、産業構造その他特定重要物資の安定供給確保に関し知見を有する者の意見を聴かなければならない。
5 内閣総理大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、安定供給確保基本指針を公表しなければならない。
6 前三項の規定は、安定供給確保基本指針の変更について準用する。
(特定重要物資の指定)
第七条 国民の生存に必要不可欠な若しくは広く国民生活若しくは経済活動が依拠している重要な物資(プログラムを含む。以下同じ。)又はその生産に必要な原材料、部品、設備、機器、装置若しくはプログラム(以下この章において「原材料等」という。)について、外部に過度に依存し、又は依存するおそれがある場合において、外部から行われる行為により国家及び国民の安全を損なう事態を未然に防止するため、当該物資若しくはその生産に必要な原材料等(以下この条において「物資等」という。)の生産基盤の整備、供給源の多様化、備蓄、生産技術の導入、開発若しくは改良その他の当該物資等の供給網を強靱化するための取組又は物資等の使用の合理化、代替となる物資の開発その他の当該物資等への依存を低減するための取組により、当該物資等の安定供給確保を図ることが特に必要と認められるときは、政令で、当該物資を特定重要物資として指定するものとする。
(安定供給確保取組方針)
第八条 主務大臣は、安定供給確保基本指針に基づき、前条の規定により指定された特定重要物資のうち、その所管する事業に係るものに関し、特定重要物資ごとに当該特定重要物資又はその生産に必要な原材料等(以下この章及び第八十六条第一項第二号において「特定重要物資等」という。)に係る安定供給確保を図るための取組方針(以下この章において「安定供給確保取組方針」という。)を定めるものとする。
2 安定供給確保取組方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 対象となる個別の特定重要物資等(以下この項において「個別特定重要物資等」という。)の安定供給確保のための取組の基本的な方向に関する事項
二 個別特定重要物資等の安定供給確保のための取組に関し主務大臣が実施する施策に関する事項
三 個別特定重要物資等の安定供給確保のための取組の内容に関する事項及び当該取組ごとに取組を行うべき期間又は取組を行うべき期限
四 個別特定重要物資等の安定供給確保のために安定供給確保支援業務及び安定供給確保支援法人基金又は安定供給確保支援独立行政法人基金に関して安定供給確保支援法人又は安定供給確保支援独立行政法人が果たすべき役割に関する事項
五 対象となる個別の特定重要物資に係る第四十四条第一項の規定による指定に関する事項
六 個別特定重要物資等の安定供給確保に当たって配慮すべき事項
七 前各号に掲げるもののほか、個別特定重要物資等の安定供給確保に関し必要な事項
3 主務大臣は、対象となる個別の特定重要物資について、第四十四条第一項の規定による指定をしたときは、安定供給確保取組方針において、前項各号に掲げる事項のほか、対象となる個別の特定重要物資に係る同条第六項に規定する措置に関する事項を定めるものとする。
4 主務大臣は、安定供給確保取組方針を作成するときは、あらかじめ、内閣総理大臣、財務大臣その他関係行政機関の長に協議しなければならない。
5 主務大臣は、安定供給確保取組方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
6 前二項の規定は、安定供給確保取組方針の変更について準用する。
<以下略>
第二章・第二節からは衆議院サイトの「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案」のページを。
経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案(衆議院サイト)
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